第1779話 陛下との雑談。3(お金くださいと跡地利用を考えよう。)
アズパール王とオルコットが武雄が提出したマイヤーの今回の報告書に目を通している。
「・・・オルコット、どう思う?」
「私は引っ越しが出来るかの確認をしてきて貰えるだろうと踏んでおりましたが、斜め上の条件の聞き出しと魔力溜まりの封印という前代未聞の工事をされておりますね。
キタミザト殿、何名で行かれました?」
「えーっと・・・私、マイヤーさん達、ビエラ・・・7名?
リツも含めれば8名なのかな?」
「・・・この手の工事なら3小隊60名は必要でしょう。
それも1週間とかの工事期間で。」
「地中に隙間を作って埋めるとは・・・考えた物だな。
タケオ、危険はどのくらいある?」
「今すぐの脅威はないと思っています。
この対応方法を思いついたのは報告書にも記載した通り、魔力溜まりから出て来る魔物は基本頭から出て来ることがわかっているからです。
20数cmの高さしか空間がないので対応する前に勝手に潰れると考えて実施しています。
ですが、魔力溜まりは魔物の死骸を取り込み維持と拡張がされるとの事、リツの話では月に1回程度魔物が出て来ると言う事なので、数十年後には地表に現れる可能性は否定は出来ません。」
「ふむ・・・タケオの考えでは掘り返す事は可能か?」
「不可能ではありませんが、石で固めてありますので、ちょっと時間は必要になるかもしれません。
魔力溜まりの上にある総重量は約120万kgです。」
「・・・普通なら出てこれんな。」
「そうですね・・・まぁキタミザト殿が時間を作ったと考えれば問題ないでしょう。
そのうち対応策を考えておくとしましょう。
それでレッドドラゴンの引っ越し先とは?」
「なんでもですね、昔冒険者だか何だかがリツの寝床に強襲をかけて来たそうなんです。」
「・・・馬鹿なやつだな。」
アズパール王が呟く。
「・・・否定はしません。
なので引っ越し先でそういった侵入者がない所が良いとの事。」
武雄がリツは言い出していないが、リツの引っ越しの条件を提示する。
「うん、エルヴィス伯爵領だな。
人間が周りに居ると迷惑だろうしな、ミア殿の軍団も居るしちょうど良いだろう。」
「まぁ・・・そうなりますよね。
ご家族も一緒ですし。」
アズパール王とオルコットが即答する。
「陛下、オルコット宰相、初めからそのつもりでしたか?」
武雄がジト目で聞いてくる。
「それはないぞ。
今初めて聞いた話だしな。」
「ええ、私も条件的にエルヴィス領のみ対応できると今考え付いただけです。」
アズパール王とオルコットがしれっと答える。
「はぁ・・・まぁ良いです。
こっちでもそういう話にはなっていますしね。
ですが、クゥやビエラと違ってリツは成獣状態です。
山奥に住居というとリツがビエラ達に会いに来るのが大変ですし、逆もそうです。
ですが、村や町に近いと領民が怖がります。
なのでどこかの森の中とかでほど良い距離の場所を探さないといけないですし、定期的に領民と交流をして相互不和をなくさないといけません。
その他もろもろをエルヴィス伯爵に連絡して、許可を取って事業化しなきゃいけません。」
「うん・・・まぁそうだな。
言っている事はわかる。」
「キタミザト殿・・・つまりは?」
アズパール王が頷き、オルコットが聞いてくる。
「棲みかの造成費用と引っ越しの費用、ドラゴンが暮らしていく為の周辺住民への対策費用の年次予算ください!
クゥとビエラだけでキタミザト家は食費がかさんでいるんです!
ここにレッドドラゴンなんて抱えられる予算はありません!」
武雄が言ってくる。
「ここでも費用か・・・」
「年次予算ですか・・・」
2人が目線を落とす。
「予算くれないならリツの引っ越しはなしです。
流石に何も対策費用がないのにエルヴィス伯爵にドラゴンの受け入れをお願いは出来ません。
リツは成獣なんですからね?
クゥとビエラは屋敷内で外敵からの攻撃を基本的に受けないんですよ?
もし何かあったら領民に被害が出るんですから対策費用は交渉時に絶対必要です!」
「ん~・・・」
「キタミザト殿、いくら必要ですか?」
「・・・ろくじゅ・・・50枚でどうでしょうか?」
「んんん・・・」
「・・・そうですか、48枚ですか・・・」
「いや、ごじゅ・・・はい、月々金貨4枚の48枚です。」
タケオが2人の形相を見て早々に折れる。
「それと今回の封印費用は金貨16枚としたい、良いか?」
「はい、わかりました。
一人当たり金貨2枚ですね。
分配しておきます。」
「うむ、そうしてくれ。
オルコット、振り込んでおくように。」
「はい、キタミザト殿、王都の手続きが面倒なので年1回でまとめて支払います。
家の方に入れますか?」
「いや・・・あくまでビエラとクゥは私の食客です。
私の個人的な友人の括りですので、私の冒険者カードの方にお願いします。」
「わかりました。
明日中に振り込んでおきます。」
「お願いします。」
武雄が頭を下げる。
「さて・・・オルコット、調査が出来るな。」
「そうですね。
まずは何があったのかの検証でしょう。
その次に村の新設ですが・・・王都から近いのでいろいろな目的の村に出来ます。
陛下、何をさせますか?」
「ん~・・・今更、魔法刻印をしてもなぁ・・・
それにドワーフ王国からの街道にも使えたはずだな。」
「整備は必要ですが、元々あった所にですので時間的にも費用的にも軽微でしょう。
専売局の用地にしますか?
研究所の成果物の製作は王都では専売局からの流れでしょうし・・・少し奥まっていて王都にも近いなら利便性は高そうです。」
「魔力溜まりもあるから軍務局の演習地と兼用にした方が良いかもしれないな。」
「なるほど・・・確かに研究所の成果を小隊単位で試す隠密性の高い場所として用意するのも良いかもしれませんね。」
アズパール王とオルコットはリツが居なくなった後の土地の活用を考えるのだった。
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