第1688話 訓練参加。(あの3人は元気にしているのだろうか。)
午後の王都守備隊の訓練場。
「せやっ!」
「くっ!・・・せいっ!」
皆が模擬戦をして汗をながしている。
「ほれっ頑張れー。」
武雄が別班でやっている者に声をかける。
「わかってますよ!」
「頑張っていますから!ちらちらと監視しないでください!」
オールストンとブレアが言う。
2人は午後は王都守備隊の訓練で矯正・・・強制参加させられている。
「それよりもなんでマイヤー殿は参加しないのですか!?」
ブレアが若干キレながら聞いてくる。
「ははは、私は所長のお付きみたいなものでね。
補佐をしなくてはいけないし、それに総監という役職ですからね。
もう研究所を管理する側なんで運動はそこまでする必要はないんですよ。
力仕事は後任に任せないとね。」
マイヤーが涼しい顔をさせながら言う。
「私らも良い年なんですけど!」
「何言ってんですか!?私と6つぐらいしか変わらないでしょう!?」
2人が文句を言ってくる。
「ははは、6つでも5つでも後輩は後輩。
ほれ若輩者と戦って来い。」
「若手を煽らないで頂きたい!」
「若者との体力差が如実に凄いんですよ!」
「わかってる、わかってる。
頑張れよ。
ほら、相手が来たぞ。」
マイヤーが優しく言う。
「ご指導お願いします!」
「あ・・・あれ?お前は第二近衛だったんじゃ・・・」
オールストンが対戦相手を見て怯む。
「4月に異動になりました。
オールストン殿!お願いします!」
「なんで相手が元部下なのぉ??
くそぉ!」
オールストンが嘆きながら模擬戦を始める。
「ははは、元気ですねぇ。
で、テーアさん、準備出来ましたか?」
武雄が目の前の対戦相手に声をかける。
「うぅ・・・部隊に慣れてきたと思っていたのに・・・
剣技の訓練なのに極上の相手が来ちゃったよ・・・」
テーアが半泣きしている。
それもそのはず、テーアの後ろには一緒に入隊したエットレとファビオが座っているのだが、服に血を付け、そして服が裂けた状態で落ち込んでいるからなのだが。
「平気ですよ。
さっきの2人を見ているでしょう?
ちゃんとすぐに回復させますから。
ね、パナ?」
「はい、すぐに!」
パナが頷く。
ちなみに武雄との対戦は真剣で行っていた。
そして2人がいつぞやの対戦の時のように一刀両断されて・・・本当に斬られて恐怖を植え付け直されていた。
「さっきラック隊長に聞いたら最近、訓練に刺激がないような事を言っていたらしいという情報が入りましたからね。
人間種を舐めてるならと対戦相手を買ってるんです。
まったく・・・貴女達は・・・」
「言ってません!言ってませんよ!
人間種を舐めてもいませんし!皆さん良い方なんです!
種族を気にせず助けて頂いてますし!ご飯も美味しいんです!」
「ふーん・・・まぁ、良いです。
ラック隊長から請け負ったのは完膚なきまで貴女達を痛めつけるですからね。
ほらあと2回ほど貴女達と打ち合わないといけないんです。
さっさと構えて。」
「はぃ・・・キタミザト様・・・
はぁ・・・ふぅ・・・行きます!」
テーアが深呼吸して武雄に斬りかかるのだった。
・・
・
模擬戦後。
「「「・・・」」」
テーア、エットレ、ファビオが目が死んだ魚のようになって落ち込んでいる。
「・・・キタミザト殿、ご苦労様です。」
ラックがそう言いながら椅子に座っている武雄にお茶を出す。
「ありがとうございます。
久々に戦闘しましたね。
体もちゃんと動いて何よりです。」
「えーっと・・・久々?」
ラックが「この前したでしょう?」という顔をさせる。
「戦いという点では数日ぶりですかね。
まぁあれは討伐で今回は1対1の模擬戦ですからね。
心持が違いますよ。」
「まぁ・・・言っている事はわかるのですけど・・・キタミザト殿、貴族ですよね?」
「らしいですよ。」
ラックの質問に武雄が平然と答える。
「・・・ま、良いです。
それでどうでしたか?」
「3人共落ち込んでいますね。」
武雄がテーア達を見て言う。
「こちらの要望通りで何よりです。
3回するとは思いませんでしたけどね。
それで買った時と違いはありましたか?」
「ん~・・・ん~・・・マイヤーさん、どう思いましたか?」
武雄がマイヤーに助力を求める。
「そうですね・・・
ファビオ殿の大振りがなくなった感じですね。
エットレ殿は振るタイミングに策を巡らせようとしていましたし、テーア殿は踏み込みが良くなっていますかね。
総じて振り抜く速さが増したように感じました。」
マイヤーが先程の武雄との模擬戦を思い出しながら言う。
「です。」
武雄がラックに向かって言う。
「対戦したキタミザト殿の本心は?」
「確かに3人共動きが前よりも速くなった感じはしましたけど・・・いつも通りにいなして斬り込めましたからあまり気にはしませんでした。」
武雄が「ん~」と悩みながら言ってくる。
「はぁ・・・元々十分に打ち合えたんですけど、自ら研鑽を積んでもっと速く振れるように努力していたんですよ。
その努力は凄かったんですけどね・・・まだまだキタミザト殿に及びませんか。」
ラックが呆れたように言う。
「私の唯一の攻撃方法を破られると私が困るんですけど・・・」
武雄が苦笑する。
「それはそうでしょうけど・・・ん~・・・他に何を教えようかと。」
「あ~・・・これ私も対策考えておこうかなぁ?」
ラックと武雄が考える。
「いや、そもそも所長のように完全に待たれる戦い方は兵士としては稀ですし、今のやり方で問題ないんじゃないですか?
あの速さなら相当な者でないと対応出来ないと思いますし。」
マイヤーが言う。
「まぁあの3人だと上位者でないと相手出来ないんだが・・・
それは今後考えていきます。
で、キタミザト殿、何人かとしますか?」
「いえ、あの3人が心配だっただけですから、他の王都守備隊員に手を出す事はしませんよ。
あ、そうだ明日、ラックさんのお店に私達飲みに行きますからね。」
「・・・じゃあ、貸し切りにしときます。」
「え・・・そんなにお金ないですけど・・・」
「キタミザト殿が来るんですからそのぐらいしますよ。
気兼ねなく明日来てください。」
「はい、ありがとうございます。」
武雄が頷くのだった。
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