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第1661話 出立前日。9(馬車と若手は大丈夫?)

ローチ工房の店前。


「極限まで軽くしてみました。」

「・・・骨組みだけって結構面白いですね。」

「・・・ここまで軽量化出来るのですね。」

ローチ、武雄、キャロルがコンテナを乗せる試作の荷台を見ながら話している。

「所々に鉄板の補強を入れているんですね。」

武雄がフレームを覗きながら言う。

「四方とかコンテナを積む際の支えの直下の所は頑丈にしたいですからね。

 もちろん板バネ回りも補強もしてついでに厚めにしています。

 それにしてもここまで軽いとコンテナを乗せないで走ったらバネが強くて跳ねそうですけどね。」

ローチが笑いながら言う。

「ふ~ん・・・キャロルさんの方は?」

「簡易的な板の試作と板と蝶番との相性を見ています。

 既存の蝶番を多く使うか、特注で大きいのを使うか・・・最終的なコンテナの製作個数によって変わりそうです。

 それと組む際の下地材・・・各角に着ける下地はとりあえず問題なさそうですね。

 船に乗せる事や風雨に晒される事も考えて、組んだ際の板の隙間埋めの方法を考えていますが・・・キタミザト様、ありますよね?」

キャロルが確信している目を武雄に向ける。

「・・・研究中・・・と言いたいですが、結果として液体を布に染み込ませてから貼り付け、熱を与えると硬化する事が確認出来ています。

 何もせずに同材料を使った板に張り付くかはまだしていませんが。」

武雄が観念した顔つきで言う。

「・・・なるほど、それは良い事が確認出来ましたね。

 熱ならファイアが扱える魔法師・・・ちょっとしたファイアが出来るだけで良いなら兵士ではなく、引退した冒険者を雇ってみるか。

 その同材料に張り付くかはうちで研究と試験をしておきましょう。」

「あまり外に漏れないようにお願いしますね。」

「ええ、人選は問題ないですよ。

 それに私達はSL-05液を買っているだけ(・・・・・・・)ですので。

 そうそう漏れませんよ。」

「そうであって欲しいですが、念には念を。

 今の供給体制が潰れれば目も当てられない惨状しか残りません。」

「はい、徹底させます。

 さて、なのでコンテナの試作は順調に推移しています。

 あとは乗せる際の接合方法等の設計と試験、試作となります。」

キャロルが言ってくる。

「で・・・乗せる側はこうなっていると。

 キャロルさん、荷重配置の大まかな考えは?」

「えーっと・・・各隅と中央の5点止めで、基本は荷台側に凸部分を作るのでコンテナは凹を用意して貰う運びになるでしょうね。

 止める方法は荷台側に8点用意します。

 これは専用の鍵を作ってロックさせます。」

「キャロルさんの想像ではどうですか?」

「なんとも言えません。

 普通の鍵の機構であればこう・・下側から直角の留め金が回転して鍵穴に入るんですけどね。

 荷馬車の振動に耐えられるかはなんとも。」

キャロルが人差し指の第2関節を曲げて手をスナップさせながら説明する。

「地面からの縦方向は問題なさそうですけど、水平面の前後左右でどうなるかか。」

武雄が想像しながら言う。

「その為の凸と凹なんですけどね。

 あ~・・・ちなみに誤差は入れる際に修正するとしても5mmです。」

「それは無理だな。

 せめて凹側は凸の大きさの15mmの許容は欲しい。」

「それだと荷台に積む際の荷台への負荷が多すぎですよ。

 せめて6・・・8mmですね。」

「8mmかぁ・・・」

キャロルが悩む。

武雄は「規格とかはないのはわかるけど・・・凸部に対しての用意する穴径って誤差用に+4か5じゃないの?まぁそういった意味ではローチさんの要求は正しいんだろうけど、この時代だと製品誤差多そうだしなぁ」と思って黙って聞いている。

「その辺は試験しながら決めて行くしかないですね。」

「そうだな、早めに試験が出来るように準備をしよう。」

ローチとキャロルが頷き合う。


「設計の2人はどうしていますか?

 前に会った時は相当疲れていましたが。」

「あの時は失礼しました。

 私共も気を付けて見てはいるのですが・・・あの時は誰が見ても疲労していましてね。

 根を詰めるというか鬼気迫るというか・・・

 私達が休憩しろ、寝ろと言ってもいつの間にか図面を描いているので買い物に出させたんですよ。

 もちろんうちの若手に後ろから見守らせましたがね。」

ローチがやれやれと首を振りながら言う。

「それで私に会った。

 早く帰って寝ろと言いましたけど、ちゃんと寝ましたか?」

「ええ、次の日の夕方まで寝ていましたよ。

 あれほど私達の言う事は聞かないのにキタミザト様の言葉を素直に聞くのは釈然としませんけどね。」

「まぁ私の発案で始めているので要望に答えなきゃと思い込んでいたのでしょう。

 ですが、本人に会ってさっさと寝ろと言われて少しは落ち着けたんじゃないですかね?」

「そうであれば良いのですが・・・ですが、若いってのは良いですね。

 あそこまで一途に図面に向き合えるというのは若かりし頃を思い出します。

 休め、寝ろとは言いますがあの情熱に水を差す事など出来ない事はわかっていますからね。

 見守るようにしていましたが、今後はしっかりと寝かせます。」

ローチが武雄に言う。

「ええ、最低限の睡眠と食事は取らせてください。

 没頭するというのは良い方向に向かえば最強の刺激なんですけどね。

 誰しもが通る道ですけど・・・ほとんどの場合何かしら失敗するんですよね。」

「そうですね、誰しもが寝食を忘れて何かに没頭するという事は経験しますよね。

 そして没頭し過ぎて気が付いたら当初と違う結果になっていた事も多々あります。

 そういった時は『なんでこんな事を』と絶望するんですよね。」

キャロルも苦笑しながら言う。

「良い方向に向かわせるのが先達の役目でしょう。

 ローチさん、キャロルさん、お願いしますね。」

「「はい。」」

武雄の言葉にローチとキャロルが返事をするのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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