第1804話 ニールとエイミーの報告かい?(頑張れエイミー。)
ニールが居る一室。
「ふむ・・・結構買ったんだな。」
ソファに座るニールの前に積まれた中で一番上の本を取ってパラパラと捲りながら言う。
「はい、スミスと本屋に行って選びました。」
対面に座るエイミーがニールに言う。
「・・・まぁ与えてみて気になる物を見て行くだろうな。」
「少し難しいかもしれませんが、しっかり読み込めばわかってくれるだろうとは思います。」
「うむ・・・まぁ第2皇子一家の事は手紙でもやり取りしているがクリナが豆腐の普及に向けて動いているし、ヴァイオリンの工房を配下に加えて街の活性化を経験しているな。」
「配下・・・父上、クリナ直属の工房なのですか?」
「実質そうなっている・・・他に買い手があまりいないのだそうだ。
クリナが発表出来るようになるまでは少し時間がかかるだろうしな。」
「カリスにはさせていないのですか?」
「何度か組合長達との会食時にさせているが・・・ふぅ・・・あれはやらないだろうな・・・
ヴァイオリンの工房の売り上げは今の所、ほぼ王家とタケオの所の部品売りだけだ。」
「ん~・・・ヴァイオリンですか。
アル、貴女はカリス達のようには出来ないの?」
「え゛・・・カリテス達は芸術の神・・・精霊よ?
カリテス達と比べられてしまうと私なんかがやれるなんていうのはおこがましいわ。」
チビアルが暗い顔をさせながらエイミーの肩に実体化する。
「・・・それは出来るという事よね?」
「た・・・多少の手習い期間は必要ですが、そこそこまでは・・・たぶん。」
アルが目を右往左往させて言ってくる。
「寄宿舎に居る面子で出来るのは誰かな?」
「あ~・・・一応、マリとパラスに聞いてみる?」
「ええ、お願い。」
「・・・マリは出来ないって、パラスはハープが良いと言ってきたわね。」
「ハープ?」
「ヴァイオリンは弦を張ってそれを引くでしょう?
ハープは弦を張ってそれを弾いて音を出すのよ。」
「ふーん。」
エイミーが言う。
「最古の楽器の一角だから・・・アズパール王国にもありそうだけど・・・」
アルがニールを見ると。
「ん~・・・」
ニールも考えている。
「なさそうね。
まぁ村々ではあるけど楽器として世に出ていないだけかもしれないわね。
それは追々カリスに頼んで作っても良いかもしれないけど・・・需要はあるかわからないわね。」
「となると、出来るのはアルだけか。」
「・・・エイミー・・・何するの?」
「いや、音楽の普及の為に私もしようかと。」
「え?エイミーするの?」
「いや、クリナがやるのなら私もやっておいた方が良いのかなぁ程度に思っただけで。」
「・・・パイディアーが居るから・・・手習い出来るのかな・・・
ちょっと確認してみるか。」
アルがそう言って目を閉じる。
「・・・はぁ・・・了解だって。」
アルがすぐにため息交じりに報告してくる。
「了解?・・・それはどういう返事なの?」
「レイラの所のエリカがいるじゃない?」
「第3皇子一家の相談役ですね。
知っていますし、何回も会っていますが。」
「うん・・・彼女、カリテスの1人であるペイトーと契約したらしいわ。」
「・・・精霊魔法師?・・・なぜに?」
「タケオの所に研修に行っていたんだって、その時についででなって来たそうよ。
ペイトーはクリナについているカリスと姉妹みたいなものね。
なので第3皇子一家は今芸術の精霊が2名居るわけ。
で、エリカが王城に戻って来たらペイトーにヴァイオリンを習い始めたようなのよ。」
「ほぉ・・・ついでで精霊魔法師になれるんだ・・・」
「今までが嘘のようにどんどん精霊魔法師になって行く者が増えたな。」
エイミーとニールが苦笑をしながらアルの言葉に頷く。
「で・・・パイディアーがエリカの為にヴァイオリンの工房に5挺程発注したそうよ。」
アルが報告する。
「5挺もか・・・そんなに安い物ではないだろうが・・・
俺が出て来る時にはそう言う話はなかったから行き違いだな。」
「エリカ殿の為に5挺買ったのですか?」
「普通なら気にならないだろうけど、微細な良し悪しがあるんじゃない?
パイディアーとペイトーが5挺頼めば良いのが当たると思っているかもね。
なので・・・4挺程手習い用に空きがあるんだって。」
「私とアルで2挺程借りられますかね。」
エイミーが考えながら言う。
「エイミー・・・そこは俺が買ってやるから・・・借りるなんて言わないでくれ。
ウィリアム達にはエイミーとアル殿の分は追加で送るからと言っておいてくれ。」
「わかりました、父上。」
「うん、わかったわ。」
ニールの言葉にエイミーとアルが答える。
「あ、ならドネリーにもさせるか。
良いわね?ドネリー。」
「・・・はぁ・・・卒業したら私も余暇が増えそうですからね。
ご一緒に習わせて頂きます。」
ドネリーが諦めながら頷く。
「うん、なら3挺だな。
戻ったら注文しておこう。」
ニールが頷く。
「で・・・エイミー、本題だ。」
ニールが姿勢を正してエイミーに聞いてくる。
「?・・・何か重大事が?」
エイミーも姿勢を正す。
「スミスとはどうなった?」
「・・・は?」
エイミー的に全く違う方面への質問に思考が一瞬飛ぶ。
「手ぐらい握れたか?
いや、最近の子供達は進んでいると言う。
その・・・あ!同衾はまだ早いぞ!?まだだ!まだだぞ!
今は我慢してくれ!エイミーが卒業すれば好きにして良いから!
女子の方が卒業しているのであればまだ手の施しようがある!」
「何を言っているのですか?父上?」
「そうなると・・・エルヴィス伯爵には誠心誠意手紙でお願いするにしても姉達の助力も必要か。
タケオとアリスには助力して貰わないといけないか。
あぁ!その時には王城にレイラ達が居ないか!?」
「いや・・・父上、暴走しないでください。」
「わかっている!エイミー!辛い立場にしてしまっているのは父親としても申し訳ないと思っている!
だが、俺達は王家なんだ、学院内の秩序を乱せる立場にはない、学生同士でというのはやってはならぬ。
苦しいだろうが卒業までは何とか持ちこたえてくれ!
そうすれば朝までとは言わず、3日ずっと部屋に籠っ」
「落ち着いてください!」
エイミーがニールをぶん殴るのだった。
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