第1791話 面接中です。5(その後のキティ。)
王立学院内の食堂。
「・・・」
エイミーは目の前で3個目になるスイーツを美味しそうに食べているキティを呆れながら見ている。
「はぁ・・・美味しいですね。」
「うん、その幸せそうな顔を見れて安心したわ。」
とエイミーは言いながらも「まさか私の分も食べるとは思わなかったけど」と思っている。
「で、落ち着いた?」
「・・・はい。」
キティはまだ完食はしていないが、お茶を1口飲んでから返事をする。
「ありきたりな聞き方だけど・・・どうだった?」
「はい、エルヴィス家の現状と将来の事の一端を教えて貰いました。」
「例えば?」
「例え・・・ん~・・・あ~・・・」
キティはエイミーの問いかけに対し、どれが守秘義務にかかっているかわからず考え出す。
エイミー殿下は第2皇子一家ぐるみでキタミザト子爵とは懇意、さらにエルヴィス(スミス)殿やジーナ殿とも友好を温めているという間柄、エルヴィス(スミス)殿の正室を狙ってもいるのは私達3年生の間では公然の秘密扱いなんだけど・・・政策を他家に詳細を話しているかと問われると対王家でも各貴族は秘密にするような事があってもおかしくない、さて何を知っていて、何を知らないのか。
「あ、そうね。
こっちの知っている情報を教えないと話せないわよね。
私はタケオさんやスミスから第3皇子一家が推し進める川を使った運送システムについては知っているわ。
それに卸売市場には私達第2皇子一家も売り側で参加する気もあるわ。
それと各町で主要な生産物の割合を変えるという話と人工湖の話、養鶏場の話は第3皇子一家からそれとなく聞いていますよ。」
エイミーがキティに説明する。
「はい、その諸々をしている局の説明でした。
経済局と整備局、財政局、各町局が今後仕事が目白押しだとの事でした。」
「・・・財政局?」
エイミーが少し首を傾げる。
「はい、全体の予算を見ながら優先順位を作らないと大変だろうという事と将来性がある物については融資をする事業を始めたからその必要書類の作成補助もするようなのです。」
「・・・融資?あのエルヴィス家が?」
「え?・・・はい。」
エイミーが首を傾げているのをみてキティが首を傾げる。
「ふーん・・・融資ね。」
「あの・・・何か問題が?」
「・・・ん~・・・調べてみると現状のエルヴィス家の収支ではあまり大々的な融資は出来ないはずなのよ。」
「はぁ・・・」
「なのに事業を始めたと言ったのよね?」
「はい、確かにそう言いました。」
キティの言葉にエイミーは「これタケオさんがエルヴィス家に融資してない?」と思っている。
「ふむ・・・スミスとタケオさん、どっちから説明された?」
「キタミザト様からです。」
「タケオさんか。
・・・事業化・・・・小口としたのかな?
ウスターソースとウォルトウィスキーは工房の開発と拡張で該当しそうよね。
それに他にも融資する案件が控えているという事かしら?」
エイミーが考える。
「??エイミー殿下?」
「ううん、何でもないわ。
融資って結構不安定だからね。
事業化するとなると相当な覚悟と展望が必要なのよ。」
「そうなのですか?」
「うん、裕福な土地柄なら問題ないんだけど、エルヴィス領は余力という物が少ないからね。
それを事業化という継続仕事にしたのが驚きなのよ。」
「そう・・・ですね。
授業で融資については学びましたが、説明を受けている時は『エルヴィス伯爵領では最近始まったんだ』くらいにしか思いませんでした。」
「まぁ・・・そうよね。
でも始まったというならそうなのでしょう。
エルヴィス家が将来に発展が期待出来る仕事が見つかり始めたという事だしね。」
「はい、そこは15年後には収入は現在の1.4倍~1.8倍、人口は8~9万人で1.3倍になると想定していると言っていました。」
「・・・凄いわね。」
「はい、私も驚きました。
各町に特色を持たせて人を呼び込むと。」
「呼び込む・・・商隊という訳ではなさそうね。
となると・・・旅をさせるという事に繋がりそうね。」
「はい、1週間程度の滞在をして貰えるようにしたいと。
キタミザト様が。」
「タケオさんとエルヴィス伯爵は思い切ったなぁ。
移動費と警備費用、滞在費か・・・どこをどう抑えるかが肝心ね。」
「キタミザト様はこれからエルヴィス家と話し合うと言っていました。」
「そう・・・それでもキティに話をしたという事はタケオさんの中では実施するんでしょうね。
確度は高そうね。」
「はい、随分と楽しそうに話しておいででした。」
エイミーの言葉にキティが頷く。
「で、キティはどこの部署に行きたいと言ったの?」
「経済局と整備局、財政局、各町局内であればどれでもと。」
「・・・説明された部署にか。
キティはそれで良いの?」
「はい、どれもやりがいがあって楽しそうなんです。
忙しいというのはあるでしょうけど、何とかしていきます。」
「体壊さないようにね。」
「はい、エイミー殿下が嫁がれるまでには新人は卒業しておきます。」
「・・・それは関係ないわよ。」
エイミーがキティの言葉に呆れるのだった。
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