第1822話 旧領主の後継者。5(キタミザト家の裏会議。)
「力こそ全て・・・」
ソルミが呟く。
「少なくとも私達の一族はそうだったのです。
領主に向かないのであれば替えられるのです。
私達の運営姿勢は今の領主達にとっては不満があったという事でしょう。
次の代に変わったのですから上手くいく事を願うばかりです。
なので私は伯爵家に未練はありません。」
「わかりました・・・王城にはそれとなく伝えておきます。」
「ソルミ中隊長殿、よろしくお願いします。」
ジーナが頭を下げるのだった。
武雄達が普通に面談に臨む訳もなく。
武雄、ジーナ、マイヤー、ミア、ビエラが例のネックレスを使い対策を練りながら武雄が発表していた。
ちなみに武雄は基本皆の会話を聞いていて良い情報が出たら話に組み込んでいた。
オールストンとブレアは書記をしている。
総長とラックはそんな事をしているとは知らずに「キタミザト殿は良く頭が回るなぁ」と感心している。
(本心を言うのは恥ずかしい物ですね。
ですが、これでお父さまの事は隠せましたかね。)
ジーナが皆に言う。
(ジーナ殿、よろしかったのではないですか?
ファビオとエットレの2名に対して良い抑制になったでしょうし。
ソルミ殿にもキタミザト家がジーナを使って内乱を誘発させないというのがわかったので安心でしょう。)
マイヤーがこの場の評価をする。
(そこはダニエラがわかっているから問題ないと思うよ?)
(ビエラ・・・声だとたどたどしいのにこっちだと流暢ですね。)
ジーナがビエラの言葉に驚いている。
(皆の言葉は難しい。
それにミアとは普通にしゃべってるでしょ。
気にしない気にしない。)
(私としては毎回なので何とも。)
(・・・ビエラが普通にしゃべっているのが不思議な感覚ですね。)
(いや、本当に。)
ビエラの言葉にミアは別として、ジーナとマイヤーが違和感を覚えている。
(本当はこのぐらいしゃべりたいんだけど・・・いっその事ジーナからネックレス借りようかな?)
(ビエラ、これジーナが中心に居ないと使えませんよ?)
(え!?そうなの?
・・・言葉覚えるかぁ・・・)
ビエラが落胆する。
(それよりさっきの話ですけど。
私達の事は良いとして、魔王国がウィリプ連合国に拠点を作っているとほぼ断定していましたが、実際の所どうなのですか?)
(ウィリプ連合国の時は私も同行していますし、テーアの事情聴取の時にそこに買われる予定だったと聞いていますからね。
これはソルミ殿も知っていたでしょうが、唐突に所長が言ったのであたかも考察したかのように聞こえたのなら所長の手腕でしょうね。)
マイヤーが言う。
(これで少なくともこの3人にはタケオが凄いと思われる可能性は高いね。
魔王国内でタケオの評判が少し上がるんじゃないの?)
ビエラが言ってくる。
(それって良い事なんですかね?
主が目立つといろいろと問題があるんじゃないですか?
ほら、夏場の慣例の戦争とかで注目されたり。)
ミアが言ってくる。
(ゴドウィン伯爵領の魔王国との関で戦場の下見はしましたけど、試験小隊の陣地は端っこでしたね。
場所的にはあまり目立つとは思いません。
言い方は良くはないのでしょうが、所詮慣例の戦争です。
あっても小競り合い程度だと思います。
なので、所長の名が広まっても問題はありませんよ。)
((ふ~ん。))
ミアとビエラが相づちを打つ。
(それにしても子供達の奴隷販売を知った魔王国が全く動かないというのは考えられないのですが・・・
輸送業者に3人付けるというのはご主人様への配慮なのでしょうか?)
ジーナが聞いてくる。
(配慮とは違うのではないですかね?
輸送業者にこの3名を付けたというのは万が一は事情聴取する事を想定して会わせたと考えるべきでしょう・・・多分1小隊分くらいいつでも加勢出来る状態での移動だったと予想しますね。)
マイヤーが言ってくる。
(そんなにですか?)
(ええ、単独班での対象者への接触はさせないと思います。
万が一の交代要員、周辺警戒員・・・うん、1小隊分は近くに居て欲しい所ですね。
ですが、その所長が要請したウィリプ連合国までの移動をしたという情報があるのだとしたら。
事情聴取していないかもしれませんね。
しているのなら所長が運送業者に言った内容を彼らは知っているのですから。
この場で無事に到着した旨を話す必要はないはずですからね。)
(という事は、どこかでもっと良い情報を得たって事だね。)
マイヤーの考えにビエラが言ってくる。
(それが先の会合の所でしょうね。
つまり・・・魔王国軍はそこで輸送業者を逃がすと同時に強襲し、もっと重要な情報を手に入れたとした方が納得は行きますね。)
(もっと重要な情報ですか。)
ジーナが考えるのだった。
「なるほど、ジーナ殿には魔王国に戻る気はないという事なのですね。」
ソルミが言う。
「まぁ今は・・・という所ですね。
私としても最短でも25年後に奴隷契約を解除させてからの帰省という事になるだろうとは思っています。
私が居るエルヴィス伯爵家の隣接地が不安定になるというのはあまりよろしくないですからね。
なのでジーナには越境は難しいとは言ってはいます。
まぁ時間がそれなりに経過すれば越境しても問題ない雰囲気になる可能性もありますし、そうなれば契約解除後、すぐに越境するかもしれません。」
「そうですね。
まぁ25年あれば落ち着いているでしょうね。」
ソルミが頷くのだった。
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