第1777話 陛下との雑談。1(ここに来るまでにいろいろありました。)
夕食後のアズパール王の執務室。
武雄とオルコット、アズパール王がお茶をしている。
「はぁ・・・」
武雄が思いっきりため息をついていた。
「ん?どうしたタケオ?」
「いえ、夕食前にスミス坊ちゃんとエイミー殿下が遊びに来て、今日、本屋に行ったら精霊の本があったから買ったそうで・・・まぁ私が買い取らせて貰いましてね。
その後、王家専属魔法師殿に精霊の本とかを販売しに行って、部屋に帰って来たら待ち受けていた専売局長と打ち合わせをしたんですが、半泣き状態でしたね・・・極めつけは夕食後にクリフ殿下とニール殿下が遊びに来て雑談してアン殿下の手紙も貰いましてね。
ちょっと疲れました。」
「うん、ご苦労だったな。
さてまず専売局だな。
早々にと言ったら本当に今日金額を決めた決裁書が来たんで裁可はしたが。
聞いたか?」
「はい、しっかりと文書で頂きました。
戻り次第、ステノ技研と打ち合わせを行います。
何とかまとめて良い報告が出来るようにします。
その際はすぐにカードの方に入金をしてください。
入金を確認したら即配合をお送りするようにします。」
「うむ、頼む。
それで新しい精霊の本とな?」
「はい、パナに確認して貰いましたが精霊の本だそうです。
内容は見ましたが、まぁいつも通り守秘義務という事で。
王家専属魔法師殿には前回の値段で買い取って貰っています。」
「・・・いつ爺とそんなことを話していたんだか。
まぁ1冊増えるという事は可能性が1つ増えるという事だろう。
良い事だ。
まぁ精霊達には悪いが適応者が現れるまで宝物庫で待機しておいて貰おう。」
「はい。
で、殿下方に聞きましたが、カトランダ帝国で跡取りの皇子が挙式だそうですね。」
「ああ、タケオは今回は留守番だ。
といってもちょうどその時は魔王国に行っているだろう。
クリフ達にはその事は伏せてタケオには魔王国相手に専念させると伝えてある。」
「はい、殿下方にもそう言われましたが・・・」
「タケオは気になる物があるのか?
珍しそうな食材なら買って来る気ではいるが。」
「そこも気にはなりますが、自動人形の存在ですね。」
「ふむ・・・前にマイヤーから報告が上がっていたな。
確か・・・魔王国が関与しているのに魔王国で使われていない技術・・・だったか?」
「はい、国威発揚の為に挙式後の立食の際に参加者に見せる可能性はあります。
その辺の情報は欲しいですよね。
真似をしようとは今の所考えてはいませんが、敵対する可能性があるのなら知っておいて損はないかと思います。」
「ふむ・・・実際どんな物なんだろうな?
オルコットはなんだと思う?」
「人形と銘打つのですから機械的に組み立てて魔法で動かす・・・ぐらいしか私には思いつきませんが。
キタミザト殿はどう思われてますか?」
「自動人形の直訳は人形が動く。
動く方は魔法で何かしらというのでしょうけど、問題は人形の方ですよね。
人形の括りにあるというと木像、石像、鉄像、ヌイグルミ、蝋人形、剝製・・・剝製?」
武雄自身で言ってから首を傾げる。
「剝製は珍しくないだろう。
大体の屋敷にある物は皮を剥がして腐らないように何やら溶液に付けて木製の物に張り付けた物だがな。
オルコット、そうだったよな?」
「首だけならその通りでしょう。
狼や熊とかの1体丸ごととなると内臓を綺麗に取ってから木組みや細い鉄で骨組みをして動きを付けるみたいですね。」
「昔はあの手の剝製が苦手だったなぁ。
特にあの目に使っているガラスがな・・・こっちを見ているように見えて、幼少期は避けて通っていたな。」
「陛下もそんな時代があったのですね。
今からではまったく想像もつきませんが。」
オルコットが言ってくる。
「あったんだよ。
まぁ大人になって見慣れたというのはあるが・・・タケオ、自動人形は剝製を使うと考えるか?」
「いえ・・そういう訳ではないですが・・・人形ねぇ。」
「うん?何か引っかかるのか?」
「キタミザト殿が考えるというのは気にもなりますね。」
アズパール王とオルコットが聞いてくる。
「いや・・・骨組みで効率が良いのは実は人間とか生物の骨格です。
強度もありますしね。」
「そうなのか?
鉄とかの方が強いと思うが。」
アズパール王が言うとオルコットも頷く。
「耐久性や耐衝撃にはそうですけどね。
人間は内臓や筋肉が重い為、骨は結構中身が詰まっていないと・・・と言われています。
パナ、そうですよね?」
武雄の問いかけにチビパナが肩に現れる。
「はい。
アズパール王、宰相、タケオのいう事は正しいと言えます。」
「そうなのか・・・それで?」
「軽くて丈夫で・・・筋肉の収縮・・・あ~・・・筋力が増えれば重い荷物も背負えたり持ったり、少しの段差なら飛び降りたりも出来ますよね。
これって木像、石像、鉄像、ヌイグルミ等のただの人形では再現が困難なのです。
変な話、歩くという行為はとても複雑な行為の連続です。
簡単に言えば、まずは片足を上げる、支えている足と体で倒れないようにバランスを取る、上げた足を前に出す、前に倒れないように全身でバランスを取る、前に出した足が地面に着く際の衝撃を勘案して膝で荷重を受けさせる準備を始め、着地と同時に実行し、体を前にずらしながら支えていた足を前に出す・・・以下、行動とそれの調整が続くのです。」
武雄が指先を机に置きながら説明する。
「ほぉ・・・まず見るのは自動人形が歩けるのか・・・だな?」
「椅子に座って運ばれる人形というのも面白くはありますね。」
「それは違う意味で見てみたいですね。」
武雄がアズパール王の言葉に答えるとオルコットが呆れるのだった。
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