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第1691話 現状の確認。(エルヴィス家とヴィクターの組み合わせで名推理出来るのか?)

「そもそもの話なのですが、慣例の戦争において兵糧は各方面貴族が手配します。

 アズパール王国方面での慣例の戦争であればファロン子爵領とパーニ伯爵領から持ち寄ります。

 これは伯爵様に聞いた所、アズパール王国も同様との事です。」

「うむ、わしらは3領地からじゃの。」

ヴィクターの言葉にエルヴィス爺さんが頷く。

「今回の輸出依頼においては、現状で両領地での不作は伝わっておりませんので、両領地に分配されるものではないと推測が出来ます。

 また、仮に両領地で不作なのであっても一応敵国であるアズパール王国に現状で兵糧不足を伝える意味がありません。

 まぁ本当に兵糧が必要な場合、王都ではなく貴族領の誰かしら・・・商店の名で依頼してくるとは思いますが。」

「まぁ・・・そうでしょうね。

 万が一、情報を信じて陛下がやる気になってしまった場合は侵攻作戦に変更になり得る可能性がありますか。

 ですが、元々の兵力で劣るアズパール王国(私達)が相手の兵糧が不足しているからといって攻め入っても勝てないでしょうけど。」

アリスが頷く。

「はい、正しい認識です。

 魔王国領土は広大である為、本来なら1方面もしくは王都で足らなかった場合や必要になった場合は他の領主より融通がされます。」

「国とはそう物じゃからの。

 わしらだって足らなかったら他領から買い集めるし、王都で少ないと依頼がされれば販売するからの。」

「はい、なので今回の輸出について慣例の戦争とは関係なく依頼がされた公算が高いと思われます。

 いや、むしろアズパール方面の慣例の戦争があるので、王都で集める兵糧が予定よりも少なくなっていると考えるのが妥当と思われます。」

ヴィクターが言う。

「なるほど・・・うん、ヴィクターの考えは当然の帰結ね。

 そしてアズパール王国(私達)に輸出を依頼するという事は魔王国の王軍は今は私達を敵と見ていない(・・・・・・・・・・)という事ですね。」

アリスが頷く。

「はい、私はそう思います。

 次に目的の所なのですが、ブリアーニ王国への出兵となっていますが、些か不自然です。

 確かにこの地はテンプル伯爵との間にある森に隣接しています。

 蟲の脅威に晒されているのでしょうが、王軍全軍の出撃が必要とは思えません。

 多くても1個軍で対処出来るでしょう。」

ヴィクターが説明を続ける。

「じゃが、全軍という話なのじゃな?」

「はい、全軍出撃となると・・・このブリアーニ王国への出兵は本来の作戦を隠蔽する・・・

 面倒ですね、言葉は過激ではありますが、全軍による侵攻作戦がある可能性があります。

 ですが、ここで不可解な事があります。

 フレデリック様。」

「はい、ヴィクターの懸念事項は輸出量にあります。

 アリス様も先ほど引っかかっておいででしたが、些か軍を動かすには少ないのです。

 また何かのイベント事があるにしては多いのです。」

フレデリックも説明に加わる。

「私はそこまで思わなかったけど、量が中途半端な気がしたのよ。

 ・・・見積もりの提出先が第1軍と言っていましたよね。

 ヴィクター、おおよそで良いのですけど、第1軍の兵数は?」

アリスが考えながら言う。

「3500から4000かと。」

「それであの量・・・うん・・・少なく見積もってもエルヴィス家の兵士の数倍、数日で消費してしまいそうね。

 正確には私ではわからないし大まかではあるけど・・・フレデリックの事だから試算はしましたか?」

「はい、私の方でも兵士数3500名の出陣とした場合の食糧の簡易計算をしましたが、私達人間種と同等の消費量と考えれば、節約して2週間、通常なら10日で消費出来るかと。」

「他にも入手先があるのだろうけど・・・それと合わせても多分相当短期間と思われるという事になりますね。」

フレデリックとアリスが話し合っている。

「となると、魔王国王軍はわしらに意識は向いておらず、ブリアーニ王国に向かっての出撃・・・

 短期間となると寄り道はせんじゃろう。

 ヴィクター、その先にはなにがあるのじゃ?」

「数個の国家がありますが・・・

 ヴァレーリ陛下のご気性や魔王国の現状での大まかな関係を考えると・・・

 デムーロ国が有力かと思われます。

 この国はあまり国土的には大きくない国家になりますが・・・魔王国方面側からの奴隷船の発着地点です。

 私やジーナ、話ではベルテ一家が積まれた所と推測される地です。」

ヴィクターが無表情で言う。

「・・・確かタケオは魔王国のヴァレーリ陛下に子供達の状況を説明する報告書を提出しておったの。」

「それとベルテ一家と私の情報も米の受け取りの際にお渡ししております。」

エルヴィス爺さんの考えにヴィクターが言う。

「それで時期をあまり置かずに全軍出撃とな。

 そしてタケオの情報を元にしているから今回の輸出にも協力して貰おうと考えたのかもしれぬの。」

「ですが・・・普通に考えて奴隷商の摘発をするのが先なのではないのですか?

 いくら奴隷船発着地点というだけでいきなり戦争に発展するのでしょうか?」

アリスが考えながら言う。

「なんとも言えぬが・・・末端を潰しても根本的な解決にはならぬと見ておるのかもしれないの。

 それにこの手の事は潰しても後を絶たないだろうからの。

 同じ業種への見せしめの意味もあるとは思うが、盛大な見せしめを行うという事になるかの。」

「ん~・・・見せしめ。

 ヴィクター、そのデムーロ国へ魔王国の王軍全軍が突入したらどのくらい戦争をすると思いますか?」

「ヴァレーリ陛下が出てと考えるなら・・・デムーロ国の国王を落とすという事だけを考えるなら1週間もあれば出来るかと思います。

 その後の統治をどうするかはわかりかねます。」

「小さいとはいえ、国家を1週間・・・早いですね。」

ヴァレーリ陛下(あの方)は規格外ですから。」

ヴィクターが苦笑するのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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