第1683話 夕食後。2(アズパール王に挨拶を。)
アズパール王の執務室。
「はぁ・・・タケオ、最近仕事が増えているんだ。
我も年かな・・・あまり長続きせんのだ。」
「その言い方ですと問題がある感じではないですね。
まぁ・・・領内異動ですからね。
致し方ないでしょう。」
「そうなんだがなぁ・・・
ふむ・・・この甚平は良さそうだな。
上着の袖が少し大きいが・・・ま、大して面倒ではないか。」
アズパール王は武雄から甚平を受け取るとすぐに着替えて武雄とお茶をしている。
「まだ肌寒いのではないですか?」
武雄はそうは言いながら魔法で室内の温度を少し上げていた。
「タケオが調節してくれているみたいだからな。
タケオが去ったらいつもの寝間着に着替えよう。」
「お気づきでしたか。」
「当たり前だろう?
それと・・・すまんな。
今後の分は注文する事にしよう。」
「はい、うちの協力業者も楽しみに待っております。
それと・・・魔王国のヴァレーリ陛下に会いました。」
「そうか。
どうだった?」
「アリスの数倍は力がある女傑だと思います。
ビエラと殴り合いをしていましたよ。
半分以上は遊びでしょうけども。」
「はは・・・流石に魔王国を率いる者だな。
魔王国の本格的な侵攻はあると思うか?」
「ヴァレーリ陛下を見て話をした感じでは私個人としてはないと思いますが、国を治める者は時には私情を挟まず国益を優先する物です。
侵攻作戦はないと言いきれる情報は現在の所ありません。
商売先からの伝いで慣例の戦争とは匂わされていますが、それすら情報戦に使われている恐れがある為、確実ではありません。
結局は相対してみないとわからないという感じになります。」
「そうか。
だが、今後の事もあると魔王国とは現状維持でお願いしたい物だな。
あっても慣例の戦争のみでな。」
「魔王国にはウスターソースとウォルトウィスキーを少量ではありますが、卸す事で隣接地を商売先として見て貰えるように努力する方向で動いています。
あとは向こうの要求にそれなりに応えて行けば良いかと思います。」
「うむ、そうだな。
その辺の情報収集はタケオとエルヴィス伯爵で打ち合わせしながら進めると良いだろう。
進展があれば我と外交局に言えば修正しておこう。」
「はい、ありがとうございます。」
武雄が頷く。
「それとゴドウィン伯爵から連絡が来ていたな。
また随分と面倒に巻き込まれたものだ。
子供とはな。」
「ええ・・・流石に首輪の付いた子供を魔王国に送り返すのは忍びないですからね。
こちらでさっさと対処しておきました。
こういったのは時間を置いても悪化させるだけですしね。」
「うん・・・まぁタケオだからな。
今回の件はゴドウィン伯爵からの上申を元に奴隷契約条項の改正を実施する。
内容的にも上申の通り『奴隷商が人間換算で未成年の奴隷を連れていた場合、交渉し一時的に保護もしくは雇用をする事を認める。
保護もしくは雇用をするのは特定の者(王族もしくは陛下に認められし貴族)のみとし、保護をする場合は、特定の者が指定した職員が居る住居もしくは施設とする事。
雇用する場合は雇用契約を結び、期間は奴隷契約条項の上記に定めた範囲内で行う事とする』とした。
まぁ・・・ちょっと強引だがな。
各局と貴族会議も了承してくれている。」
「すみません、面倒をおかけします。」
「いや・・・良いんだ。
この条項の追記だけで6名の子供が助かったのだ。
十分な成果だろう。
本来、法は国民を守る為にある。
その為には納税等の義務も課せられるのだが、それは守る為だ。
今後も同様な事は起こるだろう、出来るだけ救わなくてはな。」
「はい、ありがとうございます。」
「で?子供達はどうなんだ?」
「エルフや獣人、魔人の子達です。
キタミザト家で雇用した子達は今はエルヴィス家でメイドと執事の研修中です。
ちょっと元気が有り余っているようで、壺を何個か壊してしまいましたが。
至って元気に仕事をしてくれています。」
「ははは、このような境遇だ。
部屋に籠っても致し方ないのに部屋から出て仕事をするとはしっかりしているな。
それに積極的に動くからこそ壺を壊してしまうのだろう。
元気があって良い事だな。」
アズパール王が笑いながら言う。
「エルヴィス伯爵達は慣れているようで子供達が到着したらすぐに割られても良い物に置き換えていました。」
「それはそうだろう。
王城でも新人が受け持つ区画は壊れても良い物ばかりだぞ。」
「そうなのですか?」
「タケオ、どこも一緒だよ。
種族とか性別に関係なく、新人は失敗するものだ。
それを怒るのが上司の役目、諭すのが先輩の役目という訳だ。
ちなみにタケオはどうしているんだ?」
「私は子供達の前で費用請求を受けて悲しむ役ですね。」
「あ~・・・それは子供達から見たらショックだろう。
あまりイジメてやるなよ?」
「そんな事しませんよ。
基本、褒める事を重視した教育をしようとしていますしね。」
「うん、そうだな。
あ、そうだ。
タケオ、各局に挨拶行ったか?」
「いえ、とりあえず今日はウィリアムさんとアランさんだけですが。
各局は明後日ぐらいに行こうかと思っています。
明日は研究所の人員募集の話を王都守備隊と第1騎士団にしに行きます。
ま、マイヤーさんが主に話をする手はずになっています。」
「確かタケオは来年は10名だったか。
魔法師専門学院からは取らないのか?」
「今年が異例でたまたまですからね。
まぁ良い人材が居れば声はかけるかもしれません。」
「そうか、そっちの方もタケオ絡みで募集基準が変わったようだからな。
一度、確認した方が良いかもしれないな。」
「わかりました。
王立学院も含めて一度、確認しに行ってみます。」
「うん、そうだな。
で、タケオ、ウォルトウィスキーの土産はないのか?」
「あるにはあるのですけど、ここに向かう際に執事の方に『陛下にお酒はダメ』と言われたので渡しませんよ。」
「え?・・・そうかぁ・・・
2、3本くれないか?」
「・・・発覚したら私が執事さんに怒られますからね~・・・」
「タケオ、1本で良いから。」
武雄とアズパール王の歓談は続くのだった。
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