第1670話 190日目 帰城。(魔王国も順調に準備中。)
魔王国 王城 第1軍指揮官執務室。
扉がノックされフレッディが許可をするとヴァレーリを呼びに行った女性とヴァレーリ達が入ってくる。
「失礼します、陛下のお戻りです。」
「陛下、戻りましたか。」
フレッディが席を立ち出迎える。
「呼んだのはお前だろう?
わざわざ指揮官補佐を使うな。
このぐらいならもっと下の者でも良いだろうに。」
ヴァレーリがソファに座り、一緒に入って来た女性に目線を送る。
「下の者では陛下をお連れする事は出来ません。
言い含められますからね。」
「・・・。
あぁ、それと土産だ。」
ヴァレーリがソファの前にある机の上に小樽を置く。
「この樽は?」
「ウスターソースだ。
シモーナさんが丁度来てな。
主要メンバー分が同送されたようだ。
カストとカールラの分もあったぞ。」
「ふむ・・・無料で・・・ではないですね?
あの方はそういった変なご機嫌取りをするような方ではないでしょう。」
「あぁ、ブリアーニ王国とブリーニ伯爵領にある米の最大輸出量の調査と見積もり依頼だ。
まぁあの米の美味しさからこうなるのは何となくわかっていた感じは我もフレッディもあっただろうがな。
今回は皆に動いて欲しいんだろうな。
伝手がないのだからありそうな所に動いて貰うというのはわからなくはないし、これのお陰で機嫌が良いからなウスターソース分は動こうと思う。」
「そうですね。
・・・わかりました、私もウスターソース分は動きましょう。
私の方からブリーニ伯爵には手紙を出しておきます。
ちなみに米の料理については教えますか?」
「さてな・・・こちらから懇切丁寧に教えてやる物でもない。
その点、カールラは自ら確認に行ったからこそ、あの米の潜在的な価値がわかったのだからな。
奴も気になるなら自ら調べれば良いだろう。」
「畏まりました。
では、そのように。
陛下も一筆書かれますか?」
「我はおば様に渡す事としている。
フレッディとは別口だな。
第1軍内でも向こうの出身者が居たはずだ、向こうの商店の名前がわかれば教えてくれ、そこに出そう。」
「それは確認し後ほどご連絡いたします。」
「あぁ頼む。
それで戻ってくる際に指揮官補佐に聞いたが、国外から食料を集めるのか?」
「ええ、5軍全部ですからね。
国内にも声をかけますが、アズパール王国側はあまり無理は言えませんし、想定では少し足らないので・・・ならキタミザト子爵を頼ろうかと。」
「向こうも慣例の戦争に向けて買い付けに動くはずなんだがな。
まぁキタミザト子爵は貴族だ。
それなりに人脈もあるだろうから集めてくれると信じておくか。
小麦は40000kg、干物は20000kgと言っても全軍では数日で消費してしまうんだがな。」
「本音を言えば双方50000kgは輸入したいですね。」
「予算は?」
「抜かりなく。
王都や国内で集めた食材は第1軍以外の4軍に割り振ります。
この輸入物資は第1軍の食糧となると考えています。」
「結構重要だな。
おば様とシモーナさんなら半数は最低でも輸入してくれるだろう。
あとはキタミザト殿がどこまで見通してくれるのか。」
「ファロン殿も居ますし。」
「まぁ・・・慣例の戦争には多すぎると読んでくれるのであれば良いが。
情報が少なすぎる感はあるな。」
「他国がどういう情報網があるかわかりませんので。」
「まぁ致し方ないか。
・・・指揮官補佐が説明した内容だと我々がブリアーニ王国に演習に行くという名目になっているな。」
「はい、国内の業者からも同様の名目で買い付けさせるつもりです。
実際に5軍が集結しますからね。」
「ふむ・・・今更ながらに思うと、ブリアーニ王国に集結するのはやや不自然か?」
「2方もしくは3方に分散してデムーロ国を囲む方こそ不自然でしょう。
意図がわかってしまいます。」
「う~ん・・・まぁ最終的な侵攻経路はお前達に任せるが・・・
相手に気取らせない方法というのはない物かな・・・」
「それは全軍の指揮官や指揮官補佐達が考えています。
あと2週間もすれば何かしら出て来るのではないでしょうか?」
「出てくれば良いんだがな。
ギリギリまで検討を続けるしかないか。」
「そうですね。
と、お呼びした用件ですが、例の誘拐組織ですが、その進捗が出てきました。」
「・・・何個潰した?」
「2つです。
この間の輸送業達の方は1つ。
規模の確認を行い低い所から潰しています。」
「・・・泳がせているというのはわかるが、気分が良い物ではないな。
被害はどこまで出ている?」
「今の所・・・子供達は平気です。
その為に低い所を潰しているのです。」
「そうか・・・子供が一番簡単だから・・・という上申に基づいてなんだが。
だからと言って規模が大きい所がしないという訳でもないだろう?」
「それはその通りです。
ですが、子供に被害は出させていません。」
「そうか・・・潜入の方は?」
「何とか2組7名程。」
「それだけと言えば良いのか、良く入ったと言えば良いのか。
・・・後続も入れるようにな。
手当は弾んでやれ。
特に特殊任務の方はな。」
「はい、3名は一般の奴隷としての潜入ですからね。
第4軍で向こうに赴任する方とは別の窓口ですので、慎重に動いていると思います。」
「そうか・・・第4軍の窓口の方は?」
「あそこはウィリプ連合国への潜入とわかっている組織ですからね。
奴隷組織の事は聞かない事が条件で請け負ってくれていますし。」
「まぁ・・・しょうがないか。
のちのち精査は必要かもしれないな。」
「ええ。」
ヴァレーリの言葉を聞き、フレッディは頷くのだった。
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