第1707話 人事局に行ってみたら。2(募集が来ない。)
「差し支えなければどんな子が行きたがっているんですか?」
外交局長が聞いてくる。
「女の子ですよ。
キティ・エメットさんと言います。
お父上が外交局 対外戦略部でお勤めらしいです。」
「外交局の対外戦略部のですか。
そうですか、あ、そういえば私も前に会いましたね。
しっかりした感じの娘の印象ですね。」
外交局長が思いだしたのか言ってくる。
「局長が部下の娘さんに会うものなのですね。」
「たまたまです。
ジーナ殿関連で王城勤めをしている文官の子等が集められたんです。学院在学中のね。
その時に少し話しましたかね。」
「あぁ・・・すみません、いろいろと大変だったようですね。
王都守備隊と第1騎士団の子息達も活動しているみたいですね。
ジーナを見守る会だそうです。」
「ははは、皆考える事は同じという事です。
文官達も各局で入っている子供にそれなりに情報は渡してはいますが、彼らも子供ではないですからね。
独自に動いていると・・・思いますよ?
それに何とか穏便に過ごして次の異種族の入学に繋げないといけないですからね。」
「・・・応募が来てないのですか?」
外交局長の言葉を聞いて、武雄が人事局長と総監局長を見る。
「「・・・」」
2人共目線を逸らせる。
「ジーナはお付きですから致し方ありませんが、ジッロはちゃんと学業をしていますよね?
ちゃんと外歩かせていますか?
人目に付かせないと異種族を招き入れているのが一般に伝わらないと思うのですが?」
武雄が呆れながら言う。
「キタミザト殿・・・来ないんです・・・」
「子供達来ませんか?
なんとかそれで凌げませんか?」
2人が最後の頼みの綱を手繰り寄せようとしている。
「やるにしてもまだ早いです。
それにお金ないんですから出来ません。」
武雄の意見は変わらない。
「王立学院は致し方ないですが、魔法師専門学院には異種族が来ても良いと思うんですよね。
なんで来ないんでしょうかね?
魔法師と謳っているから獣人が来ないんでしょうか?
テーア達を見ていると魔法適性うんぬんで兵士の質が変わるとは思わないんですけどね。
軍務局辺りが身体強化している時点で魔法師だとか言っていましたけど。
一般的にはそうは思わないんでしょうかね。」
外交局長が腕を組みながら言う。
「獣人系は発動が出来ませんしね。
他の者達がファイアとかバンバン撃っているのに自分達は体力強化だけだと悲しいでしょう?
入学だけというなら・・・うちの子達でいうとエルフと魔人が入れそうですけどね。
例外としてウィリプ連合国から連れて来た獣人と思われるニルデとジルダは魔法使えましたけどね。」
「ほぉ、となると同一種族の家系ではない可能性がありますね。
・・・確かスラム街出身でしたか、その辺は追えませんかね。
逆に言えば、獣人の身体能力で魔法が出来るとは私達から見れば優秀ではありますが・・・種族的には褒められたやり方ではないのでしょう。
異種族の結婚は否定も推奨もしない本人達に任せているのが我が国ですが、例としては数件なのでしょうね。
そういった者が魔法師専門学院や王立学院に入ったとは聞いた事がありません。」
「ええ、まぁどういった家系なのかは私の部下で気にしている者はいませんけどね。
ちなみに2人とも元気に毎日畑仕事と魔法の乱発とちょっとの勉強とで駆けずり回っているらしいですよ。」
「元気な事が一番でしょう。
生い立ちが生い立ちですからキタミザト殿の部下は塞ぎ込んでしまってもおかしくない面々です。
それが誰一人として塞ぎ込まずに仕事に打ち込んでいる。
良い人材をお採りになりましたね。」
「全員が生き死にがかかった所を救っていますからね。
今の現状が安心で安全な場所だと思ってくれていると解釈しています。
その環境を変えてまでうちの部下の能力を上げようとはあまり思いませんよ。」
「ま、今はそれで結構です。
あ、折角この面子ですからね。
ウィリプ連合国の方の情報をお知らせしておきます。」
外交局長が3人を見回しながら言う。
「はい。」
「各局には定例会の時に報告予定ですが、キタミザト殿はすぐ何処かに行かれますからね。
居る時に話さないと機会を失ってしまいますから。」
外交局長がやれやれと言い放つ。
「私が気ままみたいに言わないでください。
まぁ、しっかり腰を据えて物事は出来ていませんけど。」
「ちなみに明日からのご予定は?」
「ビエラの娘のレッドドラゴンが王都近郊に住んでいるらしいので、場所を調べて明日から2泊程度で会いに行ってきます。
今日は準備日です。」
武雄が予定を言うが。
「はぁ・・・なんでドラゴンの棲みかに遊びに行くんですか・・・
冒険者なら討伐を揶揄して会いに行くと言うかも知れませんが、本当に会いに行くんですから・・・
ちなみに何しに?」
外交局長が呆れながら聞いてくる。
「私とアリスの挙式に来てくれたんですけどね、引き出物渡してないんでお届けに。
ワインを樽で数個ですよ。
ビエラは娘の棲みかの確認ですね。」
「・・・普通に親戚か知人の家に行って世間話をしに行く感覚だし・・・」
「あり得ない感覚ですよ。」
人事局長と総監局長が呆れている。
「まぁ私の事は良いじゃないですか。
それでウィリプ連合国がどうしたんですか?」
武雄が続きを聞きたがる。
「ええ、奴隷の価格が上がっているそうなんです。」
外交局長が言うのだった。
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