第1794話 アリスの散歩。1(協力者達は今大丈夫なのか。)
研究所の3階 所長室。
ステノ技研から戻ったアリスと鈴音がソファに座って反省会をしていた。
「はぁ・・・ステノ技研の許可が下りて良かったです。」
アリスがため息をつきながらお疲れモードだ。
「アリスさん、お疲れ様です。
ですから親方達は大丈夫と言ったじゃないですか。」
鈴音はあまり心配していなかったようでアリスを見ながら苦笑している。
「それでもですよ。
事前に相談もなく開発した商品の配合を売るなんて・・・タケオ様、好機だったんでしょうね・・・」
アリスが呆れながら言う。
「武雄さんなら『ここで売らなければ売れない』とか思って発言したんでしょうね。
それにしても国の研究部門が一堂に会する会議で発言したという事はステノ技研の名声が上がったという事ですか?」
「そこまで書いていませんでしたが・・・ステノ技研の工房名は出しているかは微妙です。」
アリスが考えながら言う。
「そうなのですか?」
「私がタケオ様の立場ならステノ技研の名は出しませんね。
直接、王都の者がキタミザト家を通さずに交渉をする可能性がありますからね。
基本的にキタミザト家と第二研究所の協力工房が考えた配合とかの秘密にしなくてはいけないような事は、問い合わせだけであってもキタミザト家を通して貰った方が良いでしょうね。
管理がしやすいので。」
「なるほど、なら他の工房の方達にもその旨は言っておきます。」
「ええ、お願いします。
ちなみに物品とかの販売とかは普通に注文が来れば販売して良いですからね。」
「はい、心得ております。
アリスさんはこの後、屋敷に戻るのですか?」
「ルフィナを連れてきているので街中を散策して戻りましょうかね。
スズネさん、他の工房の方々は元気ですか?」
「元気ですよ。
ローさんはため息が多いですけど。」
「・・・ウォルトウィスキーに問題が発生しましたか?」
アリスが厳しい顔をする。
「いいえ、エルフの・・・ブリアーニ王国からシュワシュワな白ワインが届かなくてため息ついてます。
『まだ来ませんね~』が最近の多い呟きです。」
「物欲かぁ・・・今、問い合わせ中だからもう少し待って貰いましょう。」
「はい、その通りに伝えます。
ハワース商会のモニカさんは王都からの文具の依頼が大量らしくて人員の採用を増やすかどうかで愚痴っていますね。」
「その内落ち着くのではないでしょうかね。
黒板が行き渡れば鉛筆とチョークの販売が主になるでしょうし。
今増やしてしまってもその後の販売でどうなるのか・・・私では予想が出来ませんけども。」
「モニカさん的には鉛筆の方の種類を増やせたらと考えているようですね。
私もちょっと相談されているのですが、何か商品が出来上がったら武雄さんとアリスさんには伝えます。」
「はい、お願いします。」
「サテラ製作所のキャロルさんとローチ工房のローチさんは荷馬車の試作に入っていますね。」
「え?もうですか?
黒スライムの体液のSL-05の板を作るとは聞かされていますけど。
・・・そうですか、もう試作段階になったんですね。」
「はい、楽しそうにやっていますよ。
これは武雄さんが帰って来てからのお披露目だと思います。
クローイさんとダンさんは人工湖の荷捌き用のクレーンと輸送船の模型がほぼ出来たようです。
ダンさんはもっと小さいのを作って湯浴み場の桶に水を張って浮かべたとか言っていましたよ。」
「・・・はぁ・・・」
アリスは大人が桶に水を張って木の船を浮かべているのを想像し首を捻っている。
「それも武雄さんが帰って来てから見て貰いましょう。
ラルフさんは夏物の部屋着の広告を打ち始めましたよ。
甚平とステテコですね。」
「ん~・・・甚平は私も貰ったので暖かくなったら着ようかと思っていますが、スズネさんは買われましたか?」
「注文しました。
あと甚平に合うサンダルは探し中です。」
「サンダルですか。」
「部屋着ではありますけど、室内を移動するのに簡単なサンダルを用意しようかと思ったんですが・・・あまり意匠が良いのが無くて・・・」
「確か、裏通りの門の近くの靴屋さんが価格を抑え気味でオーダーメイドの靴を作ってくれていましたよ。
そこなら気兼ねなく出来ると思いますけど。」
「オーダーメイド・・・アリス様は作った事あるのですか?」
「ないですね。
嫁いだ姉がそこで作っていたので知っている程度ですね。」
「ん~・・・今度の休みに行ってみます。」
「研究所は定期的に休みがあるのでしたね。
『今度の休み』・・・何か甘美な響きですね。」
「予定が立てやすいのは確かですね。
いつもの面子については以上ですかね。」
「ふむふむ、ローさんの所とラルフさんの所はあとで行ってみますかね。
スズネさんは今何をしているんですか?」
「武雄さんが残していった課題と初雪殿に図面の書き方を教え始めました。」
「図面ですか?」
「はい、初雪殿は武雄さんの要請で地図の作成をしますからね。
先日、図面台が納入されたので、午前中は事務仕事をして午後は製図の勉強中なんです。
ついでに私も書き方のおさらいですね。」
「はぁ・・・少しずつ始まっているのですね。」
「はい、研究所は順調です。」
鈴音が頷くのだった。
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