第1718話 明日の行き先。(リツの居場所はどこ?)
「本当に・・・本当にお手柔らかにお願いします。
王都守備隊が新人ばかりになってしまいますから!」
フォレットが武雄の言葉に観念して嘆願する。
「それはマイヤーさんとアンダーセンさんに一任です。
さ、マイヤーさんが戻って来たので打ち合わせですね。」
「はい、明日からの話ですが、状況は確認してきました。」
マイヤー達が武雄の周りに座る。
「?・・・キタミザト殿、明日お出かけですか?
まぁ会議まで日数はありますから良いのでしょうけど。」
フォレットが不思議そうに聞いてくる。
「ええ、ビエラの子、リツが王城近くに住んでいるようなので遊びに行ってきます。」
「・・・ビエラ殿?」
フォレットがビエラを見る。
「あ~?」
ビエラが「何~?」と見返す。
「ええ、レッドドラゴンが居るんですよね。」
「あ・・・なんで急に?」
「いえ、私とアリスの挙式に来てくれたんですけどね。
引き出物を渡してないので届けに行こうかと思って。」
「・・・普通にご近所付き合い感覚ですね。」
フォレットが武雄の言い分に呆れる。
「まぁ・・・別にお宅訪問だけですし。
こっちには母親が居ますからね。
ただ遊びに行くだけですよ。」
「ドラゴン相手に凄く気楽ですね・・・・」
武雄の言葉にフォレットが困り顔を浮かべる。
「はぁ・・・フォレット、それが普通の感覚なんだろうがな。
俺は慣れてしまったよ。」
「そうそう、普通にエルヴィス伯爵邸がある街では、ビエラ殿はホワイトドラゴンになっているしな。
稀にクゥ殿も成獣化して訓練場で寝ているぞ?」
ブレアとオールストンが言ってくる。
「・・・はぁ・・・」
フォレットが深いため息をつく。
「それで所長、レッドドラゴンの生息地は・・・地図のここになります。
ドワーフの王国との国境から南下した場所です。」
マイヤーが武雄の前に地図を置いて目的地を指す。
「・・・王都の西北なんですか。」
「日程的には馬で街道を3時間程度行った先から北の山に向かう道に入ります。
山の方向に入ってからは2時間程度で着く予定です。」
「ふむ・・・5時間かぁ・・・ん~・・・ドラゴンだから魔物は居ないはずですけど、人が居ないから大物は出そうですよね。
なら明日は作業服で行ってみますか、後で預かっている作業服は渡します。
それと毎回の食事とは別に非常時用に食糧も少し持った方が良さそうですね。」
「そうですね。
まぁ道は1本ですけどね、何かあっても良いように各自で2日分は持っておいた方が良いでしょう。」
「それにしても・・・道があるのですよね?
ドラゴンの生息地には普通行かないのではないのですか?」
「ええ、用はないのですけどね。
昔村だった場所です。」
「あ・・・あのドラゴンですか。」
フォレットが気が付く。
「フォレットさんは知っているんですか?」
武雄が首を傾げる。
「ドラゴンの監視は2か月に1度、第2騎士団がしているんですよ。
フォレットは行った事はあるか?」
オールストンがフォレットに聞く。
「私も2回・・・3回程度ですかね。
小隊毎に持ち回りですけど、他の仕事との兼ね合いで定期的という訳ではないですし。
あのドラゴンかぁ・・・第2騎士団がしているのは遠目で生息している事を確認するぐらいですからね。
戦闘があるわけでもありませんからどちらかといえば行軍の訓練みたいな感じでしたね。」
「私も数回会っていますけど、特に自ら戦闘を始めるような印象ではないですよね・・・
で、村を?」
「ええ・・・私も今では違和感があるのですけどね。
昔の報告では村がドラゴンに襲われたとなっているのです。
でも戦線拡大というか他の村を襲わないので継続監視をしている状態ですが・・・私が任官してから1度もレッドドラゴンが暴れたという報告はないんですよね。
所長とのふれあいを見ていると敵対している感じがないですし・・・当時がどうだったのかはわかりませんが、何か我々は違う物を見て報告してしまっているのかもしれません。」
マイヤーが悩む。
「確か・・・ビエラを買った時はマイヤーさんからドラゴンは王都の騎士団の3個小隊分の戦力って言っていましたよね。」
「ええ、王都ではそう言われていますね。」
「討伐は?」
「ん~・・・私が見た限りでは記録には無いですね。」
マイヤーが考えながら言う。
「?・・・それっておかしいですよね。
アズパール王国内の村が1つ全滅しているのに報復しなかったのですか?」
「ええ・・・私の時はもうすでに現在の状態でしたから・・・
私は第1騎士団でしたので『居るのかぁ』程度の認識でしたね。」
マイヤーの言葉にブレアとオールストンも頷く。
「フォレットさん達は?」
「集団でドラゴンと対峙する訓練自体はしていますけど・・・『こうやってやるんだぁ』程度ですね。
確かに上層部は『敵を取る』という感じはないですよね。
穏便にやり過ごそうとしていますよね。」
フォレットも言ってくる。
「・・・それ・・・虚偽の報告がされていますよね?
昔過ぎるから報告もあいまいなのかなぁ?」
武雄が考える。
「・・・真実を隠す為に報告書は替えられた。
そして上層部はドラゴンと敵対する気はないと仮定して・・・」
「となると元々ドラゴンが原因で村が滅びたという事ではないが、ドラゴンと敵対すれば村が滅びるという報告を作り下手に手を出させないようにした。
討伐をしないのはドラゴンを生かす事で何かしら利益があるから。」
「ビエラ、当時の事覚えていますか?」
「あ?・・・ん~・・・タケオ、リツの家、魔力溜まり、大きい、昔、殴った!
ん~・・・ミア、あー!あ、あ~。」
「あぁ・・・そういうことですか。
主、今リツのいる村で昔大きい魔力溜まりが発生したんですって。
それでビエラとリツがたまたま近くに居たので一緒に薙ぎ払ったそうですよ。
その時に人間が数人しか生き残らなかったらしいのですけど、村を出て行ったきり戻ってこないんだとか。
そしてその後もリツはその村に居るそうです。」
「あ~。」
ビエラが頷く。
「100年ちょっと前だったそうですよ。
リツが成獣になったあたりだからとか言っています。」
「ん~・・・これは面倒な事を知ってしまった感じですか?」
武雄が考えながら言うのだった。
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