第1785話 スミス到着。(キティ、緊張中。)
早めの昼食後、マイヤー達は面接部屋に行かせ、武雄は1人学院長室に来ていた。
「キタミザト殿、用意は出来たのですか?」
「今出来る事は室内で机とか並び替えて面接するようにしただけで、あとは本人が来てからの話し合いですよ。
あ、納入されたばかりの黒板の供与ありがとうございました。」
「構いませんよ。
ふぅ・・・そうですか、準備は整いましたか。
いや、キティ・エメットはしっかりとしていると報告は受けていますが、初っ端がキタミザト殿というのは可哀想ではありますからね。
お手柔らかにお願いしますよ。」
「・・・人事局長にも似たような事を言われたのですけど。」
「皆、心配しているのですよ。」
「・・・私が無理やり部下を勧誘していたり、泣かせているように思われていると感じますが、一度たりとも泣かせた事なんてありませんよ?
来てから泣き言を言われましたけどね。」
「向こうに行ったら泣いたのですか?」
「ええ、ドラゴンと戦わせたいとか言ったら泣いて拒否しましたね。」
「はぁ・・・それは当たり前ですよ。
まさか実施はしていませんよね?」
「本気で嫌がる者を立たせたりしませんよ。
我がまま言って拒否しているだけならやらせますが、うちの者達は私が無理を言っていると感じれば私に苦言を言ってきますし、それ以外なら渋々やります。
ドラゴンは皆が皆拒否したので取りやめです。」
「それは良かった。
キタミザト殿に苦言を言える人間を配置するのは必要な事ですからね。
そういった意味では王都守備隊から人員を派遣するのは当然なのでしょう。」
「ええ、私もちゃんと物を言ってくれる人が居て安心出来ます。」
武雄が頷くのだった。
「ところで・・・第二研究所のトレーシー殿は元気かな?」
「トレーシーさんですか?
ええ、真面目に研究室長をやって貰っています。
そういえば・・・奥様のセシリー殿から何か問い合わせが行きましたか?」
「なぜそれを!?」
クラーク議長が驚く。
「エルヴィス伯爵との食事会の時にセシリー殿がクラーク議長の過去の話をエルヴィス伯爵から聞き出していましてね。
私もその場に居ました。
確か・・・王立学院で浮名を流したとかなんとか。」
「・・・人の目は誤魔化せぬものですね。
エルヴィス伯爵も昔の事を良く覚えていた物です。」
クラーク議長が遠くを見つめながら言う。
「1年生のエルヴィス伯爵にとっては、それほど衝撃的な事だったのでしょうね。」
「んん~・・・そんな数とは付き合っていなかったのですがね・・・」
「その言葉が出るだけでも凄いと思いますが。
若かりし頃は随分無茶を?」
「いやいや、清きお付き合いをしておりましたぞ。
ただ付き合う期間が短かっただけです、なので代わる代わる女性を変えていたように見えただけでしょう。
・・・そのようにセシリーにお伝えください。」
クラーク議長が頭を下げる。
「・・・はい、わかりました。」
武雄は深くは追及しないで頷く。
と学院長室の扉がノックされ、クラーク議長が許可を出す。
「失礼します。
1年生スミス・ヘンリー・エルヴィスです。
学院長、お呼びと伺い参りました。」
スミスとジーナが入ってくる。
「うむ、ご苦労。
キタミザト家より実家の執務を執り行うと聞いている。
実質はキタミザト子爵が行うだろうが、その場の空気を感じ取るだけでも当主としての自覚を生む大切な切っ掛けになる事だろう。
心してかかりなさい。」
「はい!学院長!」
スミスが返事をする。
「では、クラーク伯爵、私も面接部屋に向かいます。」
武雄が立ち上がる。
「うむ、ご存分に我が王立学院の生徒を検分されるがよろしかろう。」
クラーク議長がそう言う。
「はい、では失礼いたします。」
武雄を先頭にスミスとジーナが学院長室を後にするのだった。
・・
・
1人残されたクラーク議長はというと。
「はぁ・・・キティ・エメット、乗り切るんだぞ。」
窓の外を見ながら生徒の心配をするのだった。
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王立学院の食堂。
「はぁ・・・」
キティが極度の緊張状態に陥っていた。
「キティ、スープだけでも取りなさい。
面接中にお腹が鳴っては大変ですよ。」
エイミーがキティに1口でも食べさせようと声をかける。
「ミルクトーストも作って貰えたぞ。」
「少しだけでも胃に入れないと。」
3年生達がキティの体調を心配しながら動いていた。
「はぁ・・・ごめんなさい。
まさかここまで緊張するとは私も思わなくて。」
キティが皆に謝る。
「しょうがないさ。
いきなり子爵が来て面接なんて誰が考える。」
「普通なら進路の確認なんて総務局とか人事局の文官だろう?
いきなりトップが来るなんてあるのか?」
「いや、それだけエルヴィス家にとっての一大事なんだろうなぁ。」
「こっちも大変だが、エルヴィス家も大変なんじゃないか?」
皆が各々話し合っている。
「はぁ・・・味がしない。」
「重症だわ・・・
これは私も行った方が良いのかしら・・・」
キティのスープの感想を聞いたエイミーが少し焦るのだった。
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