第1808話 スミスの性教育。3(ジーナがお試しになりますとスミスの反抗期の予習。)
「ちなみにですが、スミス坊ちゃんの年齢の男子が女子の事が気になるのは第二発育急進期(第二次性徴期)の一環ですからおかしい事ではありませんよ。
だからといって女性をずっと見ているのは失礼ですからね。
チラッチラッと見ましょう。
詳しくはこちら、パナ監修の性の本を参考にね。」
武雄がスミスの前に冊子を置く。
「・・・タケオ様、生々しい挿し絵がありますが・・・」
スミスが本を手に取り中をパラパラ見ながら言ってくる。
ちなみにジーナも気になるのかいつの間にかスミスの後ろに移動し、中身を遠目で見て驚き顔をさせている。
「タケオさん、第二・・・発達?とは何ですか?」
レイラが聞いてくる。
「女性は胸や腰つきの変化、男性だと筋肉の発達といった体型的な変化。女性は子供が生める準備に入る事と男性は生殖器の機能の発達が行われます。」
「えーっと・・・つまり?」
アルマが聞いてくる。
「男の子が男性になり、女の子が女性になるんですよ。
お互いに子供が出来るように体が変化し始めるのです。
月経、生理・・・ん~女性の日でしたか?あれがはじまる時期ですね。
あの時期って急に体がむくんだり、太ったり、痩せたりしませんでしたか?」
「「「した!」」」
アルマ達が驚きながら言ってくる。
「あれは・・・当時は同い年の子を見て『あれ?太った?』とか軽口を叩いていましたが、今思うと軽率で相手を傷つけていたんじゃないかと悔やまれますね。」
「タケオさん、それは可哀想よ。」
「そうね、子供の頃って無邪気に残酷な事を言うわよね。」
「急に太るから食事制限とかいろいろしましたよ。」
3人が呟く。
「ちなみにこの時期のダイエットはお勧めしません。
パナ、それであっていますよね?」
「はい、タケオ。
この時期は体が作り替えられる時期になりますからたくさん栄養が必要になります。
なので一時的に体重が増加するとかを気にするよりもバランスの良い食事と適度な運動、そしてたっぷりと睡眠をとって体調を管理する事が肝要です。
わかりましたか?ジーナ。」
「え?私ですか?」
パナからいきなり話を振られてジーナが驚く。
「この中ではジーナがその時期に近付いていますよ。
ジーナはまだ来ていないですよね。」
「はい、まだです。」
パナの問いかけにジーナが答える。
「あ、そうだ。
レイラさん、すみませんが女の子の日の対処方法をジーナに教えて貰えませんか?
流石に私では教えられませんし。
クラスの友人に聞かせるわけにもいかないですので。」
「あ~、そうだね。
うん、わかったわ。
ジーナちゃん、近日中に予定を空けて貰える?出来れば昼過ぎから夕方まで休みを貰ってね。
王城内の私の寝室で対処方法の講義と実技をしますよ。
予定を確認して連絡頂戴ね。」
「はい、よろしくお願いします。」
ジーナが頭を下げる。
「・・・タケオ様、本に反抗期というのがあるのですが、あの反抗期ですか?」
スミスが本を見ながら言ってくる。
「ん~・・・私の中では反抗期は1つしかないですよね。
多分同じだと思いますけど。
それにしてもスミス坊ちゃんもジーナももうすぐ来るのかと思うと寂しいですね。」
武雄が寂しそうな顔をさせる。
「ん~・・・反抗期ってどんな感じなんですか?
本とかで読んでもよくわからないんですけど。」
「・・・私も詳しくはないですが、少なくとも3つの時期が来ると思っています。
『既存への反発』が来て、次に『自己の探索』、最後に『自己の形成』となっていきます。」
武雄がスミスに指を立てながら言う。
「??」
「初めに来るのが『既存への反発』です。
これは親や大人の言う事や社会規範にいちいち反発したくなる衝動です。
今までは私やエルヴィスさんに事あるごとに何かを聞いたり、言われたりしたらすぐに対応しようとしていた事が煩わしく感じるんです。
『僕はこう思っているのに親や姉は何もわかってくれない』とか、何かしたら『いちいち小言を言ってくる』とか。
いつもイライラする時期ですね。」
「え・・・そんな時がくるんですか?」
「残念ながら来ますよ。
例えばレイラさんが『王城で食事でもしましょう』と誘っても『友人との約束の方が大事』と近親者よりも友人達の方を優先したりもします。
大概はそういう時は発覚してレイラさん辺りに『なんで私の誘いには乗らなくて友人と遊んでいたの』と怒られ、そこで『あ~やっぱり大人はうるさい』と思うんですけどね。」
「え~・・・レイラお姉様を無下に扱うなんてしないと思いますけど。」
「それは今だからです。
でもこれって『エルヴィス家のスミス』から『王立学院のスミス』に変わっている証拠なんです。
今までは家族の中で教えられた通りに、指示された通りに過ごしていたのが、他者の行動や習慣を見聞きし、自らも体験する事によって自分で出来る事を確立しているという事なのです。
今までは言われた通りにしていたが、反抗期になって自分で考えるようになった。
その結果、いつでも会える家族より後数年で別れるであろう友人の方が今を大事にしないといけないと思ったから来なかったのです。
一方の私達は今まで通り、家族を優先するだろうと思っているからスミス坊ちゃんを誘っていたのです。
これはつまり、私達の中の優先順位とスミス坊ちゃんの優先順位が違う事から来る・・・正確に言えばコミュニケーション不足からくる認識の違いでしかありません。
なのでここでお互いに面倒かもしれませんが、予定をお互いに言い合わないといけません。
これは今までしていなかった事ですよね。
この時期は親や大人から一方的に物を押し付けられる事を嫌がります。
まずはお互いに優先順位を照らし合わせて決めてあげる事から始めれば良いのではないのでしょうかね。」
「タケオさん、結構大変そうね。」
レイラが言ってくる。
「私達も同じ時期に親に迷惑をかけているんですよ。
それが今度は私達の番になっただけです。
まぁなった時に面倒臭がらずにお互いに話し合いましょうという事です。
ちなみにスミス坊ちゃん。」
「はい。」
「犯罪を犯したい衝動が起きた時は抑えてください。
流石に犯罪に手を出されては何も擁護出来ません。
イライラしているのはわかってあげられますし、今まで規則を与えていた側から作る側に少しずつ参加出来るようにはしてあげます。
でも越えてはいけない一線というのはあります。
それはしっかりと守ってください。」
「それは当たり前だと思いますが・・・わかりました、そこは絶対守ります。」
スミスが頷くのだった。
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