第1706話 196日目 人事局に行ってみたら。1(確保されました。)
朝食を終えた武雄が人事局にお邪魔すると。
局長達に併設の会議室に連れ込まれる。
そして総監局長と外交局長もすぐにやってくる。
「まぁ・・・予想はしていましたけど。
私何もしていませんよ?」
武雄が局長達に言う。
「ははは、報告は上がっておりますよ?
キタミザト殿、やってくれましたな。
王城は大変でしたよ?キタミザト殿。」
総監局長が笑顔で言っている。
「どれでしょうか?」
「ほぉ、いくつか身に覚えがあると。
ゴドウィン伯爵領での件です。」
人事局長が頷く。
「私は優秀な人員を雇用したにすぎませんけどね。
ジーナの前例があるのです、異種族を雇用しても問題ないですよね。
良い人材だったので採用しただけです。
現時点で問題はないのでしょう?」
「ちゃんと条文は変えておきました!
皆が一丸で最速に動いて辻褄が合うようになっていますからね!」
人事局長が言ってくる。
「ありがとうございます。
最悪は私の子爵位の返納で済ませようと思っていましたから。
ゴドウィン伯爵に迷惑はかけられませんしね。」
「はぁ・・・今でさえこれなのにキタミザト殿が爵位の返還をしたらもっと自由にされてしまいますから返却はしなくて結構です。
今回はゴドウィン伯爵もキタミザト殿も過失はないでしょう。
それより短期間で上手くまとめたと思いますよ。
法の抜け穴を塞いだと思えば良いんですよ。
そのおかげで何も外交問題になっていないのですから私としてはご苦労様でした程度ですね。
私も子供を魔王国に送り返すのは反対ですからね。
これに異を唱えるなら、そうですね・・・ご自身でウィリプ連合国に行かれて同じ境遇の子供達を救い出し、魔王国にお送りするくらいの実績を出せば良いだけです。」
外交局長が「キタミザト殿とやりあっても無駄」と呆れながら言う。
「「むぅ、そこに異議はありませんよ。」」
総監局長と人事局長が不貞腐れる。
「それで?
子供達をそのまま魔王国に帰せという訳ではないんですね?」
武雄が外交局長に聞く。
「はい、王城ではゴドウィン伯爵とキタミザト殿の対応に異議を唱える気はありません。
この2人だって自分達では出来ない事をされて羨ましがっているだけですし。」
「違いますよ!
今回の件でうちの部下がどれだけ動いたか!」
「キタミザト殿はすぐに対応しないといけない案件を持ち込むのが多すぎなんですよ!
もっと文官を労わってください!」
「・・・まぁ・・・善処します。」
武雄が不承不承で頷く。
「「善処ではなく実行でお願いします!」」
総監局長と人事局長が部下達の言葉を代弁する。
「それでゴドウィン伯爵家とエルヴィス伯爵家の双方から子供達の就業報告書が毎週来るのですが、6名とも頑張って仕事をしているのはわかります。」
外交局長が2人を無視して言うのを聞きながら武雄は「あ~そんなこと言ってましたね」と思う。
「そこで相談なのですが、この子達を王立学院に入れられますか?」
「本人達が希望するなら可能ですが無理です。」
武雄が即答する。
「可能だが無理とは?」
総監局長が聞いてくる。
「教育を始めたばかりというのもありますが、根本としてキタミザト家の予算に空きがありません。
今の段階ですら私の所長の給与をキタミザト家の予算に入れて皆の給与を賄っているので・・・とても王立学院に4名を入れさせる費用はありません。」
「それなら我々が」
人事局が言い始めるが。
「一貴族への過度の優遇処置は他の者へ示しがつかないでしょうからご遠慮します。
また選抜しての入学も子供達の教育上したくありません。
入れるなら4名・・・いえ、6名全員入れなければなりません。
また魔法師専門学院については獣人の子供がいるので入れさせる気はありません。
この子達に与えてあげられる待遇に差を付ける気は今の私は持ち合わせていません。」
武雄が拒否する。
「「んん~・・・」」
総監局長と人事局長が唸る。
「時に、総監局長殿と人事局長殿は魔法師専門学院と王立学院の管轄ですから入れたがるのはわかるのですが、外交局長は?」
「私ですか?
外交員というか他国を視察出来る人員が欲しいんですよ。
特に魔王国は出来ていませんし。
地域性も相まって人間種があまりいないと思われますので、目立つ人間種が行くと情報が取れないですからね。」
「いくら人間種より入りやすいと言っても子供ですからね・・・」
「ええ、なのですぐという訳でなく入れるのならうちからも同年代の子供を入れ、あわよくば友人に。
キタミザト家の子供達は王立学院卒業後はキタミザト家に仕えるにしても友人が隣国調査で来た際には休暇を取って同行してくれそうじゃないですか。」
「随分と先々の事まで考えているのですね。」
「王立学院は人脈育成にちょうど良いですしね。
他地域の同年代の者との交流は中々ないですから、有意義にしてほしいのですよ。
まぁ私の場合、キタミザト殿が何年後に入れるか聞ければ、その対象年齢辺りの子供達に目星をつけて置こうと思っているだけです。
こちらから意図して友達になれとは言いませんのでご安心を。」
「まぁ・・・そうでしょうね。
あ、そうだ。
人事局長、ちょっとお願いがあるのですが?」
「なんですか?無理難題は当分やめてくださいね。」
「私は無理も難題も言った事はありませんよ?
実は王立学院を来年卒業する者でエルヴィス家に就職希望の子がいるのですけど。
今回私が来たので面接しようと思うんです。」
「泣かさないでくださいね。」
「いや、泣かせませんし。
で、エルヴィス家のスミスが在学中なので彼も立ち会わさせようと考えまして、明後日からの課外授業が終わってから面接をしようと思うんです。」
「うん、良いんじゃないですか?
えーっと・・・確か王立学院の1年生の課外授業は14日戻りでしたよね。
次の日が休みですから・・・15日はキタミザト殿の会議開始日ですね。
初日は難しそうですね・・・17日くらいにしますか?
私に振ったという事は王立学院に正式に依頼をするのでしょう?」
人事局長が考えながら言う。
「はい、部屋も王立学院でお借りしたいです。」
「ふむ・・・まぁ地方を希望する者が最近多いですしね。
そういった面接の為に部屋を貸すのもしていますから・・・わかりました。
17日の昼過ぎに予定を組みます。
正式に決まりましたらキタミザト殿とその希望者双方に部屋と時間をお知らせしましょう。」
人事局長がメモに書きながら言ってくる。
「はい、お願いします。
エルヴィス家にくる子は初めてらしくて皆わたわたしていますよ。」
「ほぉ、エルヴィス家は王立学院の卒業生が直に就職した事ないんですか。」
外交局長が不思議そうに聞いてくる。
「最前線ですし、特に給金が・・・ですからね。」
「「あぁぁ・・・・」」
総監局長と人事局長が「そっかぁ」と難しい顔をさせるのだった。
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