第1797話 演奏成功。(明日の予定を作ろう。)
王城内のとある一室。
パイディアーとペイトーが武雄のリクエスト曲の演奏を終えていた。
「「「おおおおおぉぉぉぉ」」」
室内の全員が立ってパイディアーとペイトーに拍手を送っている。
2人共満足そうに頷いてから礼をして夕食前の演奏会を終えるのだった。
「・・・タケオ、凄いな。」
アズパール王が席に着いて同じく座った隣の武雄に声をかける。
実は厨房にお茶を取りに行った際にたまたまオルコットに出会い、事情を話すと夕食までの息抜きだったらとオルコットと陛下も参加、ついでに手の空いた執事とメイドも立ち見ではあるが聞きたいと言い始め、ちょっとしたコンサートになっていた。
「私が聞きたいのばかりですみませんでした。」
「いやいやいや、なかなかに聞き応えがあったな。
なぁオルコット。」
「ええ、個人の好き好きはあるでしょうが、私は四季の冬が良いですね。」
「ほぉ、我は四季なら秋だな。
タケオ、お陰で良いリフレッシュになった。
感謝する。」
「いえ、パイディアーとペイトーがやったおかげです。」
「ああ、それでもだ。
だが、悔しいかな国民にはこの曲はまだ聞かせられないな。
あの2人を聴衆の前にずっと立ちっぱなしにさせるわけにもいかんからな。」
「もっと楽器を演奏する者が増えると良いですね。」
アズパール王の言葉に武雄が言う。
「ふぅ・・・この手の物はどう育成すれば良いかはわからないな。
アンとクリナが始めているというのは知っているが、まずはそこからだろう。
その後街中でし始める者が出始め、その者達が次の者達を教育していく。
長い時間がかかりそうだな。
もっと手軽に聞ければ良いのだが、今は演奏をする者が育つのを待つしかなかろう。」
アズパール王が頷く。
「はい。」
武雄は頷きながらも蓄音機の事を考え始める。
蓄音機の原理は糸電話と同じという考えが武雄にはある。
コップの底を振動をする膜で覆い、音で振動させ、その振動を針を使って柔らかい記憶媒体に記録する。
記憶させた音は逆の原理を辿り、コップの底を振動させ音を発するという物だろう。
レコードからテープ、そしてCDと簡易記憶媒体は時代を追うごとに進化を遂げて行くが、レコードの系譜にCDがあると武雄は考えていた、レコードは音を柔らかい物に打ち付け溝を作るという作業、CDは音楽を電子に置き換えCDの奥にレーザーで溝を作るという作業。
どちらも溝を作りだし、読み取るのだ。
テープである磁気記憶媒体はレコードとは違う。
音から溝を作るのではなくテープに塗布された磁性体、早く言えば磁石の向きを変える事で記憶させ、磁石の向きを読み取って音を発するとなっている。
このテープの系譜にHDDがある。
HDDは磁性体を塗布した円盤に記憶をさせるのだ。
さて、明らかに磁性体への記憶よりも柔らかい物に記憶させる方がハードルは低いだろう。
磁性体から低いだけでそもそもが高い技術であることは否定できないが。
蓄音機製作の問題点はいくつかあるが、最大なのが音を振動に変える際に記憶媒体に記憶させられるほどの強さが出せるのか。
そして次の問題が、読み取った振動を音に変換する際に増幅させ皆に聞こえるようにする方法。
この2点だ。
本来ならそもそも一定に記憶媒体を回す方法を考えるだろうが、武雄にはステノ技研の技術があるので時計の技術の応用で一定速度で回すという事のハードルは低いと考えていた。
「・・・盾の研究が軌道に乗ったらトレーシーさんにさせるか。」
武雄がボソッと呟く。
「ん?タケオ、どうした?」
アズパール王が聞いてくる。
「いえ、育成も大変だろうなと。」
武雄はそう答えるが「題目として陛下のお言葉や会議の議事録を作成する際の記憶媒体の研究とすれば出来るかな?」と考えるのだっだ。
「そう言えば、タケオ、アンから手紙来ていないか?」
「来ていますけどね。
それは前に陛下にもクリフ殿下より頂いた旨は報告していますよ。」
「そうだったな。
実は我の所にも来ているんだ・・・回答をどうする?人員要請だろう?」
「はぁ・・・私の方はアン殿下が王都での料理学校の創設をするから生徒を派遣して欲しいという依頼ですよ。」
「確か・・・ヒルダだったか。
美味しい料理を作った娘がいたな。
あの娘を派遣するのか?」
「ん~・・・私の部下ではありませんからね。
『はい、わかりました』とは言えませんよ。
それとヒルダは私がここに来る前にもう1つスイーツを作りだしましたよ。」
「なに!?
どんな物だ?」
「アップルパイという料理です。
リンゴが甘くて美味しかったですね。」
「タケオ、その料理は・・・」
「ラザニアと一緒でヒルダの許可がなければレシピの公開はいたしません。」
「あぁぁぁ・・・」
アズパール王がガックリとする。
「ですが、レシピ非公開で類似品も作らない事を約束するのなら。」
「します!させます!食べたいです!」
アズパール王が言ってくる。
「オルコット宰相、どうしますか?」
武雄がオルコットを見る。
「ふむ・・・スイーツも良いですが、仕事が疎かになっては食べる時間も取れません。」
「頑張ります!要求通りの量を処理してみせます!」
「・・・キタミザト殿、明日の昼食にそれを用意する事は可能ですか?」
「料理長に食材を頂けるのであれば可能です。」
武雄がそう言うとオルコットがアズパール王の方をちらりと見る。
アズパール王が懇願している目をオルコットに向ける。
「はぁ・・・では昼食でそれを頂きましょう。」
「わかりました。
ならそのように準備いたします。
陛下とオルコット宰相の分と私達か。
ビエラとミアもいっぱい食べるだろうし、ちょっと量は多めですね。」
「おや?私の分もですか?」
「オルコット宰相もお疲れでしょう?」
「ははは、では言葉に甘えさせて頂きましょう。」
オルコットが苦笑しながら頷くのだった。
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