第1787話 面接中です。1(どこに配属したいのか。)
面接は順調に遂行されていた。
若干、キティが前のめりになりながら武雄に一生懸命自己アピールをしているのは致し方がないのだろう。
武雄はそんなキティを朗らかに「うん、うん」と相づちを打ちながら聞いていた。
「ですので、王立学院で学んだ知識を活かしつつ、与えられる仕事を通じて実務を知り、自己の成長に繋げられるのはエルヴィス家のみと考えました。
私は自らの成長が領民の生活に直結する事を自覚し仕事に邁進していこうと思っています。」
「なるほど。
エルヴィス家に就職する気持ちは確かなようですね。」
武雄が頷く。
「はい!ありがとうございます!」
キティが返事をする。
さっきまで食事が取れなかったのが嘘のようだ。
「では、次の事に行きましょう。
今回の面接の本題ですね。
キティ・エメットさんは・・・まぁ調べているでしょうが、改めて確認しましょう。
エルヴィス家では現在主要な部局が11あります。
はい、スミス坊ちゃん、言ってください。」
「総監部、総務局、財政局、経済局、整備局、環境局、軍務局と各町局です。」
「はい、そうですね。
総監部、総務局、財政局はどちらかといえば内向きの部署です。
経済局、整備局、環境局はどちらかといえば領民の為の部署。
軍務局は言わずと知れた治安維持と防衛ですね。
各町局は出先機関の色合いが強いです。
各々がやっている事は・・・スミス坊ちゃん、王立学院でも習いますか?」
「はい、習いますよ。
まだ1年生ではそこまでやっていませんけどね。
予習した感じでは地域によって部局の数が違うんですよね。
感覚としては人口的な割合によって違うのだろうと思います。」
「うん、私もそう感じています。
エルヴィス伯爵家はたぶん一番小さめの地方貴族ですね。
なので部局は最低限です。
これが隣のゴドウィン伯爵家では約3倍の住民と文官ですからね。
もっと細かく部局があった方がやりやすいとなります。
そして一番多くの人口を持っている王都は説明する必要はないでしょう。
あ、でも王立学院では違う解釈をするかもしれないのでしっかりと勉強をしてきてください。
習ったら私にも教えてくださいね。」
「はい、わかりました。」
スミスが頷く。
「さて、対国外部署としての外交局がありますが、これは王城のみに設置されてはいます。
ですが、対魔王国においてはエルヴィス家とキタミザト家、ゴドウィン家で情報の収集にあたります。
ゴドウィン家の方針はわかりませんが、少なくともエルヴィス伯爵領ではエルヴィス家は関での監視、キタミザト家は輸出入業を通じてとなります。
そして双方から持ち寄った状況を照らし合わせ、対魔王国情勢として王都に報告します。
キティ・エメットさん、ここまでは大丈夫ですか?」
「はい!大丈夫です。」
キティが返事をする。
「なので、対魔王国の情報収集は申し訳ないですが、新卒のキティ・エメットさんではまだ出来ません。
これは総監部の上の方でしかやり取りをしませんのでね。
今は対魔王国の情報収集という事項は出来ないと考えて構いません。
それと軍務局も基本は兵士上がりか魔法師専門学院卒業生のみとなっているそうですのでそちらには配属出来ないと考えてください。」
「はい、わかりました。」
キティが頷く。
「残るは内向きの部署か領民の為の部署となりますが、キティ・エメットさんの先程の話を聞いていると・・・
スミス坊ちゃん、どれが良いんでしょうね?」
「そうですね・・・付け加える情報があるというのならエメット先ぱ・・エメットさんは宿舎のまとめ役をしています。
人望も厚いと伺っていますし、成績や今の志望動機を加味するとどれでも熟せると思いますね。」
スミスの言葉にキティが幾分ほっとする。
「ふむ・・・今特に忙しいのは経済局と整備局、次に財政局ですね。
じゃ、スミス坊ちゃん、経済局の忙しい原因はなんでしょうか?」
「そうです・・・ね。」
スミスはそう言いながら武雄の顔を少し見ている。
武雄も何も言わないで朗らかにスミスを見ている。
「はぁ・・・
エメットさん、実は経済局は今、養鶏場事業と魚の養殖事業の準備と新素材の販売をしています。」
「新素材・・・ですか?」
「はい、まだ少量しか生産できないので王都で発表は控えていますし、何に使えるのかの実験をしているのですが、工房相手に少量の販売をしているのです。」
「・・・少量の試験生産と試験販売という事ですね。」
「そうです。
大規模に生産出来るかもわからない素材なので・・・試し試しです。
それに養鶏場の事業も始めるので軌道に乗せないといけません。
これは町単位で大規模な鶏の生育をし始める事にしていて、割と安価な肉や卵が領内に行き渡るようにとの政策なのです。」
「随分と思い切った感じはありますが、成功すれば領民の生活が良くなるというのはわかります。」
「ええ、それと卵の殻を回収して事業化しています。」
「卵の・・・殻ですか?」
「このチョーク、卵の殻の再利用なんです。」
「ええ!?」
「エメットさん、最低でも2年は領外の者に言ってはダメですからね。
エルヴィス伯爵領の工房の収入源なんですから。」
「わ・・・わかりました・・・」
キティがぎこちなく頷くのだった。
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