第1755話 198日目 教師たちの反省会。(ジーナ、料理教室いっているの?)
教師陣のテント内。
教師陣の内5名が食事を取りながら先ほどの戦闘の報告会をしていた。
「・・・えーっと・・・ジーナ殿が7体とエルヴィスが2体、ラックとマイヤーが2体ずつねぇ。」
「これは順当?」
「順当というより出来すぎです。
例年なら十数名が参加して教師陣が補助に回って何とか終わらせるんですよ?
それが付き添いは手を出さず、生徒4人だけで終わらせるなんて・・・
普通なら4、5人で1体ずつ対応して教師陣が他の牽制をしながらなのに。」
「それも例年に比べればかなり早く終わらせた。
ジーナ殿が逸脱しているように見えるが、エルヴィスもラックもマイヤーも十分に王立学院の生徒基準では逸脱している。」
「はい、そして狼はジーナ殿に従い、戦闘せずに森に大人しく帰った。」
「脅威の排除という目的に対して最大で最速の戦果だな。」
「参加した生徒の評価としては問題なく。
あの4人は今年の御前仕合の参加を申し込んできたら無条件で許可をしましょう。」
「そこは誰も異議は挟まないだろう。
なら生徒の戦闘資質を確認する旨の会議はこれで終了する。」
「「「「はい。」」」」
教師達が頷く。
「それにしても野生のゴブリンはなぜかあそこに住み着くんだが・・・魔法師専門学院のおかげで私達が来る時は少なくなっているとは言っても10体を超えるんだよなぁ。
毎年やっているのにゴブリンの繁殖力は凄い物があるな。」
「そうですね。
ここはゴブリンと狼が出ますから、向こうも1年達の訓練にちょうど良いのでしょう。
確か2年目以降は違う所だったと思いますが?」
「2年目からは北の森でオークだよ。
3年目は南の方の森の奥地で4年は2年目の所に行って集団戦闘の仕上げ。
現地での訓練はそうなっているはず・・・変わっていなければだが。」
「まぁ向こうも学年によって対応する魔物が違うとするなら相応の場所を探すでしょうね。」
「向こうの教師陣も元騎士団でしたよね。
こっちにも騎士団から数名は入れられていますけど、数が限りがあるので・・・
元同僚とかのよしみで何か交流とかないんですか?」
「ないなぁ・・・本当ない。」
「今年はこうでしたが、例年はもっと大変ですから何か出来ないですかね。
・・・例えば教師陣の研修という目的で向こうに参加出来ませんか?
そうすればこっちの教師陣の勘が鈍らないとか。」
「俺達はこうやって面と向かって言われているから流れもわかるが、それ以外ならこっちに来ている元騎士団員が下げられている印象を受けるから俺達以外の前では言わない方が良いな。」
「あ、失礼しました。」
「いいさ、現場から離れると鈍るのはわかっている。
だが、他人に言われて良い気はしないものだ。
個人としてはしているが・・・限界もあるのは確かか。
魔法師専門学院での訓練に参加出来ると思うか?」
「提案は出来ます。
人事局が軍務局に申し込むかはわかりませんが。
数回繰り返せば渋々頼んではくれるのではないでしょうか。」
「はぁ・・・こっちは勉学が主で戦闘は予備。
そのくせ、自主性に任せるとは言っても戦闘をしたい者達を安全に危険な目に合わせないといけない。
意外と難しいんだがな・・・」
「今年は実力があるエルヴィス家が代表してくれたから良いものの数年後はアン殿下とクリナ殿下が連続で来ます。
今の内に何か出来る事をしないといけません。」
「はぁ・・・王家が行くとなれば同行する教師陣も増やさざるを得ないでしょう。
今回のように王家が居る方に教師が割かれます。
アン殿下とクリナ殿下が奥に行くというならそちらを厚めに、残るというならこちらを厚めに。
そして手薄な方に何かあってはいけません・・・ですからね。」
「・・・郊外での危険を体験させるという名目上、騎士団随行という安全が担保される状況にはさせられない。
無意識の安心を持つ状況下では何をしても遊びに過ぎないからな。」
「人事局を通じて事前の掃除はお願いしているのが精一杯ですよね。」
「毎年、ジーナ殿クラスが参加してくれないかなぁ・・・」
「それはそれで大変そうですね。」
「それもそうだな。」
教師陣が軽く笑いながら話し合うのだった。
スミス達のグループ。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
皆が何も言わずに周囲より遅めの夕食を取っている。
「・・・あ~・・・その、苦いわね。」
「サラダと一緒に頬張れば問題ないですよ。」
「殿下は頑張りました。」
「味わいがあります。」
グレースが自身の作った夕食を見ながら言う。
男子達は頑張っている。
「・・・昨日より上手くなっていると思ったんだけど。
今日のこれで確信したわ、私は料理がダメなのね。」
グレースが寂しそうな顔をさせる。
「平気ですよ、俺は食べられます。
美味しいですよ!」
イーデンが言ってくる。
「イーデンは殿下が作った物なら何でも食べるでしょうよ・・・殿下、これからだと思います。」
「うん、そうだね。
僕達はまだまだ教わらないといけない事が多いですよね。
殿下、イーデンは別として僕とカイルも殿下と料理を学びますから。」
カイルとスミスがグレースに言ってくる。
「殿下が料理を覚えるなら俺も参加するからな!」
「そ・・・そう。
なら料理、勉強しようかしら。」
「「「ええ、そうしましょう。」」」
特権階級の子供達がやる気になるのだった。
「バウアー様、バイロン様、ブル様、主達の料理教室参加の件、よろしくお願いします。」
主達の言葉を聞いてジーナがお付き達に言う。
「「はい。」」
「私も良いのですけど。
ジーナ様も参加されますよね?」
「基本的には私も付き添いをさせて頂きます。
ですが、実は私はもう既に料理教室に行っていますので、そちらが外せない時もありますのでその際はお願いいたします。」
「え?ジーナ様が料理教室に行っているのですか。」
「はい、バウアー様も行っていますよね?
たまに朝から外出されていますし、その時に限って戻って来られたら食事に並ぶ料理が増えていますし。」
「まぁ・・・殿下の実家にてですし、帰りに持たされるんですよ。
ジーナ様はどちらで?」
「私は王城の料理長から。
と言ってもまだ数回ですけどね。」
「いや、それ最大級ですけど!
でも何も持って帰ってきませんよね?」
「ええ、レイラ殿下達が私の料理の監督するんですよね。
それなりの量を作るのですが、毎回全部持って行かれます。
持って帰ってこれるのは私やスミス様達の少量のみなんです。
皆さんに振舞えるだけの量はありません。」
「・・・ジーナ様、誰に向かって料理をつくっているのですか?」
「本来は自らの為だったのですけど・・・気が付いたらこんなことになっていました。
なので、そっちの予定と被ると主達の方には参加出来ませんので、よろしくお願いします。」
「え・・・ええ、そうですね。
殿下方が絡んでいるのなら断れないですよね。」
「ならその際は私達がエルヴィス様をお守りします。」
「そうですね。
そこはお任せを。」
「ええ・・・守るというより迷子にならないように見て頂けるとありがたいです。」
お付き達も和やかに話しているのだった。
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