第1668話 米の調達について(ヴィクターとシモーナ。)
研究所の3階 総務部。
「アスセナ、書類の作成、出来ました。」
初雪が書類の束を持ってアスセナの机にやってくる。
「はい、初雪様、お疲れ様です。
今、確認しますね。」
アスセナが手際良く初雪が作成した書類を確認していく。
初雪は武雄の言いつけ通りに午前中は3階でヴィクターとアスセナの補助をしていた。
初雪の仕事は主に書類の用紙の作成。
定規を使って線を書き、書類の欄を作る仕事をし、出来た書類に文言を書き込み完成させるのはアスセナだった。
「はい、問題ないですね。
これで試験小隊方の費用申請書の用紙作成は終了ですね。」
「次は?」
「次はキタミザト家と研究所用の収支を付ける用紙の表作成をお願いします。
手持ちがあと2、3枚で終わりなので、そうですね・・・5枚ずつあると助かります。
明日もありますから、あまり急ぐ必要はありません。」
「はい、わかりました。
過去の表はある?」
「はい、すぐに用意します。
少し席でお待ちくださいね。」
アスセナが初雪用の仕事を準備し始める。
「戻りました。」
ヴィクターが階段を上がってやってくる。
「おかえりなさいませ、初雪様が費用申請の用紙欄の作成を終えました。」
「はい、ありがとうございます。
アスセナ、初雪様の次の仕事は?」
「帳簿用に収支表を書いて頂こうかと。」
「うん、それで良いでしょう。
私は午後にアリス様と打ち合わせをしてきます。
米の輸入量でエルヴィス家より指針が出たようです。」
「はい、畏まりました。
木臼を送付する際にヴィクター様のご指示で最大数の輸入はどのくらいかの問い合わせをしておりますが、それの調整という事でしょうか。」
「ええ、その回答と今回の指示を見比べて輸入量を決める事になるでしょう。
結果が来るのを楽しみに待ちましょう。」
「はい。」
アスセナが頷くのだった。
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魔王国王都のレバントの店。
「おば様、何かありませんか?」
簀巻き状態で座っているヴァレーリがレバントに声をかける。
「ダニエラちゃん、すっかりその姿が定着したわね。」
レバントが呆れながらヴァレーリに言う。
「ダニエラは自業自得です。
すぐに抜け出すのです。」
「仕事には息抜きは必要だと思うがな!」
同じく呆れるタローマティにヴァレーリが食って掛かる。
「まぁまぁ、それで・・・まぁ何もないわよ。
ん?店前に荷馬車が止まったかしら?」
レバントが店先に止まったのに気が付く。
「おばさーん。」
シモーナが店に入ってくる。
「あら?シモーナさん、お久しぶりね。
何かあった?」
「ええ、ブリアーニ王国のカールラさんから依頼のあったキタミザト家の木臼が来ましたから持って来ました。
ブリアーニ王国に送付してください。」
「あぁ、そう言えばそういうのもあったわね。
何個?」
「5個ですね。
それとキタミザト様から余ったお金で・・・あれ?ダニエラさんとタローマティさん?」
「「こんにちは。」」
ダニエラとタローマティがシモーナに挨拶する。
「あ~・・・ダニエラさん、またその恰好で?」
「趣味です!」
「そ・・・そうですか。
あ、で、おばさん、荷物引き取ってください。」
「うん、わかったわ。
一緒に確認しましょう。」
レバントがシモーナと店先に向かう。
「ふむ・・・やりとりは順調そ」
「ええええぇぇぇ!!!!?」
ダニエラが頷いた瞬間に店先からレバントの絶叫が聞こえる。
「ん?なんだ?」
「なんでしょうね?」
ダニエラとタローマティが店先に顔を向ける。
「「・・・」」
店先からは2人が何か話しているようだが詳細はわからない。
「・・・割と静かだな。」
「そうですね。」
ダニエラとタローマティが不思議がっていると。
「~♪」
「はぁ・・・」
にっこにこのレバントとため息をついている木箱を持ったシモーナが入ってくる。
レバントの手には小さな小樽が。
「おば様?何かあったのですか?」
「何もないわよ、ダニエラちゃん♪
うふふふふ♪」
「怖っ!
で、その小樽はなんですか?」
「なんでもないって、気にしないで。
で、預かった物はブリアーニ王国に送付しておくけど、何かあるの?」
レバントが大事に棚にしまいながらシモーナに質問する。
「はぁ・・・キタミザト様から魔王国から米の輸出の増加についての相談が来ました。
正確には最大でどのくらい輸出出来るかの確認をして欲しいという事です。」
「ふむ・・・それはブリアーニ王国でという事?」
レバントが考えながら言う。
「手紙ではブリーニ伯爵領にも要請するようにとの事です。」
「・・・ダニエラちゃん、ブリーニ伯爵領ってエルフだっけ?」
「そうですね。
エルフは魔王国建国の際に一部は独立を維持し同盟国として隣接し、残りは配下になり領地持ちになった感じです。
親戚関係があるはずですし、習慣も同じだったと思いますよ。」
「ふむ・・・作っていると思う?」
「大丈夫だと思いますが・・・ブリアーニ王国のみ米の調理法が行っているんですよね・・・
ブリーニ伯爵様に米の調理法を教えてあげると国内流通がどうなるのか・・・それに価格も上がりますよね。」
「知らせないで調達出来るかだけ聞いてみようかしら。
売ってくれるかなぁ・・・」
「そこも大丈夫だと思いますけど。
とりあえずブリーニ伯爵領とブリアーニ王国に最大輸出出来る量と価格の問い合わせをして先方に返事をしては如何ですか?」
ヴァレーリが提案してくる。
「そうね・・・最大かぁ・・・結構な金額が動きそうね。」
「おば様儲け話ですね。
また一筆書きますか?
ブリーニ伯爵領なら知り合いが居ますよ。」
「そうねぇ・・・ブリアーニ王国はカールラさん宛に送れば便宜は図ってくれそうだけど、ブリーニ伯爵領には伝手がないからなぁ。
キタミザト様には今後の事を考えれば便宜を図りたいしね。
お願い出来るかしら?」
「わかりました。
では、小樽の中身、半分で手を打ちましょう。
おば様?あれ、ウスターソースですよね?」
ヴァレーリが笑顔で言う。
「う゛ぅ゛・・・なぜそれを・・・」
レバントが怯える。
「そりゃあ、わかりますよ。」
「う゛ぅ゛ぅ゛・・・わ・・・私の分あげないわよ!?
シモーナさん!どうしよう!?
シモーナさん!助けて!」
「巻き込まないでください!
それと落ち着いて!」
シモーナがレバントを抑えるのだった。
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