第1747話 床が出来たようだ。(グレース選択肢があったよ。)
「ん、マイヤー、黒スライムの体液持ってきました。」
夕霧が小樽を抱えながら階段を降りてくる。
「はい、夕霧殿、ご苦労様です。
最初はどうなるかと思いましたが。」
休憩していたマイヤーが夕霧に答える。
「ん、四方に板を渡らせて、隅を板で補強。
更に補強をした所に合わせて板を対面に渡し、また隅に板で補強。
どんどん床が出来てくる。」
夕霧が武雄の作業を見ながら言う。
「ん?夕霧ご苦労様です。
上の様子は?」
武雄が夕霧が来たのに気が付き近寄る。
「ん、アサギリ(黒)達は森の中の雑草を掃除しながら体液を作成中。
オールストンとブレアは地面に彫った溝に流し込んで板と棒の生産中。
アサギリ(白)は各廃屋を回りながら不要そうな物を吸収し次の為の体液を作成中。」
「そうですか。
まぁもうすぐ下地は終わります。
対面への板は50cm間隔で渡らせて、板と板の間は隙間はありますが、歩けるようにしていますからね。
もちろん各板は点溶接ではないですけど、体液を炙ってちょっとした連結をさせていますからズレたりはしないでしょう。
この後は全面に板を置いて、連結ですね。」
「その後は・・・板を壁に水平に打ち込んで再度連結・・・でしたよね。」
「ある程度、床の強度を持たせる為にね。
棒は私達と板の荷重を持たせる為ですからね。
その後に石を入れて白スライムの体液をかけてリツに焼いて貰うという訳です。」
「この人数でする事ではない事業でしたね。」
「まぁ・・・ね。
それでもここまでしたら後は床を作って終わりみたいなものですよ。」
「あ~・・・夕食までには終わりそうですかね。」
「ははは、終わりますよ。」
武雄が笑いながら言うのだった。
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課外授業の広場の脇の森。
王立学院の生徒達が周辺の探索方法の講義を受けていた。
「・・・こういった足跡が魔物の痕跡なのね。
これは狼かしら?」
「狼・・・ですね。
ジーナ様の磯風の足の裏がその形です。」
グレースとバウアーが狼の足跡を見ながら言う。
「磯風の足ですか?」
そう言ってジーナが抱えている磯風を皆に見せる。
「ジーナ、これは・・・えーっと、ゴブリンかな?」
スミスが違う足跡を見つける。
「ですね。
ですが、単体・・・ですか。」
ジーナが少し考える。
「足跡からはそうなるね。
ゴブリンが単体での行動はあまり考えられないかな?」
「スミス、人間達が来たから様子見で来たんじゃないか?
いわゆる偵察だな。」
「その考えだと何体かこの奥に居る事になりますよ。
私達は戦闘は不向きなんですからあまり奥には行かない方がいいでしょうね。」
スミスの呟きにイーデンとカイルが言ってくる。
「スミス、奥に行くべきだと思いますか?」
グレースがスミスに聞いてくる。
「・・・事前に指定されているルートは・・・まぁその奥なんですよね。
こういった講義では安全がある程度保証されているのでしょうけど・・・ジーナ、怪しいよね?」
「ゴブリンと狼が居るとわかっているのです、私達お付きだけなら奥に行きますが・・・
スミス様達と一緒と考えると万が一の際に行動が制限される恐れがあります。
情報を持ち帰り教師陣に相談するのが今回は正道と思われます。」
ジーナがスミスの問いかけに答える。
「・・・うん、そうだね。
与えられた問題を独自に達成するという事は大切だけど、不都合な物が出てきたら皆に相談するというのも施政者として正しいよね。
特に僕とジーナだけでなく、グレース殿下やイーデンとカイルもとなると安全策を取った方が良いよね。」
「はい、伯爵様やご主人様もそう言うと思われます。」
ジーナが頷く。
「グレース殿下、僕は戻る事を提案します。」
スミスが言う。
「私もスミスに同意します。
奥は何があるかわかりません、最低でも人数が必要です。」
カイルがスミスに同調する。
「俺は奥まで行った方が良いと思うな。
奥まで行く事が課題なんだし、それにスミスも言ったがこれは王立学院の課外授業なんだ。
多少何かあっても安全は保障されている。
なら課題を熟す方が良いと思う。」
イーデンが言う。
「ふむ・・・」
グレースが考えるのだった。
スミス達のグループを遠目で見れる所にて。
「で?・・・このいかにも『奥に何かありますよ』的な足跡はどうなのよ?」
コートニーがしゃがみ込んで足跡を見ながら言う。
「確か・・・魔物も人と同じで前に進む際は前に体重をかけるから爪先の方が深いんだよな?」
「王都守備隊ではそう習ったよね。」
「・・・深くないよね?」
「深くないね~。」
他の面々も足跡を見ながら言う。
「・・・ジーナ殿達も考えているみたいだな。」
ルークがジーナ達を見ながら言う。
「ん?そうなの?」
コートニーが立ち上がりルークの見ている先を見る。
「・・・あの感じ・・・あっちにも足跡があるとか?」
コートニーが考える。
「・・・各グループは指示の通りに違う方向から森に入っていった。
そこには草はあるが歩けるようになっている道があったわけなんだが・・・」
ルークが考える。
「全ての道に足跡があるのは不自然だな。
最少ではこことジーナ殿達の所に足跡があるという事だが、それでも不自然な感じがする。」
男子生徒も立ち上がりルークの隣に来る。
「となると・・・さて、私達はどう動く?」
「先に行って魔物でもやっつけるか、戻って報告するか。」
「でも私達成績上位になる必要ないんだよね。
ジーナ殿がどう動くかによるんじゃない?
主目的は護衛なんだし。」
「そうだね。
奥に行くならバックアップぐらい出来るだろうし、戻るなら私達も一旦戻ろうよ。
目指せ10番手くらい!」
皆がジーナ達を見ながら言ってくる。
「!?・・・ジーナ殿と目があった気がする・・・」
コートニーがビクつく。
「・・・はい、ジーナ殿の班と一緒に行動しましょう。」
「抜け駆けしませんよ、私達は。」
「そうそう、無理もしません。」
「ジーナ殿に付き従います。」
「どっちに行くんだろうね。」
「グレース殿下がどう出るかなんじゃない?」
「はぁ・・・どうなるのやら。
まぁ動くまでは休憩だな。」
ルーク達はジーナ達の行動を監視するのだった。
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