第1748話 最終段階。(料理だってよ。)
「ふ・・・ふふ・・・やっと終わりが見えました。」
マイヤーが今現在の穴の底で周囲を見ながら言う。
「そうですねー。」
武雄そう言いながら桶の中の白スライムの体液を撒いている。
「所長・・・キツイです。」
「もう終わりましょうよ。」
オールストンとブレアが階段に座りながら言ってくる。
底に浮き床のような形でFRP板を重ねながら配置、その上に武雄達4人で小石を10cm程度の厚さになるまでばら撒き・・・ほぼ均一になるように敷き、白スライムの体液を満遍なく撒いてリツのブレスで焼く。
これを10回程繰り返し、そこで武雄が何を思ったか壁から壁に、高さは1mと低くはあるが黒スライムの板をクロス(×の字)のブレースを入れる難工事をさせ、ブレースを埋めるように1mまで小石を敷き詰めて、白スライムの体液をかけ焼く。
次はさっきと直交方向に向きを変えてクロス(×の字)のブレースを入れてまた埋め戻し、体液を撒いて焼くを繰り返していた。
もちろんブレース端は地中に埋めた黒スライムの板と接続済みなのだが。
そんなこんなで割りと順調に工事は進んでいた。
「良し・・・上に行きますよ。」
「「「はーい。」」」
武雄達は階段を使い上に登る。
とすぐに地上に到着する。
「リツ、お願いします。」
「グルッ。」
リツが鳴いてから穴にブレスをぶち込む。
リツも何回もしているせいか慣れてきているようで、数秒間焼き続ける。
「・・・グル。」
ブレスを止め、リツが武雄に向かって鳴く。
「はぁ・・・あとどのくらいですか?」
オールストンが聞いてくる。
「さっきまで居たでしょう?2mといった所ですよ。」
「ちなみにどのくらい重いんでしょうかね?」
マイヤーが聞いてくる。
「ある程度はスライムの体液で固着させていますから強度は出ていますけど、他は小石ですからね・・・
コンクリートの体積重は軽く見積もっても20KN/m3程度ですから、1m3当たり2tくらいですかね。
10m四方で10mの深さだから1000m3で2000t?
小石を多用しているので、3割程度減として1400t、少し浮かしているから4割減として1200t、kg換算で1200000kg・・・これなら出てこれないか。」
「これで出て来れたら化け物ですね。」
ブレアが言ってくる。
「ええ、さて・・・リツが居る内は問題ないですけど、引っ越ししたらここに何があるかわかりませんね。
なにか目印を置いておきますか。」
「木だと腐りますよね。」
武雄の問いかけにマイヤーが答える。
「石碑でも作りますか?」
「石碑に文字彫った事あるのか?」
ブレアの言葉にオールストンが聞き返すが。
「ないですね。
オールストン殿は?」
「もちろんない、マイヤー殿は?」
「そんな仕事はした事ないな。
所長は?」
「そもそも文字を書けません。」
「そうでしたね。
・・・下向きに矢印でも書いて魔力溜まりとでも書いておけばわかるでしょうかね。
オールストンの仕事という事で。」
「ええ・・・俺ですか。
ブレア殿は」
オールストンがブレアを見るが。
「さっ!埋めるぞー。」
ブレアはやる気なし。
「おおーい!ちょっと待て!
穴を埋めるよりこっちの方が楽そうなのになぜ手を挙げない!」
「ははは、地図に残るような仕事はしない事にしているのです!
あまつさえリツ殿が引っ越しをし、この村が復興したとするでしょう!
数十年経った暁にはこの場が人々の待合場所になるかもしれないんですよ!
未来永劫自分の汚い字が残るなんて嫌です!
私の孫やひ孫が友人達とこの村に来て、自分の爺様の字を見られて友人達に『汚ったな』なんて感想を零された日には不憫すぎます!」
「くっ・・・マイ」
オールストンがマイヤーを探すが。
「所長、オールストンの石碑が出来たら穴の端っこに少し埋めて自立させましょう。
時間もあまりありませんからさっさと作業をしましょうか。」
「そうですね。
オールストンさんに作って貰う事にして、出来るまでに粗方3人で埋めましょうか。」
マイヤーと武雄がブレアとオールストンを置き去りにして話し合っている。
「所長!マイヤー殿!早く埋めないと夕食が遅くなってしまいますよ!」
ブレアが走って2人の下に行く。
「はぁ・・・」
そんな3人を見ながらオールストンがため息をつく。
「ん、白スライムの体液です。
オールストン、石板を作りましょう。」
夕霧がオールストンに白スライムの体液が入った樽を渡しながら言うのだった。
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課外授業の広場にて。
全生徒が列び皆の前で教師が訓示を述べている。
「以上、奥の場所に来れたのは4組だ。
魔物が出る可能性もある中、良く着いた。
皆も森の中での行動は難しいとわかっただろう。
今回の体験を活かし、街の外で動く際は緊張感を維持しながら行う事を意識するように。
また、街中でも注意を怠らずに過ごすように。
以上だ。」
教師が横に並んでいる他の教師達の列に並ぶ。
違う教師が前に出る。
「これから夕食の食材を渡します。
各リーダーはグループ員の内2名を連れてくるように。
まずはグレース殿下。」
「はい!
イーデン、カイル、行くわよ。」
「「はい。」」
次々と呼ばれていく。
・・
・
「以上配布は終わったな。
夕食のレシピは書いてある通りだ。
今日もその通りに作れば最低限の物は出来るだろう。
それと各グループ毎に各食事の際に余った食材を振り分けてある。
多少差はあるのだが・・・昨日、今日の行動内容に考慮しているつもりだ。
明日は昼前には戻る事になる。
残さないように。」
教師がそんなことを言うのだった。
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