第1730話 武雄暗躍?(良い題材が来ましたよ。)
アズパール王の執務室。
アズパール王とオルコットに武雄が今来た内容を話していた。
「なるほどな・・・オルコット、さっき我と武雄から言った事を加味するとどう思う?」
「はぁ・・・慣例の戦争が実施される可能性があると言うのは・・・流石はエルヴィス伯爵です、唸るしかありませんね。
今後ともエルヴィス家、キタミザト家にて魔王国の情報収集をお願いいたします。
それとそのヴィクター殿の予想・・・多分本質を突いているでしょう。
侵攻先の国の情報はジーナ殿の説明通りだとするならば、起因はキタミザト殿が向こうに渡した子供の情報となるでしょう。
それにしても米という穀物を受け渡しに来た侍女にビエラ殿を使って伝言をするとは・・・この一連の動きでその侍女は相当陛下に物が言える方なのだというのはわかりますね。
そして魔王国王もまた部下の言葉に真摯に耳を傾けるという人物と見受けられます。」
オルコットが頷く。
武雄は「説明上、侍女と言いましたけど、ご本人に伝えましたしね、すぐ動くでしょうよ」と顔には出さず思っている。
「そうだな。
タケオ、我が国への侵攻作戦はエルヴィス伯爵はないと判断したようだが、どう思う?」
「ないでしょうね。」
「ほぉ・・・それはどうしてだ?」
「ヴィクターの話ではそもそも魔王国王軍は単体で約2万、対している2領地だけでも兵士6000名、オーガ550体を即投入出来るのですよ?
やる気ならさっさと攻めていますよ。
今まで何も本格侵攻をする素振りさえしていない。
なので、今の魔王国陛下は基本的にアズパール王国への本格侵攻は考えていないと捉えられます。
ですが、慣例の戦争とは言え隙を見せたら攻めてくるでしょうから相応の対応をするしかないのですけど。
どちらにしてもこちらから仕掛ける事ではないでしょう。」
「そうだな。
率先した戦闘行為は難しいな。」
「・・・基本的に対魔王国相手の戦闘というのは防衛戦の事を指していると考えています。
なので国としては負けるにしても大打撃を与える程度の兵力を展開出来るようにしなければなりません。
兵士達の消耗と補償、戦後に得られる領土やその運営・・・天秤にかけた際に割に合わないと思わせるのがアズパール王国の基本理念であると考えています。
もし今後誰かが魔王国に対して本格侵攻をしようとか言ったとしても、現実を理解していない者の夢のまた夢、妄想の類でしょう。
アランさん、ご子息達にちゃんと言っておかないと無益な血が流れますよ?
戦う気がないドラゴンにちょっかいを出せばどうなるかはわかっていると思います。
対魔王国もそう言った考えをしっかりと持ってください。」
「わかっておる。
で・・・この王都からの穀物購入だがな?
スミスにさせるのか?」
「はい、エルヴィス伯爵からの依頼です。
ジーナには補佐に回って貰います、先ほど真っ当な方法は教えておきました。」
「数店から見積もりを取って良い条件の所と契約をという所でしょうか?」
武雄の言葉にオルコットが言ってくる。
「はい、裏口としては王家と王城を動かすんだよとは仄めかしましたが。」
「・・・スミスとジーナにはまだ早かろう。
確かにスミスならば王家は何とかなるが・・・あまり便宜を図ってはやれんと思うが?」
アズパール王が考えながら言う。
「今回の購入量は個人としては多く、組織や販売店としては普通か少ない量になります。
それでも多分スミス坊ちゃんは相当迷うでしょう。
そこで相談する人はレイラ殿下かエイミー殿下・・・近さで言えばエイミー殿下でしょうか。
エイミー殿下はそういった経験がありそうなので的確な助言が出来るでしょうけど・・・
ここで適切な助言をされると育成にはなりません。」
「タケオ、厳しくないか?」
アズパール王が言う。
「前回のライ麦では迷った末にちゃんと決断しました。
今回は少し量を多くして決断させたいのです。」
「キタミザト殿の言い分はわかりますし、失敗しても読める程度の損失で済むというのも利点でしょう。
ですが、同じ寄宿舎内に居るエイミー殿下はいつでも相談できる気軽さがあるでしょう。
となると・・・エイミー殿下に相談出来ない状態にすると?」
オルコットが言ってくる。
「ええ、ここで私の言う王家を巻き込むの意味ですよ。」
「・・・パットか。」
アズパール王が考えながら呟く。
「はい、エイミー殿下とパット殿下双方に依頼をします。
地方貴族の子息からの直接の依頼は失礼に当たるでしょうから・・・発案はレイラ殿下で結構かと。
若者に経験させるには最適な数量と金額です。
オルコット宰相がおっしゃっているように『失敗しても私達で補填が可能』というのも利点です。
エイミー殿下とパット殿下に長距離輸送の段取りと打ち合わせの交渉を経験させるべきです。」
「うむ・・・スミスは見積もりを見て分配を決めさせるのだな?」
「将来の王と日常お世話になっている王家の姫・・・双方から見積もりを貰って、どう判断するのでしょうか?
精神的に強くなりそうですよね。」
武雄が悪い顔をさせる。
「ふふふ、タケオ楽しそうだな。」
アズパール王が笑いながら言う。
「ふむ・・・さらに王家の依頼であれば少なくとも王都に集めるまでは品質が保証されるという点もエルヴィス家にとっては重要な事ですね。」
オルコットが言ってくる。
「はい、有って無いような情報を元に王都の問屋で決めるよりも確実な品質の小麦が集められるでしょう。
私達、キタミザト家からの依頼の金額は確定しているのです。
はっきり言ってしまえば家として損はないのですよ。
それに商流だけを考えればスミス坊ちゃんは『発注者』です。
お二方からすれば地方領の跡取り、自身より下位とはいえ商売上は納入先、
パット殿下とエイミー殿下、お二方がこれを加味してどういった戦略を立てるのか。
それを見てスミス坊ちゃんがどう判断するのか。
楽しくありませんか?」
「ふむ・・・パットの政策上の性格が出てきそうだな。
オルコット、面白そうだな。」
アズパール王が許可を出す。
「はい、キタミザト殿、この案件は総監局が受け持ち、裏から監視をいたします。
まずは第3皇子一家に説明が必要でしょう。
それとジーナ殿に連絡し、最初の相談相手は第3皇子一家にするようにしてください。
それと万が一、王都からエルヴィス伯爵領までの輸送で損失があった場合、1割までは王家負担で補填いたします。」
「了解しました。」
武雄が頷くのだった。
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