第1770話 その頃の魔王国では。2(引っ越し先を選定するのか?)
「・・・おばさん、まだ見せちゃマズいですよね。」
「そうね・・・ダニエラちゃん、一応王城の人員だしね。」
シモーナとレバントがコソッと話している。
「シモーナさん、おば様、第1軍のと聞こえましたが、例のアズパール王国よりの輸入ですね?」
ヴァレーリが聞いてくる。
「・・・ダニエラちゃん、ちょっと待ってね。
こっちでシモーナさんと話してからそっちに聞くから。」
レバントが汗をかきながら言ってくる。
「わかりました。
それまでお茶を飲んで待っています。」
ヴァレーリが引く。
「ほっ・・・さて、シモーナさん、小声で話しましょう。
この見積もりの厚さは何?」
「はい、それについてキタミザト様よりの伝言が入っていましたので伝えます。」
レバントとシモーナが話し合いを始めるのだった。
「ダニエラ、第1軍の見積もりって?」
「例の計画の兵站だよ。
今回は初めて他国からの輸入をしてみようと思ったんだと。」
「足らないの?」
「同時期にアズパール王国方面で慣例の戦争をやるからな。
そういう報告と政策を聞いて許可はしたぞ。」
「・・・ん~・・・魔王国内は広大だし、1方面が難しくても大丈夫じゃない?」
「初の全軍出撃だからなぁ、余裕をみているんだろう。
それにこの機に乗じてアズパール王国との裏口を固めようという動きもあるのは確かだ。
それに体よくキタミザト家が出来たからな、王都に常駐する第1軍がやる意味はそこにあるんじゃないか?」
「キタミザト家は領地持ちじゃないからというのもあるのかな?・・・となると占領地政策の影響?
どんな国でも戦争は1方面に集中したいという考え?」
「楽観的に考えても政情不安が付きまとうからな。
直接的に関係がないアズパール王国と言えど同時に事を起こされる可能性はある。
事情が分かっている者がいればある程度、戦争を抑制出来る可能性は残しておきたいのだろうな。」
「私達が間に入るという事にも関係がありそうですね。」
「緩衝地帯だからなぁ。
魔王国との同盟国という立ち位置がある事を念頭にアズパール王国と外交してくれ。」
「まぁ魔王国に背を向けているしね・・・不戦協定とか相互不可侵はちょっと難しいかな。
ん~・・・やれても関税とか通行料交渉かなぁ~、あ、ウスターソースの経由地になるのかぁ・・・ニヒっ。」
「おい、流通量を絞るなよ?」
「ん~?しないよ~?」
カールラがすまし顔で言ってくる。
「・・・そんなくだらない理由で攻め込みたくはないんだがな。」
「・・・うん、私もそんな理由で併合されたくないわ。
しない、しない。」
「まぁその頃は我は居ないだろうがな。」
「ダニエラ、退官後どこに住むの?」
「キタミザト殿の所でのんびり過ごしながら他の地域に旅に行っても良いよなぁ。
拠点は当然キタミザト殿の所だな。」
「わぁ・・・迷惑そう。」
「第2候補はお前の所だがな。」
「いってらっしゃいませ!」
「いや・・・でもな。
実際に引っ越しを考えたらお前の所も居心地良さそうだろう?
我の実力知っているし。
それに前回行った際にファロンの所からの距離はわかったからな。
たまにアズパール王国の方に行って楽しんで、お前の所でシモーナの所みたいに輸出入しながら過ごしても良い訳だ。
お前から依頼があれば冒険者業もしてやるぞ?
領地異動したばっかだと周辺の警戒とか大変だろう?」
「う・・・まぁ・・・領地異動したらすぐに米や野菜とかの作付けに肉の確保もしないといけないから総出で準備するのは企画しているけど。」
カールラが悩む。
「どこに引っ越すかなぁ。」
ヴァレーリが悩むのだった。
「ダニエラちゃん!」
レバントとシモーナがカールラとヴァレーリの下にやってくる。
「はい、おば様、方向性は決まりましたか?」
「ええ、今から王城に行きます。
ダニエラちゃん、行くわよ。」
とレバントが簀巻き状態のヴァレーリをひょいと抱える。
「ん?おば様?どういう状況ですか?」
「ダニエラちゃん!口添えお願い!」
「いや・・・口添えも何も何をするのか聞いていませんが?」
「第1軍指揮官執務室に行って、キタミザト家の見積もりを提出します。
それでその場で決済頂けるように交渉したいんです。」
「・・・おば様、私では口添え出来ませんよ?
第1軍も値引きはしてくるでしょうし、そこに私は何も関与出来ないんですけど。」
「そこは何とかしてみるわ。
ダニエラちゃん!行ってくれるわよね?行こうね?
一緒に行ってくれると心の安定が得られるの!」
「いや・・・おば様、王軍とはいえお客という観点は同じではないのではないのでしょうか?」
「今後も王城との付き合いを頑張りたいの!
ダニエラちゃん達が居なくなったら細々としていくしかないのか、今後も王城に多くを納められるのか!
その岐路が今日なのよ!
行くわよ!」
レバントがヴァレーリを抱えて表に向かう。
「・・・タローマティ、止めてください。」
「一旦帰りましょうか。
昼食も取りたいですし。」
「おまえ~。」
「じゃ、シモーナさん、カールラさん行ってきます!
店番よろしく。」
「「はーい。」」
「じゃね~!」
「あ!おば様!揺れ凄っ!これダメだ!おば様!止まって!」
レバントが走り出してタローマティが後ろを追いかけていくのだった。
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