第1732話 明日のご予定は?(魔法刻印の歴史。)
「ふむ・・・これで一連の流れは出来たな。
タケオ、他にはあるか?」
アズパール王が武雄に聞く。
「ありませんが・・・あ、明日から2泊ほど外出してきます。」
「ほぉ・・・王都近郊で知り合いの所にでも行くのか?」
「いえ、ビエラの子、リツが王都近くに住んでいるようなので遊びに行ってきます。」
武雄がのほほんと言い放つ。
「ビエラ殿という事はレッドドラゴンか・・・く、くれぐれも逆撫でする事はないようにな!」
「王都の平和を乱さないで頂きたいのですが!」
アズパール王とオルコットが力強く言ってくる。
「皆さん、心配性ですね。
別にお宅訪問だけですし、こっちには母親が居ますからね。
ただ遊びに行くだけですよ。
アリスとの挙式の際に来てくれましてね。
引き出物としてワインを持っていきます。
その程度ですよ?」
「タケオのその気軽さが怖いわ!」
「はぁ・・・穏便に過ごしてきてください。
あ、レッドドラゴンという事はあの村に行かれるのですか。
陛下、キタミザト殿には見せておきましょう。」
「ん~・・・そうだな。
タケオなら見せても平気だろう。」
「はい、確か・・・こっちの本棚でしたよね?」
オルコットが席を立ち執務室の本棚で本を探し始める。
「?・・・何ですか?」
「レッドドラゴンに村を襲われた。
そういう伝承がされておる。
だが、事実は別でな。
魔法が暴走した・・・らしいのだ。
我らが祖先はそこに調査隊と討伐隊を送り込もうとしたが、いち早くドラゴンが強襲をかけ、今も居座っている。
レッドドラゴンには害意が無くてな。
他の村や町を襲ってはいないし・・・こちらから武器を向ける訳にもいかぬからな・・・
移住するのを待っている状態なんだ。」
「・・・はぁ・・・その時ビエラ居たらしいですよ?」
「「え!?」」
「あ~。」
ビエラが頷く。
「はーい、通訳のミアです。
昼間も話しましたけど、陛下、今リツのいる村で昔大きい魔力溜まりが発生したんですって。
それでビエラとリツがたまたま近くに居たので一緒に薙ぎ払ったそうですよ。
その時に人間が数人しか生き残らなかったらしいのですけど、村を出て行ったきり戻ってこないんだとか。
そしてその後もリツはその村に居るそうです。」
「ん~・・・魔力溜まりか・・・
オルコットあったか?」
「はい、こちらですね。
この村は王都の意向で魔法刻印が出来る工房を集めた村になります。
当時、武具の性能強化を図った国の政策の一環なのですが、生き残った証言者によれば・・・えーっと・・・ここですね。
村の中央にて突然、魔力溜まりが発生。
リザードドラゴン数十体が発生、逃げまどいながら村を後にしたとあります。」
オルコットが武雄に書類を見せながら言う。
「・・・あれが数十?」
武雄が眉間に皺を寄せながら言う。
「そう言えばタケオはリザードドラゴンと対峙していたな。」
「アリスが両断出来なかった感想しかありませんが?
あれが村の中央に・・・悪夢でしょう。」
「あぁ・・・だろうな。
当時の王城は即騎士団出動を命じたのだが・・・レッドドラゴンがなぁ。」
「それは近寄れませんね。」
「あぁ、下手に刺激をしたら王都が・・・と考えて現状確認するのみとなっている。
他国から・・・カトランダ帝国辺りから工房を高給で移住させるという手もあったが、内情が露見するのを恐れ、代わりに宝石を使っての武具強化案が推し進められた。
今も魔法刻印の工房はあるが、なかなか数が増えない現状がある。
値段も高めだしな。」
アズパール王が諦めながら言う。
「・・・キタミザト家の協力工房の・・・カトランダ帝国から連れて来たステノ技研ですけど。
魔法刻印の武具作っていますよ?
確か・・・マイヤーさん達が買っていたような。」
「キタミザト殿、あまり大々的に売りに出さないでくださいね?
それとカタログください。
こっそりと王都守備隊と騎士団にまわしますから。」
オルコットが言ってくる。
「・・・輸送料とか考えるとあまり安くはなさそうですけどね。
まぁ・・・良いです。
こちらもあまり量は作っていはいないですし、試験小隊の贔屓店みたいな感じですからね。
大量の注文は受けられないでしょうし。」
「ええ、お願いします。」
「そう言えば我の武具もそろそろ更新時期か?
どうする?オルコット。」
「いつもなら王都中の工房から案を出させてとなりますけど・・・
ん~・・・キタミザト殿の協力工房も入れますか?」
「今回は見送るか?
王都中にタケオの協力工房の名が広まるというのもちょっと目の敵にされそうだな。」
「それもありますけど、ステノ技研は今は忙しいので私が参加させる気はありませんよ?
懐中時計の方を優先的に軌道に乗せないといけないですし。
他にもいろいろ手を出していますからね。」
「なら見送りですね。
まぁもう少し年が進んだ時は参加させても良いでしょうけど。」
「そうかぁ・・・まぁ王都にも魔法刻印を使う工房はあるからそっちに期待だな。」
「そうですね。」
オルコットとアズパール王が頷くのだった。
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