第1743話 197日目 交渉OKだったの?(貴族と豪商の子息相手だもんね。)
王立学院の課外研修。
夕食も終わり、最終確認の為に各テントを教員が確認して回っている。
「あれ?・・・このキノコは?」
教師がコートニーの荷物の上に置かれたキノコを見つける。
「あ・・・それは・・・」
コートニーは考える「言えない、なんで持ち込んだのかと問われると・・・どんな弁明も役には立たない!絶対に言えない」一生懸命誤魔化す方向に考えを巡らす。
「今日の夕食で余ったんです。」
「はい、王都から持ち込んだキノコが多くて余りました。」
女子生徒が2名が即答する。
「そうか・・・明日はこちらからの食材もキノコを用意していたのだがな。
明日の周辺の探索方法の講義について野草も食べさせる予定だ。
その際に使うか?」
教師が聞いてくる。
「いえ、使いません。
今日の夕食でわかったのですが、キノコではお腹が膨れません、お腹に溜まるような野菜を持ってくるべきであったと思わされました。
なので出来ればそれと野菜を交換して貰えますか?」
男子生徒が交渉を持ちかける。
「キノコと野菜の交換か・・・ふむ・・・良いだろう。
実際の所、他のテントでも教師との食材の交換を持ちかけられている所があるのだが・・・他は肉が欲しいと要望が高くてな。
このグループは肉でなくて良いのか?」
「はい、構いません。
実際の所、各グループを見て回ったのですが、口々に肉の事を言っていましたので、私達は教師方が持ってきた肉と彼らが持ち込んだ野菜との交換が実施される可能性があると踏みました。
なので私達は余るであろう野菜の方を頂きたいと思います。」
ルークが言う。
「なるほど、皆で良く調・・・考えたな。
考え方が良い線をいっている。
事前に教えておいた内容では食材を持ち込んではいけないとは書いていないし、交渉してはいけないとも書いていない。
このグループの判断は悪くないという評価をしよう。」
教師が頷く。
「キノコと野菜の交換は実施頂けるのですか?」
「前向きに検討しよう。
実はな、この後の教師の会議で分配を決めるんだ。
交渉を持ちかけた所がどういった物をこちらに渡し、要求をしてきたかの確認をし、振り分けられる食材の量も均等分配になるだろう。
結果は明日まで待って貰おうか。
キノコはどうする?」
「持って行かれて構いません。」
コートニーが言う。
「そうか、預からせて貰おう。
では・・・テントにも異状ないな。
このグループは男女混成だ、いろいろと気を付けるように。」
「「「「はい!」」」」
教師たちがテントを出て行く。
「キノコ持って行って貰ったね。」
「でもちょっともったいなかった?」
「争いの種にしかならないからね。
これで良かったんだよ。」
「咄嗟に交渉出来たのは加点のようだな。」
「キノコと野菜じゃ割に合わないと思うけどね?」
「さて・・・キノコの価値がわかる教師が1名は含まれているだろう。
その方がどんな判断をするかというところだな。」
「持ち込んではいけないとは書いてなかったけど、交渉に使うほど持ってくる事もありだったんだね。」
コートニーが言ってくる。
「それって・・・交渉があるとわかっていてワザと食べきれない量を持ってきたという事でしょう?
それって怒られるんじゃない?」
「書かれている内容の荷物も含めてリュック1個と決まっていたんだぞ?
大袋も禁止だったし・・・そんなに持っては来れないだろう。」
「皆、必死に入れたんだね。」
「生肉は入れられないからなぁ。」
「干し肉は?」
「匂い移りがなぁ・・・」
「干し肉の匂いがした服で森の中行くのはちょっと・・・」
「私達は気が付かなくても魔物は気が付きそうだしね。」
ルーク達は話し合いながら消灯までの時間を待つのだった。
「ただいま戻りました。」
ジーナが磯風を抱えて自分のテントに戻ってくる。
「ジーナおかえり。」
「ジーナ様、おかえりなさいませ。」
グレースとバウアーが出迎える。
手にはジーナが持ち込んだ干し肉があった。
「はい、スミス様達の方にも少し干し肉を置いてきました。」
「そう、ありがとう、ジーナ。
非常食で持ってきたのでしょう?」
「はい、ですが、1日が終わりましたので3割程度は提供しても問題ないと思っています。
ここからなら歩いても最悪2日です。
何とかなります。」
「そうね。
課外授業に干し肉を持ってくるのは凄いとは思うけど、衣服に匂い移りは?」
「そこも問題ありません。
干し肉はリュックの一番下にタオルで包んでいます。
持ち込んだ下着にもタオルで包んで入れて干し肉と距離を空けています。
なので匂い移りの心配は低く、汗と一緒に匂いが拡散するというのもないと思われます。
戦闘ベストの方に入れているのは明日の森に入る時点で少し湿らせたタオルに包んで持っていきます。
多分これである程度は抑制出来ますし・・・まぁ最悪は出て来ても問題ないかと。」
「そう、ジーナ、ありがとう。」
グレースが礼を言う。
「さて、今日のテントと料理の採点をお願いしようかしら?
バウアー、ジーナ、忌憚のない意見が聞きたいわ。」
「「・・・」」
ジーナとバウアーが目を合わせてどうするのか意思疎通を図るのだった。
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