第1758話 武雄達帰城。(なんだかんだと仲良し。)
王城の玄関。
「いや~、美味しかったですねぇ。」
「ははは、所長に満足いただけたのならあの店は相当、上の味なのですかね。」
「あ、これ王都守備隊の皆に言っておいた方が良いかも。」
「所長が褒めてたなんて知れ渡ったら王都中からくるかも。
それにしても夕霧殿と紫雲殿用のスープ多めが出来て良かったですね。」
「ん、あそこは前にブルックとアーキンがハツユキを連れて行ってくれた場所です。
なので私も体験出来て良かったです。」
「おー、夕霧殿達も満足してただいたなんて良かったです。」
「やっぱりアーキン達もあそこを選ぶか。」
武雄達が王城の玄関を開けて城内に入る。
「キタミザト殿、皆様、おかえりなさいませ。」
警備兵が声をかけてくる。
「ただいま戻りました。
もうこのまま各自部屋に戻って湯浴みをして寝るぐらいしかないのですが、何かありますか?」
「えーっと・・・ありません。
先ほどオルコット宰相が参られまして、キタミザト様が戻られても陛下や第3皇子一家への挨拶は不要との伝言を頂いております。
それと明日は3時課の鐘の後、10時より中会議室で王家直属の3研究所の会議を実施するとの事です。
場所についてはメイドにお聞きください。」
「はい、わかりました。
10時ね。
マイヤーさん、明日の予定は最低1人が私に付けば良いです。
暇なら全員参加しても良いですよ。
振り分けは任せます。」
「はい、了解しました。
とりあえずオールストンとブレアは荷物を置いて湯浴みをしたら私の部屋で打ち合わせだな。」
「「了解です。」」
マイヤーの言葉に2人が返事をするのだった。
・・
・
武雄達の部屋。
武雄達は湯浴みを終えて、今はビエラの髪を乾かしている。
「あ~♪」
ビエラが嬉しそうにしている。
「ビエラ、どうでしたか?
リツの生活状況は」
ミアがビエラの前の机に座りながら聞いてくる。
「あ?あ~・・・あ?」
ビエラが首を傾げる。
「まぁ、ドラゴンの棲みかとしては普通でしょうけどね。
私としては私達の食事を見て小さくなりたいと言うとは思いませんでした。」
「あ~。」
ビエラがうんうん頷く。
「ビエラ、頭をあまり動かさないでくださいね。」
「はい!」
ビエラが武雄に注意される。
「料理ってドラゴンが興味を引くような物なのですかね?」
「・・・あ?」
「『料理というより皆でワイワイしているのが羨ましかったんじゃない?』とか言われると『そうか』としか言えませんけど。
魔王国にいるドラゴン達って他の者達が食事していても関与しませんよね?
なんで今回リツは興味を引いたのかが気になったのですよね。」
「あ?」
「・・・え?どういう事?」
ビエラの言葉にミアが聞き返す。
「あ~。あー?」
「・・・ん~・・・つまりはビエラとクゥが一緒に住んで居て、理由が主の料理だからと言っているし。
現実に目の前でビエラが美味しそうに食べているのを見て家族で自分だけ体験出来ていない事に嫉妬したと?」
「はい!」
「・・・」
ミアが考える。
「ははは、そういう事もあるでしょう。
私としては料理程度でこっちの要請に従ってくれるドラゴンはありがたいですけどね。
まぁ、かと言ってリツ程の大きさだと満足させるだけの量は作れないというのは確かですよね。
小さくなれば料理の量も何とか用意出来ますし、ありがたいとは思うのですが、無理をしてまで小さくなられてもね。
はい、ビエラ、終わりましたよ。」
武雄がビエラの髪を乾かし終える。
「はい!
タケオ、料理、大きく作る?」
ビエラが立ち上がり武雄の方を見て聞いてくる。
「ビエラ、単純に大きいのを作ると言ってもそれはそれで大変ですよ。
今日の赤ワイン煮だってリツからしたら、ビエラにとってのスプーン程度かも知れないんですよ?
そんな量で満足するんですか?」
ミアが呆れながら言う。
「・・・無理。」
ビエラが悲しそうな顔をさせる。
「単純に大きく作るというのはありますけど・・・パスタもそうですが、ほとんどの食材は人間サイズですからね。
あのサイズをリツが食べても今のビエラに換算したら糸を食べてるような感じになると思います。
かと言ってリツのサイズに合わせて太いのを作っても茹でるだけでも相当大変ですし。
ん~・・・難しいかなぁ。」
「あ~・・・なら、小さくなる、クゥみたいに。」
「向こうで話されたやつですね。
ミアも見た事ないんですよね。」
「ありませんね~。
ビエラはビエラの姉妹を呼ぶような事を言っていましたが、来ませんでしたしね。
ビエラ、ビエラの姉妹ならわかるのですか?」
「ん~・・・たぶん!小さく出来る!
あれなら出来る!・・・はず。」
「小さくかぁ・・・人化の魔法みたいなものですか?」
「タケオ、違う!
あ~・・・人化の魔法は小さくする、体は自由、望んだ形に。
あれは昔、クゥと同じになる方法を見つけた。
成獣から小さく弱くなる方法。
クゥになる。」
ビエラが身振り手振りで説明する。
「ミア・・・これって根本が違うという事ですよね?」
「そうですね。
一方は魔力量や体の頑丈さはそのままで姿を変える方法、もう一方は幼獣時代に戻る方法。
・・・それって若返りなんじゃないですかね?」
「でもクゥと同じになってしまうと弱いんですよね?
他の魔物に狙われてしまうんじゃないですか?」
「そうですね。
だからクゥも人知れず森の中で過ごしていましたよね。
主に会ってからクゥは街中を闊歩している気がしますが、基本的に人目を避けて過ごすのが普通じゃないですか?
まぁビエラの姉妹ですからそんな風変りな魔法を作るんでしょうね。」
「あー!ミア!」
「へへーん、ビエラは人間になって旅をしたいなんて風変りだから姉妹も風変りなんですよ。」
「あー!」
「あ!また私の一族を馬鹿にして!なにをー!」
ミアとビエラがポカポカ殴り合っている。
「はいはい、喧嘩しない。
どっちも風変りなんですから。」
「なにをー!」
「あー!」
ビエラとミアが武雄をポカポカ叩き始める。
「あ~・・・もう少し上、太腿の裏をよろしく。」
「違ーう!」
「あー!」
そうは言いながらも2人で言われた通り、武雄の足を叩くのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




