第1666話 190日目 出立。1(武雄達出立。)
昼食後のエルヴィス伯爵邸の玄関前。
「エリカ様、忘れ物はありませんか?」
「えーっと・・・忘れ物はなしっと。」
カサンドラの言葉にエリカが自分の体を見ながら確認する。
「エリカ、スズネから借りたヴァイオリン(この世界の)は持ちましたか?」
チビペイトーがエリカの肩に乗り、聞いてくる。
「持ったわよ。
これは王都に着いたらタケオさんに返さないとね。」
「はい、旅行中のティータイムはお任せください。」
「うん、期待するわ。
カサンドラも平気?」
「大丈夫です。
最悪はエルヴィス家より送付して貰いましょう。」
「それはそれで恥ずかしいけどね。
ま、それしかないか。」
エリカが笑いながら言うのだった。
「えーっと・・・馬も問題ない。
食料は所長が持った。
夕霧殿が入る鞄も問題ない。
途中で雨になったら延期しても良いように行程には余裕があるっと。」
「道筋は前回同様だから問題ない。
向こうでの滞在先は連絡のあった王城だから不安もない。」
オールストンとブレアが確認している。
「こっちは問題ないな。」
マイヤーが2人に近付き言ってくる。
「実質持って行くものが夕霧殿だけですし。」
「強行軍しませんからね。
あとは天気が良ければ問題ないですよ。」
「そうだな。
あとは所長達だけだな。」
マイヤーが馬の横で待つのだった。
「さて・・・行ってきますか。
アリス、ヴィクター、あとはお願いしますね。」
「はい、タケオ様、いってらっしゃいませ。
あとの事は・・・まぁ問題ごとがあれば紫雲達が向かいますので指示をお願いします。
他の事は定期的に見回っておきますね。」
「主、無事にお戻りください。
他の事は奥様と相談しながら決めさせていただきます。」
アリスとヴィクターが武雄に言う。
「ええ、アリスに一任します。
万が一は研究所の面々を使って構いません。
研究室も試験小隊も最上位級の魔法師達が居ますからね。
指針さえ出せば判断も的確にしてくれるでしょう。
あとスズネの方は保護を。」
「「はい。」」
アリスとヴィクターが返事をする。
「キタミザト様!いってらしゃいませ!」
「「「お気をつけて!」」」
子供達が武雄の前に整列して挨拶してくる。
「うん、皆も頑張りなさい。
まぁまだまだ習うべき事も多いですしね。
何かあればエルヴィス伯爵とアリスに指示を貰いなさい。
基本は仕事に対しては焦らない、真面目にする。
あとはちょっとした趣味は持ちなさい。」
「「「「はい!」」」」
子供達が返事をする。
「タケオ、すまんが王都での仕事頼むの。」
エルヴィス爺さんが言ってくる。
「構いません。
スミス坊ちゃんの様子も確認してきますし、魔法師専門学院にも用事はありますから問題ないですよ。」
「うむ、あとは・・・まぁやりたいようにしてくると良いのじゃ。
出来れば米の事はそれとなく王家にのみ教えてくれば良いからの。」
「エリカさんが居ますからね。
絶対『食べさせろ』と言ってくるのは目に見えていますけどね。」
「用意はしてあるのじゃろう?」
「まぁしていますけど・・・あれ食べさせると王都にも卸すように言われかねませんね。
こちらの事情は知っていますから・・・強要まではされないでしょうが、少数の卸しは依頼はされますかね。」
「・・・それが強要かと思うがの。
じゃが、輸入も生産もまだまだ始まったばかりじゃからの。」
「はい、そこは言ってきます。
エリカさんがらみで第3皇子一家には提供して味方に引き込むかもしれませんが。」
「そこは輸出先として街ではなく家宛には卸して構わないとしておこうかの。
どちらにしても少数のみじゃ。」
「わかりました。」
武雄が頷く。
「きゅ?」
「あ~・・・あ?」
「きゅきゅ?」
「ん~?・・・あ?」
「きゅ。」
ビエラとクゥが話をしている。
ちなみにビエラはスライム状態の夕霧を抱えている。
「クゥ、大人しくしているんですよ?」
ミアが飛んできてビエラの頭に着陸する。
「きゅ~。」
クゥが「大丈夫~」と返事をする。
「あ。」
ビエラが「アリスも居るしね」と頷く。
「まぁそうですね、コノハが居ますからね。
アリス様と一緒に行動するようにしなさいよ。」
「きゅ。」
クゥが頷くのだった。
「良し行きましょう。
ビエラ、夕霧を鞄に。」
「はい!」
ビエラがオールストンとブレアと一緒に夕霧を鞄に入れる。
「じゃあ、騎乗しましょう。
マイヤーさん、エリカさん、最終確認。」
「所長、同行者、問題ないです。」
マイヤーがオールストンとブレアの馬を見て、夕霧の入っている鞄を確認し、騎乗して言う。
「タケオさん、私達も問題ないです。」
エリカはカサンドラと目視でお互いの状態を確認してから返事をする。
「はい、出立しましょう。」
武雄が頷く。
「出立!」
マイヤーの号令と共に玄関前を出立する。
エルヴィス伯爵邸の門を越えると。
「所長に対し敬礼!」
アンダーセンの号令の下、研究所一同が挙手の敬礼をして見送ってくる。
「うん、後は上手くね。」
武雄も挙手の敬礼をしながらアンダーセンとトレーシーに言う。
「「はっ!」」
アンダーセンとトレーシーが返事をする。
「頼むな。」
マイヤーも2人に言って通り過ぎていくのだった。
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