第1824話 旧領主の後継者。7(雑談。)
「テーアさん、良かったですね。」
「キタミザト様、ご連絡して頂きありがとうございます。
まさか昇進するとは思いも寄りませんでした。」
テーアが武雄に頭を下げる。
「でも・・・テーアさん、大変ですね。」
「今でも大変なのですが・・・キタミザト様は何を危惧されているのですか?」
「え?だって、テーアさん、現在は王都守備隊所属でしょう?
私達にとっては非公式ではあっても魔王国では辞令が出ているのですよね?
どちらにも所属しているテーアさんはここでの結果を魔王国で報告されるのですからアズパール王国の兵士訓練が温いなんて思われてはいけないので更に厳しい訓練になるんじゃないのですか?」
「はは、まさか・・・」
テーアがラックを見ると目が合ったラックがニヤリと笑う。
「ふぇぇぇ!?」
テーアが慄く。
「それにしてもウィリプ連合国への潜入予定がアズパール王国で研修ですか。
総長、大丈夫ですか?」
武雄が総長に「内情がバレますけど」と聞く。
「元々想定している範囲内ですよ。
雇用をしようとするならどこかしらの勢力の息がかかってる可能性は否定は出来ません。
そこに異種族だとか人間種だとかは関係はありませんね。
それにテーア、ファビオ、エットレの3名は入りたてなので閲覧権限は低いです。
階級が上がれば触れる内容は多くなるでしょうがそれに伴って守秘義務がかかるのでね。
それに違反するのなら普通に法律に抵触するだけの話です。」
総長が言う。
「なるほど、テーアさん、兵士として真っ当に仕事に励んでくださいね。
守秘義務破ったり変な所に忍び込んだりしちゃダメですよ?」
武雄がテーアに言う。
「いや、そんな事しませんよ。
確かに魔王国の命令書は見ましたけど、同時にアズパール王国の兵士でもあるんです。
母国には申し訳ないですけど、言える事と言えない事があるのは当然です。」
「我々もテーア班長にそういった事を望んではいません。
まずは無事に研修を終えてくれる事の方が優先されます。」
テーアとソルミが武雄の言葉を否定する。
「まぁ対魔王国の情報は王都守備隊よりもキタミザト殿の方がありそうですよね。」
ラックが言ってくる。
「私は私で輸出入業をしながら推測しているだけですよ。
そう言えば魔王国の国王陛下が近々退任されると伺っていますが?」
「それは・・・良くご存じでしたね。」
ソルミが少し考えてから返事をする。
「ええ、私とお付き合いしている商隊の方がそれなりに大変だと言っていました。
国の長が変われば商流が変わるだろうから今から売れ筋を作るのだそうで売れる物を吟味しているそうですよ。
まぁダニエラさんが『もうすぐ任期終了』と言っていたみたいでなんですよ。
なので本当に変わるんだなぁと思っているだけです。」
「そうでしたか。」
「聞いた話によると魔王国では次期国王の選定というのがあるらしいですね。
現国王陛下は御前試合の副賞でなってしまったと聞きましたよ。」
武雄が苦笑しながら聞く。
「あ~・・・魔王国の王軍内では有名な話ですしね。」
「今回も面白選定なのですか?」
武雄がずけずけと聞いてくる。
「面白・・・まぁ確かに他人事なら面白いですね。
部下である我々はあの時は困惑しましたが。
ですが、結果としてヴァレーリ陛下は歴代最高の国王と噂が立つほどになっているので御前試合の副賞という物も侮れません。
武力と知力、統率力、政治力、全てが高いのです。
国王になるべくしてなった方でしょう。」
「へぇ~・・・部下にそう言わせるとは・・・次の魔王国を統べる者は大変そうですね。
なり手はいるのですか?」
「今回は地方領主か王軍の指揮官から選ばれる手はずになっています。
ヴァレーリ陛下は結果としては良かったのですが、今回は政治や統治の経験をした者からとなったようです。」
「私達側からは今と同じような対外政策をしてくれる方が良いのですが。」
「私からは何とも言えないですね。
政治的な事は上層部が判断すれば良いのです。
そして行けと言われれば行くのが兵士ですから。」
「ごもっともです。
まぁ新しい魔王国王が就任したら報告はあるでしょう。
それまで待っていれば良いという事ですね。」
「はい、その通りです。」
ソルミが頷くのだった。
・・
・
武雄達はその後も雑談をしていたのだが、時間も少し経ってしまっていた為、今回はこれまでとなった。
「3人共、戻りましょう。」
王都守備隊員がテーア達に促す。
「「「はい。」」」
3人が席を立つ。
「ファビオ、エットレ、時間が空いたら私の方から会いに行きます。」
「「はっ!」」
ジーナの言葉に2人が返事をする。
「はぁ・・・訓練厳しくなるのはなぁ・・・」
少し肩を落としたテーアを先頭に3人が退出していくのだった。
「では、ソルミ殿達も。」
「はい、キタミザト子爵様、本日はありがとうございました。」
ソルミが言うと一緒に来ていた者達と一緒に頭を下げる。
「私の方こそついつい楽しくて話し込んでしまいましたね。
機会があればどこかで会えるでしょう。
本日はご苦労様でした。」
「失礼いたします。」
武雄の言葉にソルミが代表してそう返事をする。
「キタミザト殿、私達もこれで。
この後は?」
「王城に戻りますよ。」
「わかりました。
本日はご苦労様でした。」
「総長もご苦労様でした。」
武雄がそう言うと総長とラックが見送りの為にソルミ達を引率して退出して行った。
「・・・王城に戻って反省会ね。」
武雄がそう言うと武雄一派の皆が頷くのだった。
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