第1788話 面接中です。2(整備局と財政局も大概忙しい。)
「経済局はそんなところですね。
整備局については人工湖というのを建設予定です。
予定と言っても作る事が決まっているので建設中といっても差し支えないでしょう。
まぁ整備局のみでやっているわけでもないのですけど、整備局が中心になってという感じですね。」
武雄がキティに言ってくる。
「じ・・・人工湖。」
キティが呟く。
チョークの成分は実は王立学院内でも何が使われているかわからない謎物体だったのだが、製造地の次期当主から答えを教えられ、秘密にしろと言われキティは頭が真っ白になっていた。
さらに聞きなれない単語を聞かされたのでオウム返しのように呟くのでキティは一杯一杯なのであった。
「第3皇子一家での異動後の目立つ政策としては卸売市場という政策があるのですが・・・まぁ興味があるのなら調べてみた方が良いでしょう。
この卸売市場に付随する形で提案されたのが川を使っての水運業の発展計画となっています。
要はウィリアム殿下領からエルヴィス伯爵領まで川を使って運送した方が早く着くだろうという政策ですね。
これにより多くの物が行き交う可能性があるという話です。」
「・・・はぃ。」
キティがゆっくりと頷く。
「エルヴィス伯爵領は川の一番上流に位置しているのですが、川幅も制限があったり、荷捌き場が必要だったりと意外と良い条件ではないと皆で話し合ってわかったので、どうせなら輸送船を数隻は係留出来るように湖を作る事にしたんです。」
「な・・・なるほど。」
キティがぎこちなく頷く。
キティ的には「どうせなら」という飛躍の仕方が今一理解できないが話が盛り上がったのだろうと考える事にした。
「ちなみに輸送船はキタミザト家と地元の工房で考えています。
整備局は人工湖での荷捌きやら管理を担うという所ですね。
他にも王都へ向けての街道やウィリアム殿下領に向けての街道整備、河川の治水事業も含まれます。」
「街道と治水の整備ですか。
大量の物資の調達と計画立った整備工程が必要かと思われますが。」
キティが回り出した頭を使い考えながら言う。
「ええ、それに作業員の確保と村から遠い地での作業だと簡易宿泊所の計画も必要ですね。」
「ん~・・・」
キティが考える。
「財政局は税の管理や予算の分配をする部署です。
経済局、整備局だけでもこれだけ新規にしますが、他の部署だってお金が必要です。
どれもこれもとお金をかけられる程、残念ながらエルヴィス家には税収がありません。
なので優先順位を設けないといけません。
それを各局と伯爵に説明し、了承を得る必要があります。
それにエルヴィス家では将来性がある物については融資をする事業を始めています。」
「融資・・・ですか?」
「はい、資金がなく商品が出来なかったりした場合の手助けですね。
闇雲に何にでもという訳にはいきませんが、将来性と必要性、採算性を鑑みて融資を行います。
公募しますが、文官が探してくる事もあります。
要請があれば工房や商店に出向き、審査書類作成や返済計画書の作成等の補助をしたりもしますね。
お金に関する事を何でもする部署です。」
「キタミザト様、例えば・・・例えば住民にとって必要だけど採算が合わないというような事業に融資をしたいという時はどうしますか?」
「どういう内容かにも依りますが・・・採算性がないなら事業として成り立ちませんからそういうのは融資は出来ないでしょう。」
「・・・そうですか。」
キティが寂しそうな顔をさせる。
「そういう採算性がないが必要な事項はエルヴィス家で部署化した方が良いですからね。」
「え?するのですか?」
キティがすぐに驚いた顔をさせる。
「何を不思議そうな顔を?
採算性がないのに民間でしたらあっという間に潰れますよ。
採算性がないなら税金を使って事業化するしかないでしょう。
もちろん融資なんかとは比べられないくらい厳しい審査があると思いますが、それが本当に領民にとって必要な事なら部署化して事業をするべきですね。」
「キタミザト様はそう思われるのですね?」
キティが驚き顔を継続中で問いてくる。
「そう思わない者が貴族になる必要はないでしょう?
まぁ全部が全部領民の為という訳にはいかないのが現実ですけどね。
多少は貴族に利がないと収支の観点から実施は出来ないというのもまた事実ですね。
貴族がその事業を始めるとどう領民の為になり、延いては貴族の為になるのかを説明出来ないのであれば事業化はされません。
キティ・エメットさん、理想ばかり追い求めるのはダメですよ。
他人は理想だけでは動いてくれません。
社会人になるのです、その理想にたどり着く為にどの人を動かさないといけないかを考え、その人を動かす為にはどんな利を提示しないといけないかをしっかりと考えて提案してください。
わかりましたか?」
「は・・・はい!
しっかりと考えさせて頂きます!」
キティがはっきりと答える。
「ですって、スミス坊ちゃん。
何やらキティ・エメットさんは成し遂げたい事があるらしいですよ。」
「文官になりたての新人がそう言った提案は出来ないでしょうから、提案は早くて数年後とかなのでしょうが・・・丁度、僕が領主になっていそうな時期ですよね。」
「優秀な部下からの提案です、ちゃんと判断してあげないといけませんよ。」
「その時はタケオ様も立ち会って貰いましょう。」
「私研究所が忙しいと思うのですよね。」
「ははは、タケオ様のエルヴィス家の当主の相談役は解任していませんからね。
お爺さまにあとで解任しないように言っておきますからその時も相談役で居て貰います。
よろしくお願いしますね。」
スミスが言ってくる。
「ぐぬぬ・・・私とアリスは楽隠居を目指しているのに。」
「そんな事させるわけないでしょう?
働いて貰いますからね。」
スミスが言い切るのだった。
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