第1803話 203日目 料理していますよ。(武雄とジーナの雑談。)
王城内の小厨房。
今日は完全レシピ非公開との事で武雄が信用が置ける者しか入室を許可していなかった。
「ご主人様、昨日は随分と飲んだようですね。
スライムから連絡が来ましたよ。
迎えに行こうか迷いました。」
「・・・ジーナ・・・お迎えはやめてくださいね。
同期達の前でそれはちょっと恥ずかしいです。」
「陛下達の時はよろしいのですか?」
「あそこは寧ろ迎えに来てくれた方が良いでしょうね。」
「えー・・・っと、同格以下の場合は行かない方が良いと言うことですね。」
「まぁ、そうですね。」
武雄が頷く。
「そう言えば、ボールド様が王立学院の学院長になるのですか?
ご主人様がそんな事を言っていたと磯風から聞きましたが。」
ジーナが聞いてくる。
「・・・少なくともクラーク議長はさせたいというのと私もさせたいというのはありますね。」
「ご主人様にとってもボールド様が良いのですか?」
「私としては同期が学院長であった方が良いとは思っていますよ。
ボールド殿が推薦されていたので私も便乗しただけです。」
「王立学院とご主人様の接点はないと思いますが・・・」
「接点はありませんけどね。
どんな組織でも多かれ少なかれ組織長に惹かれます。
王立学院は学院長の下に教師陣、生徒が居ますよね。
私の同期達は実務者達が揃っていて、偏見が少ないんですよ。
なので、そういう学院長が率いる生徒達は異種族に偏見が少なくなる可能性があります。」
「すぐにはならないのではないですか?」
「ならないでしょうね。
まずは教師陣の意識を変え、そして生徒の意識に波及していくでしょうね。
早くて数年後の話ですね。
まぁだからこそ、今同い年くらいの新人で王都に染まっていない同期の誰かに長い間、学院の運営をして貰いたいのですよ。」
「ん~・・・それでご主人様に何か利益がありますか?
研究室の人員も試験小隊員は能力主義ですし、事務員は今の所、お父さまやアスセナ、子供達が居ますよね。
それに事務員を王立学院の卒業生にさせるのは些かもったいないと思います。
王立学院が異種族に寛容になるとご主人様にどう関係があるのか・・・」
ジーナが考える。
「今、エルヴィス伯爵家で頑張っている子供達を王立学院に入りやすくさせたいでしょう?
未来への布石ですよ。」
「私は会っていないのでどんな子達かはわかりませんが。
ご主人様はお付きではなく、生徒として入らせたいのですか?」
「どちらでも良いです。
それに子供達は4名居ます。
すべての子がお付きになれるとは決まっていませんし、いろいろ仕事をしてみて、王立学院に入ってみたいと言ってくるかもしれないでしょう?
その時に急遽受け入れ態勢を整えるのも大変です。
なら今の内に手を打っておく事にしたのですよ。」
「あ・・・もし誰も行かなかったら・・・」
ジーナが選ばれないという選択肢もある事に気が付く。
「そうなったらそうなったですよ。
王立学院の門戸が広がったという事で良いでしょう。
私は苦労しませんしね、苦労するのは同期達です。」
「はぁ・・・ご主人様、今『同期達』と言いましたよね。
ボールド様のみでなく残りのお三方も巻き込んだのですね。」
ジーナがジト目で武雄を見る。
「巻き込んだわけではありませんよ。
同期皆で王立学院を盛り上げて行こうと話してきましたよ。
ちなみに私とアルダーソン殿は地方から応援しているので2人でけしかけて終わりました。」
「王立学院が大変な事になりそうな予感がします。
ボールド様はご子息がスミス様の同期ですし、バンクス様のご子息は1つ上におりますが。」
「・・・1つ上?バンクス殿の?」
武雄が「あれ?そんな話は聞いていないなぁ」と驚き顔をジーナに向ける。
「はい、寄宿舎に来ずに宿舎にいらっしゃいますが。」
「まぁ途中から寄宿舎に来るのは大変でしょうけど・・・女性からのアピールが凄そうですよね。」
「調査結果によると女性、男性共に混成集団で過ごされているようです。」
「調査したのね・・・まぁ問題はなさそうですけど。
昨日まで地方の文官の息子と思って接していたら貴族の子息かぁ・・・友人達も大変そうですね。」
「接し方が難しいですね。」
「ジーナもわかりますか。」
「はい、エイミー殿下のお付きのドネリー様が明日、いきなり伯爵令嬢になったと言われるような物です。
対応に苦慮します。」
「端から見ると楽しそうですけどね。」
「学院の運営の人事も先輩方もスミス様に影響がなければ良いとは思います。」
「ジーナのお仕事的にはその通りですね。」
ジーナと武雄が呑気に話していると。
「タケオ、トマトソースとホワイトソースが出来ました。」
「板状のパスタが茹で上がりました。」
パイディアーとペイトーが言ってくる。
「はい、ご苦労様です。
ビエラ、出来ましたか?」
「はい!タケオ!出来た!」
武雄とジーナが雑談をしている最中、パイ生地を作っていた。
「ミアは出来ましたか?」
「はい、リンゴを薄く切りましたよ。」
ミアは身の丈と同じぐらいの果物ナイフを使い器用にリンゴを薄く切っていた。
「うん、お疲れ様です。
約束通りビエラもミアも食べたいだけ食べて良いですからね。」
「「はーい。」」
ミアとビエラが返事をする。
「じゃあ、焼く用意をしていきましょうかね。」
武雄が各材料を確認しながら言うのだった。
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