第1669話 ヴァレーリご満悦。(贈り物は必須です。)
「あ~♪ウスターソース~♪」
ウスターソースが入った小樽を両手で持ち上げてヴァレーリが喜んでいる。
「あ~・・・ダニエラさん、それキタミザト様からグラートさんへの送付物なんですけど。」
シモーナが呆れている。
「はははは!私が送っておきます・・・違う物をね!」
ヴァレーリが悪い顔をシモーナに向ける。
「ダメですって。
私は輸入業をしているんですよ?
信用第一、頼まれた物は頼まれた所に届けないといけません。
さ、返してください。」
シモーナがヴァレーリから小樽を取り上げる。
「あ・・・なんで私にはないんだ。
カス・・グラートもあってカールラにもあって・・・私に無いなんて・・・
なんだよ、なんだよ、私頑張ったじゃん。」
ヴァレーリがいじける。
「いや、ありますよ。
えーっと・・・あ、これです。」
シモーナが言いながら木箱から小樽を取り出す。
「お!やった!
シモーナさん、大好き♪
米の調査頑張らせるから!」
「はいはい、ちゃんと渡すつもりだったのに2つ目で我慢できなくて手を出すなんて・・・
これはタローマティさんのです。」
タローマティが少し驚きながら受け取る。
「私もあるんですか?」
「はい、キタミザト様から主要な皆さん宛とリストが入っていましたよ。
おばさん、グラートさん宛のも送付お願いします。」
「うん、カスト伯爵領行きの商隊に乗せるわ。」
「はい。」
シモーナが頷く。
「それでダニエラちゃん、お城に戻らなくて良いの?
それなりに長くここにいるけど。」
レバントが首を傾げながら言う。
「あ~・・・待っている仕事なんてないですから平気です。」
「いや、山積でしょう。」
タローマティが呆れながら言う。
「あ、王城に戻られるならフレッディさんのも持って行ってくれませんか?」
「え?あれのもあるんですか?
・・・ええ、良いですよ。」
ヴァレーリが受け取るがじーっとフレッディの小樽を見ている。
「渡さないといけませんよ?」
タローマティが小声で言う。
「わかってる!
物を盗むわけないだろう!
あ、私は他人の物を横から掠り取りませんよ。」
「いや・・・さっきグラート殿のを盗もうとしましたよね?」
「・・・冗談に決まっているでしょう?
キタミザト殿は皆にくれると信じていましたし!
あの方が私の事を忘れているなんてありえませんよ。」
ヴァレーリは口調は丁寧だが、タローマティに「何言ってんの?」という顔を向ける。
「物凄く落ち込んでいたくせに。
じゃあ、ほら、フレッディ殿のやつを持ってお城に帰りますよ。」
「あぁ・・・帰らんとダメかぁ・・・」
ヴァレーリが呟く。
「そろそろ戻らないとフレッディ殿の顔がオーガみたいになりますよ?」
「ほぉ、それはそれで見ごたえがありますね!
もう少しすればドラゴンにもなれるかもしれません。」
「ほらっ!支度して!」
「はいはい。」
タローマティが催促するがヴァレーリはのろのろと動き出す。
「失礼します。
こちらにダニエラ様はいらっしゃいますでしょうか。」
店の入り口からヴァレーリとタローマティと同じ服装の女性が入って来て声をかけてくる。
「ダニエラちゃん、お迎えよ~。」
レバントがヴァレーリに声をかける。
「げっ・・・本気のが来たか・・・んんっ。
おば様、仕事に戻ります。
ブリーニ伯爵領宛の手紙は後で届けさせますからね。
それとまた何かあれば王城に持って来てください。」
「はい、わかりました。
気を付けてね。」
「ありがとうございます、では、失礼します。」
ヴァレーリがタローマティを連れて店の外に向かう。
「ダニエラ様の息抜きにお付き合いくださりありがとうございます。」
ヴァレーリを探しに来た女性がヴァレーリ達が外に出た事を確認してレバントに声をかける。
「いえいえ、こちらこそご贔屓頂きありがとうございます。」
「それでなのですが、数か月後になりますが、王軍全軍がブリアーニ王国に演習に向かいます。
よって干物等を大量に買い付ける手はずになっております。
その一環ではあるのですが、レバント様はアズパール王国と輸出入業をされているとの事でアズパール王国より小麦と干物の輸入をして頂けませんでしょうか。」
「ん~・・・どのくらいですか?」
「そうですね・・・・小麦は40000kg、干物は20000kgでどうでしょうか。
これはこちらが買い付けられる数という所ですので可能な分をご用意いただければと考えております。
輸入ですので市場価格より高いとは思いますが、見積もりを見てから最終輸入量を決定しようかと考えております。」
「40000と20000・・・わかりました。
一度、先方に確認してご連絡いたします。」
「はい、お願いします。
連絡や見積もり等をお出し頂く際は第1軍指揮官執務室宛にお願いいたします。
私も含め数人で対処しております。」
「わかりました。」
レバントが頷く。
「では、失礼いたします。
今後とも我ら王城並びにダニエラ様をよろしくお願いいたします。」
女性が店を出て行く。
「おばさん、これ私の仕事?」
「シモーナさん、こっちは米頑張るわ。
出来るだけお願いね」
「はぁ・・・こちらも仕事ですから頑張りますけどね。
それにしても今年は大口だったり新商品だったりの特殊な仕事が多いですね。」
「熟せれば王城での信用が上がりそうだけどね。」
「おばさんはね。
ま、私はアズパール王国との伝手が太くなりそうではありますか。」
「お願いするわ。
食い込むには良い機会なのかもしれないし。」
「無理のない範囲でします。」
「ええ、それで良いわ。」
シモーナとレバントが難しい顔をさせながら店先を見るのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




