第1776話 その頃の皆様。(専売局とエイミーと陛下。)
王城内の専売局。
「ただいま~。」
専売局長が部屋に入ってくる。
「あれ?局長、早かったですね。」
局員が声をかける。
「あぁ、キタミザト殿が留守だったよ。」
「え?さっき会議が終わったと連絡がありましたよね。」
「あぁ、だから黄銅の見積もり持っていったんだけど居なかった。
まぁどこかの誰かに捕まっているんだろうけど。」
「キタミザト様ですからね。
皆が呼びに行きそうですよね。」
「そうなんだよね。
あぁそれとキタミザト殿の緊急議題はどうなっている?」
「魔王国視察ですね?
今人員を確認しているんですけど・・・リストの中に局長のお名前がありましたが?」
「私だって行きたい!安全に魔王国なんて行ける機会ないし!
休暇でも良いから!休暇で行けというなら優雅な旅行にしたい!」
「奥様連れて行かれるんですか?」
「他国に妻を連れて行く訳にはいかないからね。
妻は留守番です。」
専売局長がその前のテンションが嘘のように冷静に答える。
「あまり無下に扱うと奥様に怒られますよ?」
「・・・日頃からの感謝を込めて今日は何か買って行こうかな?
スイーツで良い店を知っているかい?」
「いきなりすると訝しがられますよ?」
「ええ?どうしろっていうの?
はぁ・・・まぁ良いや、それで?」
「ん~・・・皆行きたがっているんですよね。
どうしますか?」
「・・・やっぱり私だな。」
「はぁ・・・幹部方に回しますから精査してください。
あ、それとオルコット宰相から何か書類が来ていましたよ?
至急と機密の印が付いていましたので局長室に持って行きました。」
「え?至急で機密?オルコット宰相が?
・・・経済局長とか地方貴族とかなら要望があるとは思うが・・・どこかで紙とかお茶とかが不足している場所でも見つかったのか?
まぁわかった。」
局長が局長室に向かうのだった。
その後、この局員は局長室から呻き声が聞こえるという怪奇現象を味わうのだった。
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王都の本屋にて。
「スミス、これはどう?」
「エイミー殿下、ちょっと早いです。
もう少し待ってください。」
スミスが本を流し読みしている横にエイミーが本を重ねて置いて行っていた。
「スミス・・・そこまで中身を見なくても良いのよ?
目次と教えたい内容の所を確認して良かったら送る候補にしてくれれば良いんだから。」
「そうは言ってもですね。
・・・エイミー殿下が選んでくるのわかりやすいんです。
ついつい読みたくなるんです。」
「そう?嬉しい事言ってくれるわね。
まぁクリナの為の本だからね、最新の経営関連や難しいだけの本が為になる本でもないでしょう?
まぁ読んでみてクリナが難しい本が欲しいと言うなら次回にすれば良いしね。
急ぐ訳ではないだろうし。
それにしても・・・スミスが読んで面白かったの?」
「はい、今読んでいるのは結構面白いですよ。
物語仕立ての例文が入っていてわかりやすいです。」
「私も軽くしか見ていないけど・・・クリナに送る前に中身確認しようかな。
まぁそれは買ってから考えましょうか。
スミス、また持ってくるからね。
確認もそこそこにしてね、最終候補に残ったので見たいのがあったら送る前にスミスに貸して上げるからさ。
そこに積んであるのも目を通しておいてね。」
「はーい。」
エイミーとスミスが楽しそうに会話をしている。
「なぁ・・・アル。」
「うん・・・どうする?マリ。」
チビ精霊の2人が本棚にある1冊の本を見ながら悩んでいた。
「はぁ・・・タケオ案件だな。」
「だね・・・呼ぶ?」
「いや、主に預けている某の小遣いがある、あれで立て替えておこう。
後日、タケオに買って貰うという事で。」
「うん、そうだね。」
「じゃあ、主に言って小遣いを貰ってこよう。」
マリがその場を離れるのだった。
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アズパール王の執務室。
「ダメだ。」
アズパール王が第1皇子クリフの提案を却下していた。
「父上。
タケオが交渉能力的にも適任だと思いますが?」
「それは我も思うし、オルコットだって思うだろう。
だが、ダメだ。」
「そうですね、キタミザト殿の能力は買いますけど・・・今はダメでしょうね。」
アズパール王とオルコットが難色を示す。
「カトランダ帝国から跡継ぎの挙式への招待です。
私が行くにしても向こうの動向を把握するには聞き出す能力と技術を見て判断出来るタケオが最適です。
許可してください。」
クリフが言ってくる。
「ダーメ。
タケオは今エルヴィス伯爵と一緒に対魔王国へ注力している最中だ。
エルヴィス伯爵が長年コツコツと地道に作った道をタケオが使って、やっと成果が見えだした窓口だぞ?
今後の国家運営を考えればタケオは魔王国に専念させねばならん。
それに対カトランダ帝国とウィリプ連合国はアルダーソンの所だろう?
先の会議でアルダーソンも第一研究所の所長に相応しい感覚の片鱗は見せたじゃないか。
今後の為にもアルダーソンを連れて行く。」
「もちろんアルダーソンも連れてくつもりでしたが。」
クリフがそう言いながら考える。
「・・・父上、今『アルダーソンを連れて行く』と言いましたよね?」
ニールがアズパール王の言葉に違和感を覚える。
「うむ、前回お前達の挙式にはカトランダ帝国皇帝が来られた。
今回は我が行かないと失礼だろう。
クリフは留守番だ。
オルコット、良いな?」
「良いわけないでしょう?
と言っても確かに前回向こうからは皇帝陛下が来られましたしね・・・今回は陛下の言の通り陛下が行った方が体面的には良いでしょう。
随行員はアルダーソン殿は良いとして王都守備隊ですか・・・まぁ問題はなさそうですが。」
オルコットが諦めながら言ってくる。
「はぁ・・・私が行きたかったんですけど。」
「ははは、跡継ぎというのは良いかもしれんが、皇帝には我しか格があわんだろう。
今回は我が行く、クリフは跡継ぎなんだから大人しくしておけよ。
ニール行くか?」
「兄上の代わりに行きますかね・・・カトランダ帝国は美味しい物があるのですか?」
「美味しい物か・・・クリフ、ウスターソースを持って行くからな。」
「はいはい、準備しますよ。
はぁ・・・他国に行くなんて楽しそうなのになぁ。」
王家達はのんびりと打ち合わせをしているのだった。
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