第1663話 出立前日。11(人事と米の販路。)
研究所の3階 所長室。
「・・・うん、了解っと。」
武雄が書類にサインをする。
「「ありがとうございます!」」
オールストンとブレアが書類を受け取り退出していく。
「失礼します。
所長、明日は何時出立でしょうか。」
「朝食後なのであまり急がずに出立でしょう。
9時か10時でしょうね。
行程的には今回は急ぎませんので・・・王都までは5日ですね。」
「了解です。
所長の用意は出来ているのですね?」
「王都に持って行く物はリュックに入れています。
ジーナとスミス坊ちゃんに食べさせる料理は今作って貰っているので問題ないですし、移動中の食事は都度調達しますし・・・うん、問題ないでしょう。
同伴する2名はさっきの通りなので・・・馬とかも大丈夫だと思いますが・・・マイヤーさんの方は?」
「私は陛下宛の報告書と来年度の人事関連の資料を用意しています。
人事関連の資料は確認しますか?」
「いいえ、マイヤーさんとアンダーセンさんが話し合って決めた条件があるのでしょうから、現段階で異議はありません。
ある程度人員が固まって来たら私やヴィクター、既存の隊員等、皆で確認しながら進めれば良いと思っています。
初期段階でああだこうだとは言いませんし、私がマイヤーさん達に話を振った際の条件は入っているでしょうからね。
その辺は信頼しています。」
「はい、ありがとうございます。
概要を言っておくと王都守備隊と第1騎士団に募集をかけます。
年齢や性別での条件は緩和しました。
魔法適性や給与条件、騎士章持ちを優先する事はそのままです。」
「財政難ですからね。
騎士章持ちは優先度が高いのですけど・・・最終的にはマイヤーさんとアンダーセンさんが扱いやすい人材で構いませんよ。
あ・・・ほふく前進の歓迎会はしますし、異種族がいるのでそこも問題ないかの確認も必要ですかね。」
「まぁあの訓練は辛そうでしたが、必要な事と認識しています。
それに・・・皆も楽しみにしているようですし。
攻撃する側なら率先してやるでしょう。」
「第二研究所の伝統になるかな?」
「悪名が轟くかもしれませんね。」
「王都守備隊なら難なく熟すでしょうに。
ま、事あるごとに訓練内容は見直しますかね。」
「・・・・何をさせる気で?」
「屋上や屋根から外壁伝いに降りて窓から突入でもしますか。」
「・・・」
マイヤーが眉間に皺をよせ目を瞑り首を傾げながら長考する。
「わかりました、却下ですね。」
武雄が頷く。
「出来るだけ先でお願いします。」
「そうですね。
そのうち素案だけは出しておきます。」
「はぁ・・・」
マイヤーが深いため息をつくのだった。
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エルヴィス伯爵邸の客間。
エルヴィス爺さんとフレデリックは執務室へ行っており、アリスとエリカが残されていた。
「良い匂いがする。」
エリカが本を読みながらボソッと呟く。
「ですね・・・カレーですか。」
アリスも本を読みながら答える。
「王都に戻ればあのカレーが食べれないのかぁ・・・」
エリカがガックリとする。
「ん~・・・アズパールカレーはお店との契約で縛られていますし。」
「はぁ・・・王都の西の町かぁ・・・
どうやれば王都に・・・そして第3皇子一家領に出店して貰えるんだろう・・・」
「確かタケオ様はトンカツを作ってレシピ交換して貰い、キーマカレーも教えたそうですよ。
キーマカレーも美味しいですよね。」
「・・・そんなのは無理だ・・・」
エリカが首を振りながら敗北宣言をする。
「ですよね。
あとは・・・宿の土地を用意して2号店を作って貰うのはどうですか?
あの宿は高級宿ですよね。
一番見晴らしが良かったり便が良い場所だったりを提供してはどうですか?」
「ん~・・・確かにエルヴィス家だけでなく、卸売市場もあって色んな貴族や豪商も招く予定ですからね。
私達の方には問題はないでしょうけど・・・出店となるとどうなるか。
他に好材料があれば・・・米か・・・」
エリカが呟く。
「ん~・・・エリカさん、まだベルテ一家で作付け開始したばかりですよ?
それに畑の大きさは見ましたけど、他領に輸出する分はまだ出来ません。
協力農家さんも見つけないといけないですし、栽培が上手く行くかもわからないですし。」
「いや・・・入手は出来ますね。
第3皇子一家からキタミザト家に魔王国の米の輸入をお願いしたいですね。
それに唐箕も出来るのですよね。
加工もある程度簡略化が出来て米も入手が可能。
米の入手と玄米への加工を第3皇子一家で取り仕切って卸すと言えば、地域の特色が出ますよね。」
「まぁ・・・エルヴィス領以外には通用しますよね。
それに輸入代行だからキタミザト家としては中間マージンがそこそこ見込めるし、米の生産が出来てくれば輸入を少なくして領内産の米を卸せてエルヴィス家としても利がありますか。
でも・・・どうやって食べて貰うんですか?」
「そこですよね・・・タケオさんにお願いしても良いですか?」
「あとお爺さまの確認も必要ですね。
卸先が増えるのは良い事ですけど、もしかして作付けの協力農家探しは領内しか出回らない程度にしか考えてなかったら規模が違いますから。」
「そうですね。
今日の夕食後に一度聞いてみますか。」
エリカが頷くのだった。
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