第1792話 面接中です。6(クラーク議長と面談とステノ技研へご連絡。)
王立学院内の学院長室にて。
面接を終えた武雄達はクラークと話をしていた。
「・・・何とか行きましたか。」
武雄の前のクラークが疲れた顔をさせて呟いていた。
「なぜにクラーク議長が疲れていますか?」
「一時とは言え、私が長ですからね。
生徒達の行く末には気が気ではありません。
と・・・これが来年度の人員です。」
クラーク議長が武雄の前に冊子を置く。
「失礼します。
・・・ふむ・・・人数は30名強で今年とほぼ変わらずなのですか。」
「ええ、今年の入学は色々な要因で48名に増えてはいます。
来年は各地方貴族から1名の推薦入学枠がありますからね。
貴族会議が24家族、領地持ちが16家族、研究所が2家族の計42家族ありますから・・・70数名くらいになってますね!」
「全貴族が推すわけではないと思いますが?
クラーク議長は王立学院には年何名の在籍が理想と考えますか?」
「ですよね・・・私個人としては60名で2クラスずつが良いです。
そうすれば毎年とは言いませんが、地方と王都で分散して卒業生が配置出来ますし、横の繋がりが良くなり、地方の情報が入ってきやすくなります。
さらに伝手が出来るので王立学院に入れなくても優秀な人材を確保出来る可能性もあります。
今の情報の取り方ですと地方出身の王都勤めは主家の意向を聞いて判断しています。
これが結構問題なんですよね。
今、王立学院の生徒の就職先はほとんどは王城になってしまっています。
最近やっと地方に行きたがる生徒が出始めましたが・・・実は人数が少ない為、王城優先の採用がされています、王都勤めの貴族は王立学院の生徒の採用に動けないのです。
なので、主家からの直接ではない情報が取れるように数年に1度は王都勤めの貴族でも採用が出来るようにしたいと思っています。
その為には生徒数を多くするしかないのです。」
「・・・はぁ、私が前に提案したのは?」
「ふふふ、あれは良い提案でしたな。
文官達もすぐに動いてくれましたし、私も貴族会議をまとめるのが楽でした。」
「地方貴族からのやっかみは?」
「実は今回の件では出ていません。
特に西側では何やら画策しているとの報告はありますがね。」
「・・・アン殿下とクリナ殿下?」
「半分、肯定します。」
「王都の予算の配分の優遇。」
「そこは関係ないでしょうね。
王都からの補助金は向こうで稼ぐよりも少ないですし、微々たる物でしょう。」
「エルヴィス家は王城に感謝していましたよ?
私には恩恵ないですけど。」
武雄はいけしゃあしゃあと言ってのける。
「エルヴィス家が本当に大変なのは知っています。
今後もキタミザト殿が一緒に頑張って盛り上げてください。
それと研究所の費用については貴族会議で検討しますから今は除外でお願いします。」
「微々たる補助金は今後もですか?」
「戦争がありますから、各局の報告を聞いていると変わると想定が出来ますが、まだ具体的な予算案は財政局からは来ておりませんから今は想定だけしております。
具体的に決まれば伯爵の方に通達が行くでしょう。」
「補助金頼みの運営はしない方が良いのは確かなので、収支が安定するように働きかけないといけないでしょうね。」
「そこは各領地持ちが考える事でしょう。」
クラーク議長が頷くのだった。
------------------------
ステノ技研。
「タケオ様が本当に申し訳ございませんでした!」
「武雄さんがすみませんでした。」
アリスと鈴音はブラッドリー、ベインズ、ボイドを机を挟んで座っているのだが、武雄が王都でした研究所への成分販売についてヴィクターに書き写させた条件の項目に沿って説明し、思いっきり頭を下げていた。
「いやいやいや、アリス様、頭をお上げください。
全然気にしておりません。
スズネも大丈夫だから。」
「ええ、そうですよ。
むしろ嬉しいくらいです。」
「そうですぞ。
元はカトランダ帝国では認められなかった技術をお膝元に連れて来て商売をさせてくれただけでなく、国立研究所に教えるなんて職人冥利に尽きますの。」
3人の親方が笑いながら言ってくる。
「はぁ・・そう言って頂きありがとうございます。
まさか、向こうでそう言う話になるとは知らず、事前のお打ち合わせも出来ない状態で勝手に決めまして・・・」
アリスが恐縮しながら頭を上げ言う。
「・・・でも、親方方。
これって凄い中身ですよね。」
鈴音が条件項目を見ながらブラッドリー達に話しかける。
「そうだな。
こっちに何も不利益がない条件で向こうに売ったという所だ。」
「今のまま懐中時計を作るのも問題ない。
何か、新しい素材を作るのも問題ない。
何か作ったら向こうから配合表をくれる可能性がある。
で、開発資金を王都から貰える。
好条件過ぎというものじゃ。」
「逆に何か裏の思惑があるんじゃないかと勘繰るぐらいじゃ。」
3人は本当に気にしていないようだ。
「その・・・タケオ様よりこの金額で良いのかの問い合わせが来ておりまして・・・」
アリスがおずおずと紙を3人の前にだす。
「「「え!?」」」
3人が額面を見て驚く。
「国がステノ技研の技術を買うという事で王都の専売局と打ち合わせを重ねたそうですが、この金額しか出せないようなのです。
私としては適正価格がわからないのですが、ご納得頂きたいのです。」
「・・・多すぎじゃないか?」
「・・・こんなに価値が?」
「アズパール王国は凄いのぉ。」
「あれ?」
3人の反応にアリスが首を傾げるのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




