第1727話 帰城。(お開きです。)
武雄達が王城の玄関を開けて城内に入る。
「キタミザト殿、皆様、おかえりなさいませ。
ジーナ殿もようこそ。」
警備兵が声をかけてくる。
「ただいま戻りました。
陛下は先にオルコット宰相に連れられて戻ったはずですが、到着していますか?」
「はい、陛下はオルコット宰相方と戻られて執務室に戻っております。
そうですか、陛下はキタミザト殿方とご一緒でしたか。」
警備兵が笑いながら言う。
「執務室?
・・・仕事を放り投げたのですかね?」
「ええ、オルコット宰相が迎えに行く時に意気込んでおりましたので、今日は朝方まで続くのではないでしょうか?」
警備兵が苦笑する。
「そこまでして飲みたいとか・・・はぁ・・・キタミザトという者は大層お偉いようですね。」
武雄が呆れながら言う。
「まったくですね。
まぁ一介の兵士では陛下と一緒に飲むなんて心臓に悪いだけですからご遠慮したい物です。
そう考えればお互いに気兼ねなく飲める相手というのは高貴な身分の方々には少ないのかもしれませんね。」
「・・・王城から出るのも一苦労のようですしね。
気晴らしになれたのなら良いのですけど。」
「そうですね。
入城に問題ありません、お通りください。」
武雄達は部屋に向かうのだった。
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ラックの店。
「・・・ずいぶん利益が出たな。」
ラックが今日の収支を付けていた。
「陛下からたんまり頂いたんですよね。」
「久しぶりに高いお酒飲んだぁ。」
「私は安い方が飲みやすくて良いかな?」
「わかる~。
でも潜入任務もあるから高級酒もわからないといけないんだろうね。」
「高級酒に慣れるとかどんだけ裕福なんだろうね?」
「うちは紛い物入れてないからまだ平気だけど、危ない所は安い酒を高い酒の瓶に入れているらしいよ?」
「うわぁ・・・それは嫌だなぁ。」
「でもそれって利益凄そうだよね。
一度そういう店に敵情視察で行ってみた方が良いのかな?」
フォレット達が店内の掃除をしながら言っている。
「ふむ・・・3回確認したが、全て同じ金額だな。
よし・・・今日は利益が出たと。」
ラックが帳簿を確認しながら金貨をしまう。
「隊長、こっちももうすぐ終わりますよ。」
「おぅ、しっかり掃除しておけよ。
はぁ・・・採算度外視とは言え月換算で利益が少しは出てないとダメだというのは厳しい物だな。」
「王都守備隊と第1騎士団で利益を出さないといけない部署ってここだけですよね。」
フォレットが聞いてくる。
「フォレット、手が空いている人員を使って裏の整理頼むぞ。
まぁ財政局から予算を分捕る際の約束事のようなものだからな。」
「そうなのですか?」
「あぁ、人件費は各隊持ちだからな。
衣装代とかも予算が出ているが酒代とツマミ代、小規模な修繕費は収益でとなっているんだよ。
なので利益を積み増しで貯蓄しているという訳だ。
ほれ、フォレット、裏の倉庫に行ってこい。」
「はーい、おーい、裏の整理だって。」
「「了~解。」」
フォレットの掛け声に2名の女性隊員が返事をして一緒に裏の倉庫に行く。
「高級酒の利益を乗せ過ぎたのか?
安い酒もそこそこ出ているな・・・ん~・・・どこかで値段設定間違えたのか?」
ラックが想定よりも利益が出ている事の原因を探り始める。
「あ、それとさっき陛下に甘えていた2名!
陛下から小遣い貰っただろう!
こっちの収益に入れるからな!」
「「えーーー・・・」」
「部隊から給金が出ているんだから小遣いはダメだと言っているだろうに。
代わりに貰った小遣いの金額までの好きな酒持っていけ!
売り上げたとしておくからな。」
「「はーい。」」
女性隊員が真面目にラックの前にアズパール王から貰ったお小遣いを置き、持って帰る酒の物色を始める。
「えーっと・・・金貨1枚ずつか。
左の棚にある物なら2本まで、右の棚は1本だ。
真ん中はダメだぞ。」
「「はーい。」」
「はぁ・・・本当ならこういうのも小遣いにしてやりたいが、こっちで稼がれても原隊から苦情が来るだけだからな。
これはこの店の規則だし、したがって貰うしかないだろう。
さて・・・今日の売れた酒の補充は何をするかな。」
ラックが酒屋のカタログを取り出して購入する物を決め始めるのだった。
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アズパール王の執務室。
「・・・何でこんなに飲むんだあいつらは・・・」
アズパール王が領収書を見ながらお茶を飲んでいる。
「陛下、楽しそうに飲まれていたようですね。」
オルコットがソファに座りながら言ってくる。
「オルコット・・・お前は見ていないのによくわかるな。」
「金額が高かったですからね。
まぁあそこでキタミザト殿にお金を借りるとかしなければもっと良かったのですけど。」
「まさか足らんとは思わなかった。
オルコットかタケオか迷ったが、利子がなさそうなタケオにしたまでだ。
こっそり借りたから他の者達にはバレてないだろうがな。
いやぁ・・・よくもまぁ飲んでくれるものだ。」
アズパール王が笑いながら言う。
「どうでしたか?
久しぶりの豪遊は。」
「こういう金の使い方は一時的には気分が良いがな。
やる物ではないな。」
「でしょうね。
陛下、手が止まっておいでですよ。」
「わかっているよ・・・さて、次の書類は何かな?」
アズパール王が領収書を見える所に置きながら次の仕事をするのだった。
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