第1675話 武雄移動中。(ジーナ株は高値。)
ジーナは屋根伝いに城門を目指して走っていた。
「・・・パラス、ご主人様は?」
ジーナは肩に乗るチビパラスに声をかける。
「ミアもパナからもまだ到着の一報は来ていないよ。」
「よし!間に合いそうですね!」
ジーナは走る速度を落とさずに走っていく。
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王立学院内の廊下。
「ルーク、どうする?」
「ジーナ殿はもうお出迎えに向かったんだろう?
俺らじゃ追いつけはしないって。
皆もそう思って動かないんだろう?」
「まぁそうだけど、宿舎に帰るの?」
「・・・うん、金を稼いでこようかな。」
ルークが少し考えてコートニーに返事をする。
「・・・いくら何でも今日は宿舎にキタミザト様、来ないんじゃない?」
コートニーが呆れる。
「金欠なの、金欠。
少しでも賄わないと。」
「はーい、頑張ってね。
私は父さんに会ってくるわ。
今日は王立学院の課外授業の下見から帰ってくるからね。
キタミザト様が来るなら何かしら話がありそうだしね。」
「あぁ、気を付けてな。
まぁ途中までは一緒だから向かうか。」
「うん、お願い。」
ルークとコートニーが歩いていくのだった。
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王都の城門にもうすぐの所。
「それにしても・・・王都守備隊が山狩りですか。」
「はい、今年は王家もいますから私達王都守備隊に回ってきました。
ちなみに去年は第1騎士団です。
なんだかんだとうちか第1騎士団でやっています。」
武雄と並走している王都守備隊のラックが話をしている。
「ミア達が戦闘していると言っていたので割り込んでしまいました。
ラックさんに訳も聞いたのでオーク集めを手伝いましたが、よくよく考えてみると私達が参加しない方が良かったのでしょうか。」
武雄が言ってくる。
「いえいえ、あれほどの成果はあまりないので助かりました。
ですが・・・まさか本当にオークが集まって来るとは・・・驚きました。
ウィリプ連合国では危険極まりないネックレスが流通しているんですね。」
ラックが呆れながら言う。
「・・・あげませんよ?」
「いりませんよ。」
ラックが即答する。
「あ、そういえばジーナから報告ありましたが、あのお店見つかってしまったんですってね。」
武雄が楽しそうにラックに言う。
「はぁ・・・まさか娘が尾行されるとは思いも寄りませんでしたよ。
キタミザト殿、ジーナ殿にどんな教育しているんですか?
十分、第二情報分隊でやっていける・・・いや、私の後を継げますよ?」
ラックが呆れたように言う。
「別になにも・・・大樹の苗木を植えたら勝手に育つものでしょう?
それにあの子は育つ努力も欠かさないので、予定よりもすくすく育っていますよ。
私は真っ直ぐ育つように添え木を用意しているだけです。
今の所、添え木は必要ないようですけど。」
「優秀な人材がお手元にあるのは羨ましい限りです。」
「まぁ偶然ですけどね。
あ、それと苗木はまだまだありますからね。
いつか大樹の森が出来ますかね。」
「はぁ・・・その苗木達はキタミザト殿が動いた結果でしょう。
私は与えられた苗木を大樹になるように育てますかね。」
「優秀なんでしょう?」
「ええ、優秀です。
我々は選抜されて招集された最精鋭部隊です。
規律、武力、知識、忍耐・・・どれもが一級品です。
ですが、キタミザト様のお手元には敵いません。」
「そう言われても・・・突出する者が居た場合、部隊としての戦力は低下する物と相場は決まっていますが。」
「はい、その通りです。
個々の能力としてはキタミザト殿方に適いませんが、部隊としてはまだまだ王都守備隊が優位でしょう。
個人的には一研の方が見劣りしているのが気になりますね。」
「ふむ・・・陛下直属の4機関。
王都守備隊、王家専属魔法師部隊、王立研究所の一研と二研・・・
武力の最高峰、魔法師部隊の最高峰、以下雑魚。」
「いやいやいや、さっきも言いました二研はちょっとおかしいですからね。」
「ですが、結果がないので今の所、一研も二研も小所帯でお荷物部署でしかありませんよ。」
「成果は出そうですか?」
「それを話すのが今回の会議なんですけどね・・・まぁ一研の方が先に成果を出すんじゃないですかね?」
「キタミザト殿にしては弱気ですね。」
「私の方の研究は地味で実入りが少ないんでね。
それに一研の研究内容の方が皆に与える印象は強いでしょうしね。」
「そうなのですか?」
「ええ、ま、内容は会議後に知らされるでしょうけど。
それまで待っていてください。
私達、二研はまぁ・・・のんびりやりますよ。」
「ふーん、そうなんですか。」
ラックが考えながら頷くのだった。
「あ、そうだ。
娘さん、マイヤーさんの息子さんと仲が良いと報告がありましたよ。」
「え・・・そんな報告まで受け取っているんですか?」
「マイヤーさーん。」
武雄が後ろに声をかけるとマイヤーがラックの横に馬を付けてくる。
「所長、何でしょう。」
「ラックさんの娘さんとマイヤーさんの息子さんの話です。」
「ラック、息子が娘さんに手を出していたらぶん殴るからまずは待ってろ。
反省させるから。」
マイヤーが言う。
「あ~・・・その辺は関与しないですよ?
娘の好きにさせているので。」
「放任というか、娘さんを信じているんですね~。」
武雄がラックの言葉に頷く。
「・・・所長、ジーナ殿が男を連れてきたらどうするんですか?」
マイヤーが武雄に聞いてくる。
「え?ジーナに?
・・・・私とアリスとヴィクターとで面談でしょうか。
あ、ヴィクターから預かっているんだから変な所に嫁入りさせられませんし、各所にお願いして家族構成とか交友関係とか調べないといけないですかね。
ジーナに万が一があってはいけませんし。」
武雄が考え始める。
「あ~・・・過保護だ。」
ラックが呆れるのだった。
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