第1767話 陛下直属組織会議。7(長距離通信というぶっ飛んだ考え。)
(それにしても両者引きませんね。)
ジーナが呆れながら言う。
(元々噛み合わない内容の要望を出しているんですから当然ですよ。
それに私としては、一研の要望を可能にする為に自分達がしなくてはいけない事が1つあると思うのですけど・・・一研にはわかっていないのでしょうかね。)
武雄が言う。
(そうなのですか?)
(最前線に通信機器を持って行くという事は最先端技術を敵の目の前に持って行くという事なんですよ?
となると奪取される恐れがあるから万が一の時は破壊をしないといけません。
そうなると高価な物では作り辛い可能性があります。)
(まぁそうですね。)
(で、通信機器を作るのは王家専属魔法師達ですから当然のごとく魔法具になるはずですね。)
(はい。)
(通信をどうやるかはわかりませんが、魔力を結構使う可能性は否定できません。
ですが、今現在魔法を蓄積できるのは宝石を使ってというのが一般的。
だが、戦場には高価な宝石は持って行きたくない。
では、王家専属魔法師はどうやって宝石に代わる物を探すんですか?)
(それは・・・あ、一研の研究内容ではないでしょうか。)
(そういう事。
一研は通信機器を実用化させる要望を叶える為には早々に成果を出して王家専属魔法師に供与しないといけません。
彼女は今自分の首を自分で締めているんですよね。
まぁ私の方から技術が転がり込んでくるとわかっていて・・・いや、彼女の頭の中には既に貯められる魔力の量を多くさせる方法があるのかもしれません。
それを考えてから意見を通そうとしているのであれば大したものですが。)
(なるほど。
ここは一研の腕が試される可能性があるのですね?)
ジーナが頷く。
(ステノ技研の新素材・・・いくらになるんでしょうね?)
マイヤーが聞いてくる。
(さて・・・ここまで必要性が増してしまうとね。
ステノ技研の皆さんに良い報告が出来そうですね。)
(所長、ステノ技研に相談なくこんな事して良いんですか?)
(平気ですよ。
彼らはこの素材の改良に着手する余裕がないのは認めていますからね。
今は懐中時計の生産や槍の柄、唐箕の製作・・・これから盾やら試験評価用の器具。
他にもあるかな?)
(忙しいですね。
素材の研究どころではないのはわかりました。)
(ええ、なので相応の金額であれば拒否感はそこまで強くないだろうと思っていますし、派生した素材の性能も教えて貰えるとわかればさらに拒否感は少なくなると見込んでいます。)
(上手く高値が付けば良いですね。
所長が議論に参加されないのは?)
(まぁ・・・巻き込まれ防止ですよ。
特定の魔法によるスイッチの入り切りでの通信を計画したらまさかの音声の通信だなんて・・・私には手に余ります。)
(それほどまでに難しいのですか?)
(ええ。
ですが、この話の概要はエリカさんに説明していますから、会話をすると言ったのは王家専属魔法師の独断でしょうか。
意思伝達方法は私の方は通信という考えで、入り切りを使って暗号を送るという実現可能の範囲の方法なのですが、王家専属魔法師が提唱した音声通話となると・・・難易度が桁違いです。
はっきり言えば私には方法が思いつきません。)
(所長でも躊躇する内容ですか・・・ですが、王家専属魔法師殿は発表をした。)
(ん~・・・既に何かしら似たような研究をしていたのかもしれませんね。
まぁ深くは聞かないでおきましょう。)
(よろしいので?)
(折角、最高位の研究機関が私達に合わせて研究に参加してくれると言ってくれているのです。
こちらが興味本位で向こうの秘密を暴こうなどとしたら不興を買って協力もしてくれなさそうですしね。
普通に部署として対応しておけば、今回の私のように今後似たような事をしていたら何かしら情報はくれるでしょう。)
(そういうものですかね?)
(世の中、知らなくて良い事なんていっぱいあるものです。
不用意に知ろうとするから面倒事になるんですよ。
知りたいなら正々堂々と正面から質疑をして、はぐらかされるならそれまでの情報というだけです。
それに向こうが何を研究していようが、私には関係ありませんからね。
持てる手札でしたい事をしていれば良いだけですよ。)
(興味はないのですか?)
(興味はありますよ?
ここに来るまではこれまでの研究内容を聞き出そうとも思いましたけどね。
しっかりと考えるとこの国の最古の魔法の研究機関ですからね。
それも今まで表立っていない秘密の機関というおまけ付きです。
国家機密の5つや6つはあって然るべきですし、公表していないというのであれば知る必要がないということなのでしょう。
まぁ私達が今後する研究で国家機密に近付いたら警告程度はしてくれるでしょう。
私達は大人で組織なのです。
有益な情報があれば他部署に提供し、秘匿したいのなら秘匿しておけば良いだけですよ。
個人の興味というだけで、他研究所に忍び込んで国家機密を見るなんてね・・・子供じゃないんだし。
そんなのは小説の中だけの話ですよ。)
(そういうものですかね。)
(そういうものです。
『need to knowの原則』というのがあってですね。
秘密に接する権限は知る必要のある人のみにあるという考えなんですが、私にはまだ秘密を知る必要がないと考えられているという事なんですよ。
私が秘密を知る必要があると判断されれば向こうから自ずと来ます。
ほら、リツの件が具体例で挙げられるでしょう?
あれは向こうから来た秘密ですし。)
(あぁ確かに。
知る必要があるから知らされた内容ですね。)
(まぁ知らされたら何かしらの責務と行動を付けられるのが決まり事ですけどね。
興味本位で秘密を覗こうという考えを持って行動している人の気持ちはわかりかねます。
あ、そういえばリツの話を陛下達にしていませんでしたね。)
(報告書は今日の夕方までには書き終えておきます。)
(ならその後に陛下にでも持って行きますかね。
ふふ、金儲けしないと。)
(そっち方面は貪欲ですね~。)
(皆の飲み代がこの仕事にかかっているのですからね!
ビエラ達の食費はキタミザト家持ちですよ?家計の圧迫を防がないと・・・意気込みが違います!)
(所長、この会議とのやる気が違いすぎますよ?)
武雄とマイヤーが目の前の議論を無視して話し合っているのだった。
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