第1659話 出立前日。7(冷凍車と甚平。)
和食の会開催中。
「はぁ~・・・美味しかった♪」
鈴音が満足そうに箸を置く。
「コロッケも良いけど、やっぱり海老天やイカ天は欲しいよね。
かき揚げは前にも出して貰ったから何とかなりそうよね。」
「我としては磯部揚げも良いな。」
「「大きい油揚げのきつねうどん!」」
日本系精霊がトッピングの話をしている。
「大きい油揚げは帰ってからですね。
磯部揚げ・・・青のりの風味が必要なんですよね。
エビとイカはなぁ・・・冷凍車もしくは保冷車が必要でしょうけど・・・
現実的にはニール殿下やテンプル伯爵がしたように氷にしてしまって溶けないように持ってくるのが一番実行可能なのですが・・・向こうの魔法師を使う費用がね。」
「輸送の為に他家の魔法師をなんて言ったら怒られますよ。」
武雄の言葉に鈴音が言ってくる。
「タケオ、何とかなりそう?」
「さっきも言ったようにやり方は2つ。
1つは生け簀での搬送ですけど、やるだけならコンテナの内側にもう1つコンテナを用意して生け簀を用意すれば良いのですけど・・・水温と餌、水質と空気の問題が解決出来ないので技術的にまだ出来ません。
もう1つは同じ生け簀を用意し、中に海水と氷を入れ極低温にての搬送。
これもコンテナ1つ丸ごととなると結構な魔力量が必要ですからね。」
「んん~・・・魔法師かぁ・・・」
「一応、懐中時計に組み込まれている魔力を貯められる素材の研究はする予定ですよ。」
「あ~・・・パナちゃんがするの?」
「依頼先は今の所ステノ技研にね。
ダメならパナ行きですけど、今はスライムの体液配合の方が優先ですよ。」
「まぁ・・・そうよね。
タケオ的には船もしないといけないしね。
FRPだっけ?」
コノハが聞いてくる。
「ええ、黒スライムの体液を型に入れて焼こうかと思ったんですけど・・・戦闘ベストに染み込ませて軽く熱を与えて水分を飛ばしたらそこそこ固くなりましてね。
染み込ませたのを張り付ける工法も考えても良いと思いました。
船の重量調整にも使えそうですし。」
「そこは我々ではアドバイス出来ないな。
どちらも間違ってはいないだろうし、焼いてから調整の為に張り付けるという方法もあるからな。」
ニオが考えながら言う。
「ええ、これは長期視点での製作項目ですからね。
あの船の設計者がどう考えるかで・・・あ、挨拶回り再開しなきゃ。
仁王様やウカ、ダキニは王都で欲しい物とかあったらコノハと話し合って決めてください。
出来るだけ動きますからね。」
「そうか、まぁ考えておこう。」
「「「いってらっしゃーい。」」」
「はい、行ってきますよ。
コノハ、後よろしく。」
武雄が席を立ち食堂を後にするのだった。
・・
・
「タケオは慌ただしいのね。」
「明日出発なら昨日までに挨拶回りしておけばいいのに。」
ウカとダキニが武雄が出て行ったあと出されたこし餡団子を食べながら言う。
「まぁタケオもいろいろ仕事が詰まっているという事だな。
うちのテイラーは暇人なのになぁ。」
ニオも団子を食べながら言う。
「エンマ達も畑仕事で精を出しているけど、タケオが一番忙しそうね。」
「楽しそうだから良いんじゃない?」
「ま、タケオなら何とかするでしょ。」
ウカ、ダキニ、コノハがそう言う横で。
「いや・・・武雄さんが動くと街の極一部の人達の絶叫が響くんだよね。」
ボソッと鈴音が言うのだった。
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エルヴィス家の客間。
「タケオが挨拶回りで出て行ったのはわかったのじゃが・・・
これはラルフの所の新作かの?」
「はい、主や私、アリス様とエリカ様、カサンドラ様、ペイトー様用にと伺っております。」
「えーっと・・・部屋着ですって。
エリカさん、どれにします?」
アリスがエリカに聞く。
「えー?・・・アリス殿が選んで余った中から選びますよ?」
「いえいえ、私は後日買いに行けば良いのでエリカさん達が選んで良いですよ。」
「ん~・・・そうですか?
どれにしようかなぁ。」
「あ、なら着替えてみましょうよ♪
お爺さま、今日は寝るまでそれで良いですか?」
「わしのもあるからの。
まぁ皆でゆったりとしながら夕食も良いかもしれぬがの。
フレデリック、大丈夫かの?」
「まぁ・・・お客様のエリカ殿がよろしいのでしたら。
当家としては問題ないかと。」
「ですって。
エリカさん、今日はのんびり過ごしましょう♪」
「あ~も~・・・アリス殿が着たいというのがありありとわかります。
良いですよ。」
「やった♪
じゃあ、エリカさん、着替えに行きましょう。
お爺さまも。
着替えたら客間に集合で。」
「うむ、わかった。
アリス達の方が時間がかかるじゃろうがの。
まぁこれも余興じゃの。」
「「「はーい。」」」
アリス達が楽しそうに頷き部屋を退出していく。
「・・・で、じゃが、このステテコじゃがの。」
「ズボン下ですね。
通気性が良くなって涼しいと説明がありますね。」
「うむ、これ厨房の料理人達に最適なのではないかの?」
「確かに火を使って暑いですね。
一応、勧めてみましょうか。」
「明後日からの販売じゃから・・・そこまで売れるとは思わんが、買うなら早めにした方が良いの。」
「はい、ステテコは結構頑張った価格のようですね。
すぐに伝えておきましょう。
主、こちらが主のです。」
「わし、そっちの色の方が良いのじゃが。」
「ははは、主はこちらの方が似合うでしょう。
それに同じような色ばかりではいけません。
こちらは私が頂きます。」
「フレデリックがそういうならそうなのじゃろう。
気になるならわしも買いに行けば良いだけじゃの。」
「はい、皆で買い付けに行けばよろしいでしょう。」
フレデリックが頷くのだった。
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