第1712話 専売局に行ってみたら。3(岩塩とわら半紙。)
「認知度が低いのは致し方ありませんが、王家のお子達が生まれたら状況が一気に変わると考えています。」
「そういえば生まれるのが今年末辺りでしたね。
ちょうど小麦やライ麦の作付け時期ですか。
今増やさなければ、ライ麦の高騰が長期におよびかねませんね。」
「情報はある程度抑えれるでしょうが・・・まぁ今年は皆が懐疑的でしょうけども、生まれた後では各王家にどんな育成方法をしているかというのは聞きたがるでしょうし、3王家が麦茶を愛用しているならばと買い漁る輩が出るはずです。
それでも収穫時期は調べれば誰でもわかる事です。
なのでそれまでは何とか混乱しつつも秩序は保たれるとは思いますが、来年の収穫後も同じと考えるのはちょっと難しいでしょう。」
「王家や貴族、王都の文官は割と物が手に入りやすい環境ですけど。
この状況下で国民に知れ渡ると・・・さらなる品薄かぁ。」
経済局長と専売局長が言い合っている。
「レシピ普及による食料不足、戦争と領地異動に向けての鋼材と建材の不足と各所の人材教育の急務・・・大衆心理が働けば下手したら衣料品にまで品薄が波及か。」
武雄が少し呆れながら言う。
「その一端はキタミザト殿も関与しているのですがね。」
経済局長も呆れながら指摘してくる。
「私が扇動している訳ではありませんよ。
・・・厄介な時期に重なるものですね。」
「そうですね。
まぁやり甲斐という点においてだけは凄くありますけどね。
専売局は人事局や軍務局に比べればまだ人材不足はマシなのかもしれませんけどね。」
「あそこは年中、人を動かしますからね。
それに研修だ、昇進試験だといろいろしていますからね。
人を見極める部署は大変そうですね。」
「人材不足の発言を地方の者が聞いたら『王都が何を言っているんだ、こっちはもっと大変だ』と言いそうですがね。」
武雄が言ってくる。
「それは・・・そうでしょうね。
キタミザト殿、ご内密に。」
「王都の各所から引き抜いている私が言う訳にもいきませんけどね。」
「確かに。」
3人が笑い合う。
「あ・・・そうだ、専売局長、専売局で扱っている例えば・・・塩とかがエルヴィス領から産出出来た場合は販売をしても良いのですか?」
「エルヴィス伯爵領は海に面していませんよね?
普通、塩は海から取れ・・・岩塩の事ですか?
第1皇子一家領の北側の貴族領が一番の産地ですね。
でもエルヴィス伯爵領からの産出は聞いた事がありませんが、発見されましたか?」
専売局長が言ってくる。
「いえ、ないです。
ですが、今後、山とかの開発をした時に発見できる可能性もありますので一応聞いておこうかと。」
「6割を専売局に卸す事と売値が我々の価格より2割以上増すとするなら貴族領内でのみ販売を許可しています。
土産品ですね。
鋼材については全数を・・・エルヴィス伯爵領なら王都に売ってください。
茶、パイプの葉は許可は出来ませんね。
衣料原料、製紙については微妙ですね。
我々が製造している方法以外での製造であるなら・・・認めるかもしれません。
どう作るかはお教えは出来ませんが・・・その際は文章で原料と製造方法を記載し、実物を添えて申請してください。
我々の製造方法でない方法を取られるのでしたら許可出来るか協議をいたします。」
専売局長が言ってくる。
「・・・製造方法か・・・そこは聞きませんが、1つ質問が。」
「答えられる範囲内であれば。」
「現在の紙の原材料は木と草どちらですか?」
「?」
経済局長が首を傾げる。
「紙の原材料は専売局内でもあまり知らせていないのですが・・・なぜその2種類を?」
専売局長が目を若干鋭くさせながら武雄に聞く。
「紙・・・違うか、紙のような物を作るのには鉱物、金属、動物、植物等々何からでも出来ます。
ですが、一般に広まって日常使っている紙を良く見てみると細長い糸状の物が不均一に圧縮もしくは乾燥されているのがわかります。
先程上げた木と草はその中でも繊維と呼ばれる糸状の組織で形成されています。
そして・・・紙の流通量を見ると先に上げた2種類以外では原材量だけでも今般の製造量は賄いきれません。
なぜその2種類としたか・・・周りを見ると無尽蔵にすらあると思わせるくらいありますからね。
ここから作れば量が賄えます。
さらに季節関係なく製造が出来る点を考慮すれば何某かの木材を利用していると考えられますね。
まぁ・・・木材は固いので相当苦労しているはずなんですけど。
ついでに言えば、衣料原料を専売局が仕切っているのは昔の草から紙を作った名残かとも思います。
正確には衣料原料を作った後の残りカスで紙を精製したのかも。
まぁこれは季節によって生産量にバラつきが出そうですからね。
今のような季節関係なくの製造は難しいと考えられます。
なので、私の中では木か草で紙を作っているが、現状は木から作っていると考えます。」
武雄が言ってくる。
「はぁ・・・キタミザト殿、博学が過ぎます。
ちなみにご明察です。
ですが、どの木材か、どういう製造方法かは秘匿事項です。
これは専売局全局員が一生涯口外しないと宣誓しますので、基本的には外には出ないはずなんです。
紙の精製方法が書かれた本が販売されたのなら即日、発禁と回収をする事になるくらい重要事項なんですよ。」
「国の収入源の1つですものね。
まぁそこに食い込むことはする気はないのですが、もう少し価格が安い物を作りたいなぁとは思うんですよ。」
「んん~・・・許可は出来るかはわかりませんが・・・ちなみに何を作るのですか?」
「小麦の藁が大量に捨てられるのでそこから季節限定で紙が作れないかなぁと。
わら半紙と命名しようかと思います。」
武雄が言うのだった。
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