表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1835/3628

第1821話 旧領主の後継者。4(ジーナの話。)

「お嬢様が、お嬢様が・・・」

「良かった、良かった・・・」

ファビオとエットレが泣いている。

「はぁぁぁ・・・」

ジーナは魔眼を止めて深いため息をする。

「あ~・・・キタミザト殿、これはどういった事なんでしょうか?」

テーアが事情を聞いてくる。

「どうもこうもないんですけどね。

 私の後ろに控えている子は私の部下で今は王都のエルヴィス家の跡取りのお付きとして仕事をしています。

 で、この子は貴女達3名よりも先にカトランダ帝国で買った奴隷なんです。」

「はぁ・・・奴隷というのは首輪を見るとわかります。

 それで・・・この2人の惨状にどう繋がるのですか?」

「この子はジーナと言って。

 奴隷になる前の名をジーナ・ヴィヴィアン・ファロンと言います。」

ガタっ

ソルミが驚き顔をさせて立ち上がる。

が、何も言わないで武雄を見ている。

「ソルミ殿はわかりますか。

 この子は先代のファロン伯爵の一人娘なんです。

 そこの2人が仕えていた元領主の娘です。」

「あ~・・・それは・・・」

テーアが微妙な顔をさせる。

「キ・・・キタミザト子爵様・・・それは・・・本当でしょうか?」

ソルミが声を絞り出してくる。

「・・・正確には違いますかね。

 ジーナは奴隷になった時に氏名を書いたり名乗ったり出来なくなっています。

 なので、ジーナの口からは名前であるジーナであるという事のみ聞いています。

 そしてアズパール王国のエルヴィス伯爵領に面している所の領主の娘だったとも聞いています。

 それと・・・狼に変身出来ると聞きましたか。

 ジーナ、良い機会です。

 なってみますか?」

「はい、ご主人様。」

武雄に言われジーナが体長2mくらいの銀毛の狼に変身する。

「あれ?ジーナ、成長しましたか?

 少し筋肉が付きましたよね?」

武雄が立って狼の背中を撫でながら言う。

「うん、ジーナ、人間の姿に戻ってくださいね。」

武雄が席に戻るとジーナも人間の姿に戻り、何事もなかったかのように武雄の後ろに居る。

「さてと・・・えーっと・・・うん、つまりは証言のみでジーナがファロン伯爵の娘だと思っていますね。」

武雄が頷く。

「証言のみなのでしょうか?」

「はい、事情聴取をした感じでは、簡単に言えば就寝時に襲われ、目が覚めたら奴隷船の上だったそうです。

 ウィリプ連合国に連れて行かれ奴隷商に買われ、カトランダ帝国へ。

 そして私が買ったという事ですね。

 寝込み時に気付かれずに船まで連れて行かれている時点で伯爵家の娘であるという何か証拠を持ってくる事も出来なかったのはわかっていますよ。

 それに魔王国の貴族の娘だという証拠を私達に見せられても私は解読できませんけどね。」

「それは・・・そうですね。」

ソルミが頷く。

「逆の立場で考えれば裸一貫で魔王国の街道に連れて行かれ。

 『私はアズパール王国の貴族だ』とか言っても誰も相手にしないでしょうね。」

「まぁ・・・良くて気が狂っていると思われそうですね。」

総長が言う。

「キタミザト子爵様、良く買われましたね。」

ソルミが聞いてくる。

「ん~・・・同行していた私の部下が強く推薦したんですよ。

 貴族だとかは関係なく『絶対にタダ者ではないから買うべきです』と。

 そしたら本当にタダ者ではなかったんですよ。

 所作は綺麗だし、教養もあって、仕事には真面目に取り組んでくれます。

 まぁ、ジーナが元ファロン伯爵家の令嬢だとかは置いておくとして、優秀な人材を確保出来たのはキタミザト家にとって最大の幸運でしょう。

 あ、ちなみに奴隷の首輪をさせていますけど、25年後に奴隷契約解除の方向で雇用契約をしています。

 王都でエルヴィス家の次期当主のお付きの仕事でエルヴィス家から金貨3枚、キタミザト家からお小遣いで金貨2枚でしたかね?」

武雄がジーナを見る。

「はい、ご主人様。

 お小遣いの方は貯金しています。」

ジーナが答える。

「いや、ジーナ、貴族のお付きなんだからそれなりに使ってね。

 使う事もエルヴィス家の評判に繋がりますからね。

 散財しろとは言いませんけど、金払いは滞りなくしてくださいね。」

「はい、わかりました。」

ジーナが頷く。

「話が逸れましたか。

 えーっと・・・まぁなのでジーナがファロン伯爵家の令嬢だというのは私の憶測です。」

「ファロン家は獣人になれる家系でしたね。

 それと先程の魔眼・・・確かファロン家の本流の女系に受け継がれるものだったはずです。

 状況の経緯を総合してほぼファロン伯爵家の者だと信じられるでしょう。」

ソルミが言ってくる。

「まぁですけど、ジーナに確認をしていますが、ジーナは国に戻って伯爵家の再興をとは考えていないそうです。」

「「え!?」」

ファビオとエットレが驚き顔を向ける。

「それは・・・よろしいのでしょうか?」

ソルミがジーナを見る。

「ジーナとしては今国に戻っても現領主が居るので、領内を2分する内戦をしてしまう可能性が高いと考えています。

 領民を犠牲にしてまで再興をする意味があるのかわからないというのが本心だそうです。

 現状維持する事が領民が傷つかない方法であると考えているそうです。」

武雄が言う。

「それに魔王国は力こそ全てです、政争で私達伯爵家は負けてしまった。

 これは受け入れなくてはならない事です。

 そしてヴァレーリ陛下の名において、伯爵家が子爵家に変わっているのでしょう。

 魔王国が正式に私達伯爵家が亡くなったと認めた事による裁定です。

 この裁定に異を唱える事は私は望んでいません。

 私はご主人様に買われた時点でアズパール王国の国民なのです、キタミザト子爵家のメイドのジーナとして生きていきます。」

ジーナがはっきりと言うのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] う~ん……ジーナさんの淡々としていること…… たぶんこの時この場でジーナにも伝えないサプライズ対面だったn・・・てあれ?事前に言ってましたっけ?覚えてない・・・まぁ事前に伝えていたとし…
[一言] ここで、黄門様の印籠のごとく、   ・ヴィクターからの手紙     &   ・ヴァレーリ陛下から下賜された剣 の登場 ・・・ とならないかな? ヴィクター と ジーナ の存在は、 ブル…
[一言] 凄く良かったジーナが
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ