第1731話 魔王国に誰を随行させる?(お気楽敵情視察。)
「さて・・・魔王国相手の情報と輸出については問題ない。
魔王国から発注があった際の国内流通の試験も問題ないと。
タケオ、他にあるか?」
「はい、対魔王国向けの輸出についてはキタミザト家が管轄しますが、エルヴィス伯爵家より相手側の関までの輸送は実施するのを見込んでくれているのです・・・
これって使えませんかね?」
「ん?何にだ?」
アズパール王が聞いてくる。
「これ・・・魔王国の王城からの依頼ですよね?
それも初めて来た大口輸出の案件。
荷駄を詰め替える等々はあるのですが、ちゃんと向こうにお納めしたいというのが建前ではあります。」
「確かに大口の案件がしっかりと納入されたのを確認はしたい物でしょう。
・・・まさか、キタミザト殿!?」
オルコットが少し驚きながら聞いてくる。
「向こうからわざわざ王城内を見せてくれると言っていると思うのですけど。
まぁ好き勝手にという訳にはいかないでしょうけど。
少なくとも王都の雰囲気、兵士の日常は見れますし、エルヴィス伯爵領と対峙しているファロン子爵領の視察も出来ます。
さらに向こうの王城の依頼とあらば荷駄を襲う者は国賊です。
護衛もそれなりに付けてくれるでしょう。
かなり安全に他国の状況を確認出来ます。
確か・・・外交局でしたか?
魔王国相手にはあまり情報収集が上手く行っていないと聞いています。」
「それは確かに。
普段は居ない人間種が入っても街中では何も聞き出せなく、それとなく監視も付くらしいですからね。
・・・ふむ、表立っては何か対策が?」
オルコットが武雄に聞く。
「私が行きます。
前は向こうの侍女達が来てくれましたからね。
今回は私が訪問し経済的な友好が結べたらとは思います。
あわよくば向こうの高官に会えるでしょうしね。
アズパール王国の印象や要望・・・領土的には何も出来ませんし、補償やなんやらと言われても困りますけど・・・大まかに印象を聞いてくる程度でしょうか。
とはいっても慣例の戦争間近ですし、表面的に良い顔をされるだけかもしれませんね。
まぁ何もしないよりかはした方が良いでしょう程度の顔合わせですね。」
「まぁ・・・それが大事だともいえるのだがな。
外交的な話になったら王都に一任事項なので子爵では何も言えんとはぐらかしてくれば良いだろう。
タケオ的にはどこを連れて行きたい?」
「専売局ですかね。
魔王国のみで産出される鋼材とかがあればキタミザト家が輸入代理店ですから。
取引材料が多いと我が家の収入が上がりそうです。
食事のネタは多いに越したことはありません。」
「タケオ、やりすぎるなよ?」
「わかっていますよ。
でも希少価値がある鋼材を取引させてもらえれば利率も上げられそうなのですけどね。
鉄とか銅とか日常で使う分も少数でも定期的に輸入出来たら良いですよね。」
武雄が楽しそうに言う。
「キタミザト殿、例の研究所の方の予算を上げますから低利率での輸入をお願いしますよ。」
「そこを言われると・・・専売局と要相談としておきます。」
「ええ、それでお願いします。」
オルコットが頷く。
「となると、エルヴィス家から魔王国に向けての輸送時に人員を送り込まないといけないか。
オルコット、タケオの考えでは専売局だが、他にはどこを向かわせる?」
「外交局と軍務局でしょう。
まぁキタミザト殿の交渉に口を挟むような事はさせませんが、道中で魔王国の雰囲気を的確に感じ取れる人材が必要でしょうか。」
「正式に発注依頼が来てからとなると・・・少し慌ただしいな。
タケオ、日程は調整出来るか?」
アズパール王が聞いてくる。
「王城には文書でお伝えするとなるでしょうから最短で4日程度で正式な話が行くかと。
ジーナ経由で簡易的な情報は事前にお知らせ出来るとは思います。
ですが、どちらにしても書類が到着後に早々に出て貰わなければいけないでしょう。
向こうでは早々に出荷したいでしょうからね。
荷馬車や御者、護衛等の手配と積み込み等々・・・1週間かそこらでは用意が出来てしまうのではないでしょうか。」
「そこは何とかさせよう。
それにしてもジーナにか。
何かしているのか?」
「ミアの部下の鷲達を使って簡易的な中身の文章のやり取りをしています。
結構早く着きますよ。」
「ほぉ・・・魔物を部下に持つ意義はそこにもありそうだな。
今もしているのか?」
「2、3日に1度往復していますので、スミス坊ちゃんもジーナも領内の事は知っていますし、私達もジーナ達の動きはそれとなく理解しています。」
「それは便利だなぁ。
うちでも王家同士でやってみたい物だが・・・どうやって部下にするかの初期の段階で頓挫するだろうな。」
アズパール王が諦める。
「ミア殿のように従順で通訳をしてくれる方の採用からですね。」
オルコットも半ば諦めながら言ってくる。
「・・・あの?・・・ちょっと良いですか?」
武雄が訝しながら聞いてくる。
「ん?なんだタケオ?」
「ジーナ達獣人が狼達と話せますし、そもそも精霊達が話せますよ?
今、3王家に精霊居ますよね?
獣人の雇用はこれからとして・・・出来ない状況ではないのではないですか?」
「「・・・」」
アズパール王とオルコットが顔を見合わせる。
「ふむ・・・まぁ近々クリフとニールもこっちに来るからな。
その際にまた話を振ってみよう。」
「お二方が来るのですか?」
「ええ、名目上は第3皇子一家の引っ越しの引継ぎですけどね。
実際は4年半後の戦争についてです。」
オルコットが言う。
「・・・陛下直属の私達2研究所も出るという事ですね。」
「当然だな。」
「はぁ・・・わかりました。」
武雄がため息をつきながら頷くのだった。
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