第1820話 旧領主の後継者。3(実際にこれって事情聴取じゃないの?)
ソルミ達一行は状況判断がままならない状況下で目まぐるしく武雄から出る質問に答える形になっていた。
「へぇ~。
同業者からの追撃ですか。
やっぱり奴隷の運送をする人達は命がけなんですね。」
「実際には追撃等はされませんでした。
その・・・イグノト殿は相当警戒はしていましたが。」
「逆に言えばそのぐらい警戒する職業という事でしょう。
そうかぁ・・・ウィリプ連合国に着いたのかぁ。」
「・・・イグノト殿に何か?」
「いえ?特には?
その男からは荷物を強制的に私に移譲させた程度ですよ。
あ、ご心配なく。
あの子達は現在、家の方で執事とメイドの教育中です。
15年の雇用契約で雇いましたからね。」
「あの子・・・達ですか?」
ソルミ達は奴隷の輸送業者という事は知っていてもどんな物を輸送していたかは聞いておらず、横に居る2名と共に少し衝撃が走っていた。
「ええ、種族的にはエルフに獣人、魔人です。
流石に発見した時に今まで通り追い返すというのは悪手だと判断して、とりあえず住み込みの仕事を用意して働いて貰っています。
立派な執事とメイドに仕立て上げてから15年後に首輪を外し、自分達でいろいろしてくれたらなぁと思っています。
この事はダニエラさんには輸送業の件の際に報告していますからね。
出来れば1年後とか2年後とかに子供達から親御さんに手紙が出せるようにしてあげたいのですが・・・
窓口はどちらになるでしょうかね?
出来れば商隊の方に乗せて魔王国の王城に届けたいのですけど。」
「あ、それなら私達が戻り次第、報告し窓口をお知らせします。」
「わかりました。
なら、決まり次第、エルヴィス伯爵領のキタミザト子爵家まで送ってください。」
「畏まりました。」
ソルミが頷く。
「総長、私からは以上ですね。」
「はぁ・・・随分と話に花を咲かせていましたが、キタミザト殿が満足されたのなら良いです。
キタミザト殿的には問題ないという事で良いですね?」
「ええ、この方々はエルヴィス伯爵領側の関からではなく、ウィリプ連合国側から入国したそうです。
たぶん、その際に魔王国第4軍が仕事をしている奴隷派遣業の店に寄っていると推測しますね。
その際に魔王国からの指示でテーアさんの情報も教えたでしょう。
なら買われる予定だったテーアさんの様子を見てくれと言われても不思議ではないですしね。
ね、ソルミ殿。」
「・・・う・・・いえ・・・はい。」
ソルミが目を右往左往させながら言う。
「あ~・・・確か、出張店長のイルダさんでしたか?
あの方とは少し雑談したんですよ。
ウィリプ連合国に行っている時はあの店が魔王国の出張店舗だとは知りませんでしたけどね。
タダ者ではないとは思いましたが、魔王国の兵士の方というなら納得です。」
「キタミザト子爵様。」
ソルミが恐る恐る聞いてくる。
「なんでしょう。」
「その・・・その情報はどうやって知られましたか?」
「ん~・・・最終的には私の推測ですよ。
カトランダ帝国、ウィリプ連合国、そしてこの間のエルヴィス領での商隊としてのやり取り。
それを少しずつ足していくとさっきの推測に行きました。
結構良い線をいっているはずですが?」
「そう・・そうですね。
キタミザト子爵様の推察は大きくは外れていないです。
ちなみにその考えはアズパール王国に報告をされているのでしょうか?」
ソルミが恐る恐る聞いてくる。
「個々の報告で上に上げています。
なので、総合的に判断して私と同じ考えに至っている者が居る可能性はありますね。
ですが、国としてどうするかは私ではわかりません。
私個人としてはどうも思っていませんよ。
魔王国がウィリプ連合国に出張所を作ったからといって今の所、アズパール王国に何かあるという訳ではありませんしね。
ウィリプ連合国に言うような事でもありませんし。
私は静観すべき内容だと思っています。」
「そうですか。」
ソルミが少しホッとする。
「それに私はソルミ殿達には失礼かもしれませんが、魔王国に対しての考察が担当ですしね。
ウィリプ連合国側の政策にはあまり関与していません。
ですが、ウィリプ連合国は何か怪しいですね。」
「怪しいですか?」
「具体的に何か、という訳ではないんですけどね。
何か怪しいです。
王城の者にはそれとなく言ってはいますけどね。
まぁどう動くかは王城が決める物ですからその辺はわかりません。」
「そうですか」
ソルミが頷く。
「さて・・・なら例の3人を呼びますか。」
総長が言って部下を呼びに行かせる。
「あ~・・・そうだ、ソルミ殿。」
武雄がソルミを見て言う。
「はい。」
「これから起こる事を魔王国で報告するんですよね?」
「はい、します。」
「そうですか・・・ダニエラさんに教えてあげてくださいね。
出来れば戻って1番に教えてあげてください。」
「それは・・・わかりました。」
ソルミが頷く。
程なくして扉がノックされ部下がテーア達を連れて入ってくる。
「失礼します。
エットレ・ブラージ、ファビオ・ボナッタ、テーア・コンカートを連れて参りました。
3名とも席に。」
部下がそう言って離れたのだが、エットレが席に着く前にワナワナ震えている、そして。
「お・・・お嬢様!?」
ファビオも席に着いた際に大声を上げる。
横に居たテーアは「へ?」という顔で横を見る。
ファビオは大声を出し、エットレは泣いていた。
「え?え?え?」
テーアは混乱する。
ソルミ達も「え?何が起きたの?」とソワソワし始める。
「あ~・・・こうなりましたか。
キタミザト殿、お任せします。」
「ジーナ、お好きにどうぞ。」
「エットレ!ファビオ!落ち着きなさい!」
ジーナが魔眼を発動するのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




