第1764話 陛下直属組織会議。4(研究方針の説明。)
「はぁ・・・
では、これより陛下直属組織の会議を始めます。」
進行はオルコット宰相と総監局がしていた。
会議室はロの字型に長机が配置され、各面に合わせて3列の机が並んでいる。
まずは一番奥に議長をするオルコットとアズパール王と王家、左から王家専属魔法師部隊一同、第一研究所一同、第二研究所一同と配置されている。
「さて、今回の会議は陛下直属機関の今後の研究内容の発表と吟味となっています。
王家専属魔法師、第一研究所、第二研究所の大まかな研究方針の確認ですね。
決まり次第、やる事をリスト化して王都守備隊に文章の送付をして頂き、研究の是非を問わせて頂きます。」
オルコットの言葉に皆が頷く。
「では・・・第二研究所より研究方針の説明をして頂きます。
その後、第一研究所、王家専属魔法師と順次発表頂き、最後にまとめて質疑等をいたしましょう。」
オルコットが言い放つ。
「はい!普通こういった席だと、一番の古参で権威の象徴で私達新人をいびる役目の王家専属魔法師からではないのですか?」
武雄が手を挙げてオルコットに聞いてくる。
「それは普通ならです。
陛下直属機関が一堂に会する事自体が初めてなんですからここは異例です。
それと研究所設立はキタミザト家の発案です。
王家専属魔法師はどちらかと言えばそれに巻き込まれた人達ですよ?
元々秘匿機関なのに今回を契機に表に出て来たんですから。
なので発起人から話があって然るべきでしょう。」
オルコットがすまし顔で言い放つ。
「私達王家専属魔法師は、基本的に王城と王家の事を中心に仕事をしております。
確かに部隊用の魔法具等は民間に任せっきりだったのは今にして思えば、良策とは言い難い事だったとは思いますが、それで国が回っていたのもまた事実。
今日、民間への指導を第一研究所と第二研究所が行うというのですから民間の魔法知識を集約するのでしょう。
私達は新たな魔法に触れる可能性に喜んでおります。
明確な住み分けがされるのですから仕事としても問題ないでしょう。
いびるつもりもありません。」
王家専属魔法師が言ってくる。
「ん~・・・なら問題ないのかな?
まぁ良いですか。
では、研究所としての研究方針ですね。
良いですか?オルコット宰相。」
「ええ、どうぞ。」
オルコットが武雄に勧める。
「そもそも研究所3機関の内、第一研究所と第二研究所の役目は魔法の発展・・・ではありません。
周辺諸国からの圧力、要は国防に際し技術的な側面から兵士の負担を少なくすると言うのが主題です。
魔法の発展という所は王家専属魔法師部隊の主題となるでしょう。
それに私達も発展を目的としないという訳ではありません、結果的に発展に寄与するというのはあります。
ですが、基本は兵士への負担の軽減が第一でなければいけません。」
武雄はそこで言葉を区切り皆を見ると何も言って来ないのを確認する。
「さて、国防に際しての研究において、第二研究所の研究方針はあくまで兵士です。
戦闘において、魔法師が目立っていますが兵士の9割は魔法師ではないのです。
その9割の兵士が身に着ける武具についての考察をするというのを研究の方針に据えました。
研究の内容としては、盾の強度増強と重量軽減の研究、剣・盾等の武具の国内統一基準の規定の研究、新素材の研究を」
武雄が発表を始めるのだった。
・・
・
「ふむ・・・3機関の研究方針は聞いたが・・・
王家専属魔法師が長距離通信研究、第一研究所が魔法具を使用しての魔力量の消費低減に向けての研究、第二研究所が盾と武具の共通化研究か・・・皆が被らないようになってはいるな。」
アズパール王がメモを見ながら言う。
「何かご意見がある方は居ますか?」
オルコットが3研究所に聞いてくる。
「はい。」
武雄が手を挙げる。
「ふむ・・・来ましたか。
キタミザト殿。」
「はい、第一研究所の魔法具に依る魔法量消費量低減に向けての内容の所で質疑があります。
えーっと・・・現在の魔法具は宝石と宝石を混ぜ込んだ素材、魔法刻印によって作られているのでそれ以外の素材の開発をと言われていました。
それ以外というのは具体的な目途は立っているのでしょうか?」
「ふむ、第一研究所。」
「はい、第一研究所 研究室長のコンティーニです。
現在、目途といった物はありません。
なので、これから一から素材探しと掛け合わせを実施するとしています。
魔法具の価格帯を下げる為にはどうしても必要な研究だと思われます。」
「第二研究所、よろしいですか?」
「ん~・・・目途がないですか。
実はこの懐中時計の駆動部に使われているのは、魔法適性があれば魔力を貯めることを可能にした新素材です。
これ使えませんか?」
武雄が懐中時計を取り出して言ってくる。
「!?」
コンティーニが驚いている。
「ふむ・・・タケオ、使えると思うか?」
アズパール王が聞いてくる。
「はい、この素材は魔力を貯めるという物です。
時計の駆動部を回すのに使う程度ですので効果としては微弱ではあるのですが、やり方によっては魔法の発動時の補助的な役割が出来る可能性はあると思っています。」
「ふむ・・・タケオ、それを公開する気は?」
「現時点ではありません。
これは私の発案した物でなく、協力業者が工房の社運をかけて命と頭を振り絞って作り上げた結晶です。
一般に公表というのは・・・普通に考えれば権利の譲渡となります。
全土へとなると一工房では対処できません。
なので国として材質の成分を管理するとともに発明を実施した工房に相応の金銭的な補償とその後の発展に際しての優遇措置が必要になると思っています。」
武雄が「買い取って」と言ってくる。
「ふむ・・・黙っていても良いのに話したのは・・・時間の節約だな?」
「はい、使える使えないは別としてですが、一つの結果としてこの新素材があります。
無駄な事をする必要がなくなりますし、それ以外の方法を試せる時間が増えるのです。
研究所として見過ごせないですね。」
「魔法師は数が少ないとはいえ戦力と数えられる。
その戦力増強の1つの方法に目途が立つ方針があるのは国家として見過ごせないか。」
アズパール王が悩むのだった。
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