第1768話 陛下直属組織会議。8(まとまったかな?)
「・・・王家専属魔法師も第一研究所もそこまでです。
これ以上話しても話が進まないでしょう。
第二研究所からこの件で何かありますか?
先ほどから黙って見ておられましたが。」
オルコットが不毛な議論を終わらせようとする。
「感想としては、どちらも正しいとは思います。
ですが、そうですね・・・客観的に見ていた者として双方が妥協できそうな案としては、装置の大きさは荷馬車に搭載出来るくらいにして貰い、戦争時は前線と後方に臨時で拠点を設け、前線で全体を見る者と後方の拠点とやり取りをする方法で考えてみては如何でしょうか。
第一研究所の要望である前線と後方との連絡が割りと容易になりつつ、王家専属魔法師殿の懸案事項である装置は幌馬車に積める大きさまでと比較的大きく用意出来る案だと思います。
それに兵士個人で持つのはまだ早計ですし、装置の無限の拡大化は防げます。
まだこれからなのです、このぐらいの妥協をお互いにするしかないと考えますが。」
武雄が言ってくる。
「ふむ・・・幌馬車ですか。
その幌馬車を専用にするというのですね?
大丈夫でしょうか。」
オルコット考えながら言ってくる。
目には「戦場に持って行って平気か」と問うていた。
「当然、最前線に持って行くので中の装置は宝石等の高価な品は使えなそうですけど、それでも秘匿しなくてはいけない物が多いはずです。
なので・・・そうですね。
今、第3皇子一家が提唱している卸売市場への品物の運搬用に特殊な幌馬車を作る計画をしています。
簡単に言えば荷馬車に耐久性の高い箱を載せるのですけどね。
それを加工して専用馬車を作りますか。
一応剣での斬撃やちょっとした魔法ではビクともしない耐久性を持たせようと思っているので前線に持って行っても簡単には壊されないでしょうし、荷下ろしをさせないでそのまま使える事を利点として考えるなら馬を繋げばすぐに移動もさせられます。
万が一は中身を全部燃やして敵に知られないようにしないといけないのは致し方ありませんが、少なくとも時間は稼げます。」
「ふむ・・・良いでしょう。
それはキタミザト家で実施中なのですね?」
「ええ、エルヴィス領から物を買いに行く為の安全確保の為です。
幌馬車を扱っている工房に依頼して改造を計画しています。
企画段階での話だと・・・今の幌馬車の容量を運べて耐久性が増した物が出来るとなっています。
試作してみないと正確な所は出てきません。
試作した際のデータを総監局にはお教えする事は可能です。
他に教えるにしても当面はここに居る王家専属魔法師と第一研究所、王都守備隊ぐらいには流しても良いですよ。
もちろん、こっちの幌馬車と同じ物を当面は作らないという条件を総監局の方で徹底して頂いてですが。」
「わかりました、その条件でそのデータを商品化前に買いましょう。
出来ればその時に試作段階で良いので専用馬車1台の購入も実施したいです。
こちらでも戦闘を受けた際のデータを取らせて貰います。」
「そのデータくださいね。
複数台を注文頂けるのなら値引きはしますよ。」
武雄が自分の物を売るかのように言い放つ。
「・・・検討しましょう。
さて、王家専属魔法師殿と第一研究所・・・双方、第二研究所の提案は如何ですかな?
私としては程良い妥協案だと思われますが。」
オルコットが王家専属魔法師と第一研究所を見る。
「・・・第一研究所は第二研究所の妥協案に賛同します。」
アルダーソンがコンティーニを見て双方が頷いてから発言する。
「私としてもそのぐらいの大きさを目指して研究に励もうかと思います。」
王家専属魔法師も頷く。
「なら、王家専属魔法師の研究はそのように。
試作をする際はまずは幌馬車でするように。
キタミザト家より総監局が購入する専用馬車の評価によってはこちらで実施いたしましょう。」
オルコットがまとめる。
「ふむ・・・とりあえず各研究所の意見と方向性は見出だせた感じだな。
第二研究所への支払いが多くなりそうであるが・・・あまり仲介料は取るなよ?
普通は3割程度にするんだからな。」
「わかりました。」
武雄は頷きながらも「私の取り分は端数程度で問題ないでしょう」と考えていた。
「まぁ、素材も馬車も地方の工房発展に寄与するだろうし、王城が有望な研究結果は買い取ると噂が出回れば埋もれていた物を掘り起こせる可能性は高くなるだろう。
国民のやる気に繋がる見せ金と考えると・・・そう高いとは感じないか。
3機関ともあまり自身が作り出した物に拘らず、柔軟に他者、他部署が作り出した物も活用するようにな。
お前達が威張り散らす為にその組織を与えた訳ではない。
国家の発展と国防力を増進する為だ。
それを忘れるなよ。」
「「「はっ!」」」
武雄達組織長の3人が返事をする。
「・・・陛下、買い取るのは良いのですけど。
金額設定の基準はどうしますか?担当部署は?予算はどうしますか?」
オルコットが聞いている。
「んん~・・・オルコット予算どうしようか?」
「不用意に発言されましたね。
はぁ・・・そうですね~・・・どこかからお金が湧いてくれば良いのですけど。
兵士の増強だったり、規格外の物を売り込まれたりしますからね~・・・」
「だが、話を聞くと有益だろう?」
「兵士の増強も素材の事も話を聞けば今すぐというより将来にとって必要だと言うのは理解していますよ。
ですが支払うばかりで~・・・」
「それはわかるが成果として提示されているんだ、将来性もある物を説明、提示し、我らも納得した。
ならそれなりにお金を渡さねば向こうも納得するまい。
適正価格で買い取るからこそ研究が根付くし、次もとなるのはわかっている事だろう?」
「そうですね~・・・分割とか・・・出来れば良いんですけどね~。」
オルコットとアズパール王が話し合っているが、いつの間にか武雄は体ごと窓の方を向いて外をボーっと眺めている。
「なぁ・・・タケオ。」
アズパール王が武雄を呼ぶが。
「現金一括支払いのみ受け付けてます。
王家の信用を担保にした月々の分割払いは現在キタミザト家では取り扱っておりません。」
武雄が窓の方を見ながら言うのだった。
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