第1728話 帰部屋。(エルヴィス家からの依頼。)
「ジーナ、明日の準備は終わっていますか?」
武雄が対面に座るジーナに聞いてくる。
ちなみにマイヤー達は自室に戻っている。
「はい、終わっています。
作業服一式とリュックに物は詰めましたし、戦闘ベストにも必要であるであろう干物等を入れています。
ご主人様、私もアクアやシールドが出来るようになった方が良いのでしょうか?」
「それは警護をしていての要望ですか?」
「はい、私達一族は魔法が出来ないと教わってきましたが、ケアの指輪のお陰で常時発動の入り切りが出来る事を知りました。
逆に考えるとこの入り切りという制限があるから発動出来るのかもしれません、なのでその条件のままアクアやシールドが出来るようになれませんかね?」
「・・・仕組みとしては同じでしょうけど・・・
使い勝手が良いかはわかりませんね。
ジーナはどんな時に使いたいと思いますか?」
「課外授業に限った話ではないですが、街間の移動でも万が一があれば山中に取り残されます。
干物は節約すれば3日程度は持てるというのはわかったのですが、水については私は水筒に入れて持ち歩くしかありません。
何か打開策があればと思ったのです。」
ジーナが考えながら言う。
「ふむ・・・そういった魔法の細工はテイラーさんの領分ですね。
一応依頼はしてみますか・・・戻ったら聞いてみましょう。
ステノ技研の人員も居ますから何かやり方がわかるかもしれません。」
「はい、お願いします。
・・・夕霧?磯風?どうしましたか?」
ジーナが2人して外を見ているのに気が付く。
「タケオ、ジーナ、シウンとサイウンが来ました。」
夕霧が目線を外に向けたままで話す。
「2名が・・・結構な報告量があるという事でしょうかね。
ジーナ、テラスの扉を。」
「はい。」
ジーナが席を立ち、テラスの扉を開けると紫雲と彩雲が降り立ち、ピョンピョンと飛びながら入ってくる。
「2人共ご苦労様です。」
「はっ!アリスより連絡です。」
「結構な枚数があったので2名で来ました。
こちらです。」
彩雲と紫雲が武雄に言いながら、扉を閉め2名の前に座ったジーナの手に小瓶を体内から出し渡す。
「・・・ご主人様、こちらです。」
「2名が来るとはね・・・さて、何が書いて・・・
?・・・ん~・・・」
メガネをかけた武雄が小瓶から手紙を広げて流し読みしながら首を傾げ始める。
「ご主人様?」
ジーナが聞いてくる。
「ジーナ、すみませんが厨房に行って残飯を貰って来てください。
彩雲、すぐに手紙を書きますからアリスに渡してください。」
「畏まりました。」
ジーナが退出していく。
「イソカゼ、サイウン、シウン、情報の共有を。」
「「「はい。」」」
夕霧、磯風、彩雲、紫雲が情報の共有を始める。
「さて・・・私はアリス宛の手紙でも書きますかね。」
武雄が紙に鉛筆で書き物を始めるのだった。
・・
・
「つまり、魔王国の王城から少し多めの穀物輸出の依頼がキタミザト家にあって、キタミザト家はエルヴィス家から買う事を決めた、エルヴィス家はキタミザト家からの要請により売る事を決めた、エルヴィス家は放出した分を王都から買う事を決めた。
という事ですね。」
ジーナが武雄に言ってくる。
「そうなりますね。
向こうからの販売依頼ですので数量が多かろうが商売上問題はないでしょう。」
「ですが、ご主人様、今年の夏辺りの行事を知る者にとっては捉え方が違うと思われます。
向こうは何を考えているのでしょうか?」
「ヴィクターは魔王国の王城では慣例の戦争とは別の軍事行動を取るだろうという推測を話し、エルヴィスさんやフレデリックさん、アリスが同意していますね。
ヴィクターの予測では王軍全軍がブリアーニ王国に演習に向かい、ブリアーニ王国に集結し、デムーロ国という所に攻め入るのではないかという事ですね。
ん?デムーロ国?・・・子供達を輸送していた者がそんな事を言っていたかな?」
「デムーロ国は確か魔王国の南、ブリアーニ王国との隣接国です。
その地は・・・魔王国方面側の奴隷船の発着地点です。
子供達の本来の輸送先の可能性もあります。」
ジーナが目を細めながら言う。
「ふむ・・・子供達を引き取った際にヴァレーリ陛下には運送業者の情報を渡していましたけど・・・」
「魔王国の行動はご主人様の情報が関与しているのでしょうか?」
「かもしれませんし、ではないかもしれませんね。
どちらにしてもヴィクターの予測では魔王国は大規模に動くという事でしょうかね?
まぁそこは他国の事です。
何かしら結果が伝わるまで待っていましょう。」
「はい。
それでアリス様はご主人様にどう動いて欲しいという事なのでしょうか?
内容だけ聞くと家としてアリス様がもう決められておりますからご主人様に報告と事後承諾の必要はあっても紫雲と彩雲の2名で来るような報告書の量にはならないと思うのですが。」
「ええ、追加でエルヴィス家の方からの依頼ですね。
スミス坊ちゃんに王都で同数の小麦の購入をさせたいようです。
ジーナは補佐ですね。」
「ふむ・・・購入ですか。
結構な量ですね。」
「購入と運送費用をしっかりと見て欲しいと言っていますよ。」
「購入は問屋を回ったりすれば問題ないと思いますが・・・
荷馬車が数台になりそうな運送というのは想定が出来ません。
そこの情報の集め方を知っておかないとエルヴィス家に不利益をもたらしそうですね。」
ジーナが正直に答える。
「まったく、ジーナは優秀です。
向こうの心配事を見抜きすぎですね。」
武雄が苦笑するのだった。
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