第1703話 王城に帰還。(レシピの話はこっちでもしておこう。)
武雄は寄宿舎でジーナ達と歓談した後、王城への帰宅の途についたのだが。
とある路地でピタリと止まる。
「・・・」
「タケオ?不審者はいないようですが?」
チビパナが武雄の肩に乗って言ってくる。
「あ~?」
「主、大丈夫そうですよ?」
ビエラとミアも言ってくる。
「もうすぐ王城ですね。」
「「「はい。」」」
「なんとなくですが玄関から行くと寝るのが遅くなる気がします。
なので・・・知り合いの居る部屋から帰りましょう。」
「「「ん~?」」」
武雄達が再び王城を目指すのだった。
・・
・
王城の厨房。
「お邪魔します。」
武雄の一言に皆が一斉に向く
「・・・キタミザト殿・・・また勝手口から入って・・・前に宰相に苦言を言われていませんでしたか?」
料理長がため息を付きながら言ってくる。
「夜になっての帰還なのでお邪魔にならないようにと思ってね。
あ、皆さん、またお世話になります、キタミザトです。
部下共々、よろしくお願いします。」
武雄が頭を下げる。
「「「はい。」」」
料理人達は「まぁキタミザト殿ならしょうがないか」と苦笑しながら呆れている。
「こっちは朝食の準備中なんですが、何か要望はありますか?」
「私はありませんが・・・ビエラ、ミア、何かありますか?」
「私は果物が少し欲しいです!」
「あ~。」
ミアが要望を出し、ビエラが首を振っている。
「なら果物を多めに頂けますか?」
「はい、わかりました。
あ~・・・それと今日はジーナ殿達との会食だったそうですね。
・・・新作ですか?」
「ええ、少しですけどね。
今現在エルヴィス家でも振舞われている料理を数個程。
スミス坊ちゃんもジーナもエイミー殿下も美味しいと言ってくれました。」
「ほぉ・・・気にはなりますね。」
料理長が腕を組んで考える。
「まぁ教えられる時期が来たらですね。
それと第3皇子一家のエリカさんから何か言われていませんか?」
「いえ、これと言って・・・」
「失礼します。
料理長は・・・あ、タケオさん。
ちょうど良かったです。」
ちょうどエリカとペイトーが厨房に入ってくる。
「噂をすれば。」
武雄が呟く。
「ん?何ですか?」
「いえいえ、どうしたんですか?」
「前にエルヴィス伯爵から頂いた例の料理レシピの発表日程をお知らせしようと。」
「ええ!?
エリカ殿!それは本当ですか?」
「はい、発表日程になります。
私は一応、王都と王家からの発表はエルヴィス家での発表の1週間後以降と口頭では言ってきました。
それとエルヴィス家、キタミザト家からご教授頂いたとの文言を入れるとも約束しました。」
「それはそうでしょう。
キタミザト殿とエルヴィス殿は発案だけでなく領民に知らしめる政策を取られたんですから画期的です。
私達はその一端を貰ったのみですからね、功績に対する文言の併記は当然でしょう。
それにしてもエリカ殿、発表日程を聞き出したのは大きいですよ。」
料理長が興奮しながら言う。
「ありがとうございます。
で、王都での発表のやりくりはどうしますか?」
エリカが料理長に聞く。
「あ、それなんですけどね。
エイミー殿下にもその旨は伝えてあります。
それとエリカさん、一般家庭向けのレシピ本の話をエルヴィス伯爵としたのを覚えていますか?」
「確か・・・試験小隊のご家族との歓談の際でしたか。
していますね。」
「・・・本ですか・・・」
エリカは思い出しながら料理長は難しい顔をさせながら呟く。
「エイミー殿下としては明日の朝エリカさんを訪問してその辺の打ち合わせをする意気込みでしたよ。
下手に公表したりすると混乱を招くだろうと言っていましたね。
本も何かしら策を持って打ち合わせに臨む可能性があります。」
「となると事は王家全部と王城を巻き込みますね。
レシピ本はエルヴィス家とも歩調を合わせる可能性もありますね。」
「なら、料理人としては個々の発表をする事は良いと考えますが、レシピ本という一括で世に出る事は危険だと思います。」
「ん~・・・一度エイミー殿下と第3皇子一家で話し合ってから王城内で議論した方が良さそうですね。
料理長の意見も加味したいので明日の朝までに本を出す際のメリットとデメリットを箇条書きで良いので用意出来ますか?」
「朝食までに用意します。」
エリカと料理長が話をしている。
「お願いします。
タケオさんは出席しますか?」
「レシピ本はエルヴィス家の管轄なので私が出るのも・・・結果だけ教えてくれれば問題ないです。」
「わかりました。
それでは明日からこの件は王家で話し合うとします。
一応、こちらがエルヴィス家の発表日程になりますので、ご確認をお願いします。」
エリカが料理長に紙を渡す。
「・・・はい、料理人達と確認します。」
料理長が軽く中を見ながら答える。
「では、私はこれで。
タケオさんはどうしますか?」
「あ~・・・私はもう少しここに居ます。
エリカさん、おやすみなさい。」
「はい、おやすみなさい。
あ、それと玄関はなぜか王都守備隊員が数名居ますから避けた方が良いと思います。
では、失礼しました。」
エリカが厨房を去っていく。
「料理長、王都の人口規模で一商品が集中的に買われるってありますかね?」
「キタミザト殿、それは・・・少々の大混乱を招きますね。
一気になくなるのが一つの商品のみであれば問題はないでしょう。
ですが、民衆とは私も含めて不安を呼び起こす物です。
次は何が品薄になるのか、それはいつなのか、どのくらいなくなるのか。
憶測が憶測を呼び、誰かが言った不用意な言葉が次の品薄商品を生みかねません。
それは王政に対する不信に繋がりかねないでしょう。
秩序ある一時的な品薄が理想という訳です。」
「ま、そうでしょうね。」
「それで今晩は何をご所望ですか?」
「リンゴとオレンジを数個と、あと残飯1樽ください。」
武雄が要望を伝えるのだった。
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