第1657話 出立前日。5(ラルフ店長の所で雑談と買い物。)
武雄はハワース商会を出た後、ローの酒屋によって順調な事を確認し買い物をしてから、今はラルフの仕立て屋に来ていた。
「ははは、ハワース商会も大変そうですね。」
ラルフが笑いながら頷いている。
「まぁいつかはしようと思っていた事なんでね。
合板は結構便利なんですよ。」
武雄がお茶を飲みながら言う。
「ほぉ、そうなのですか?」
「ええ、外壁材が薄く軽くなるという事は総重量が軽くなるという事です、なら階数が高く出来る可能性があるんですよ。
なので・・・例えば、1階を石造りにしてその上に木材建築を施せば、今までと同じ感覚で4階建てまでなら難なく出来るでしょうね。
それに第二研究所でトラス構造という建築にも応用出来る構造を考えているので風雨に強い建築が出来て来るでしょうね。
そうすれば軽い外壁がもっと広まると思うし、柱や梁の良質な木材も必要になってくるでしょうね。」
「ハワース商会の将来も安泰そうですね。
それで、キタミザト様は明日から王都ですか。」
「ええ、なので寄ったのですけど。
頼んでいた物は出来ていますか?」
「はい、今用意しております。」
武雄の問いかけにラルフが頷く。
「で、今回、王都に売り込みに行くのはステテコと甚平とでしたよね。
これは用意してあると。
明後日からの販売との事でしたよね。」
「はい、販売分は用意できています。
それで・・・キタミザト様・・・本当に王家の方に献上するのですか?
部屋着なんですよね?」
「ええ、そのつもりですよ。
ラルフさんが躊躇われたから送らずに私に渡すのでしょう?」
「はい・・・流石に新作といえど部屋着を贈るというのは・・・」
「ま、躊躇するなら送らないで私に渡して結構ですよ。
今後も定期的に王都には行きますしね。」
「はい、今後もお願いいたします。
と、あと伯爵様向けにはカタログを作りました。
王都用には注文票と一緒に入っていますのでご伝達お願いします。」
ラルフが武雄の前に2枚の紙を置く。
「はい、わかりました・・・なるほど、ラフ画を入れたのですね。
これは良いですね。
ついでにアリスの分を買っていかないといけないですかね、あ、王家分の中にエリカさん達のなさそうですね。
なら、Mサイズで色違いのを全部ください。」
「全部の色ですか?」
「ええ、あ・・・コノハ達も着るか。
精霊用も用意しておいてください。」
「は、それはいつも通りに。
ミア様用もお作りしておきます。」
「はい、お願いします。
待てよ・・・エルヴィスさん達にも買って行くか、ステテコはLサイズで3個、男性用の甚平はLLサイズで3種類全部とスミス坊ちゃん用にMサイズを1個、女性用がMサイズで4種類全部とジーナはSとMどっちかなぁ。
ジーナは下着の時に採寸しているでしょうから従業員さんにお任せで。
あとうちの従業員が欲しがると思うのでカタログ数枚ください。」
「畏まりました。
すぐに用意させましょう。」
ラルフが頷くと少し離れて見守っていた従業員が小走りに奥に向かっていくのだった。
「さて、これで今年の夏と冬に向けての商品が出来たかぁ。」
武雄が腕を組みながら言う。
「そうですね。
まぁ正直な話、ステテコと甚平、スポーツブラは程良く売れれば良い方かと考えています。
ステテコと甚平は期間物でもありますしね。
なので本気で取り組むのはダウンベストとダウンジャケットですね。」
「何とかなりそうですか?」
「ええ、街の仕立て屋全てで売り込みをしますからね。
それに王都ともやり取りはしておりますが、王都でも数軒が乗り気です。
向こうでも皆でまとまって広告を打つそうです。
工場の方もミシンの導入目途がたちました。
導入が終われば生産量が飛躍的に上がる予定です。
当初の予定よりも早くトレンチコートの納入が完了しそうです。」
「うん、それは良いですね。
甚平の絵柄やトレンチコートは毎年見直しながら変化を付けて行くとして・・・
来年以降かぁ。」
「絵柄やちょっとした改良等での新作は出すとしても完全新作というのはありませんね。」
ラルフが頷く。
「チャックはどうなっていますか?」
「原価が高いですから・・・今は試験小隊向けの戦闘ベストに使う気でいます。
様子を見ながらキャロルさんと話し合いますが、出来ればダウンジャケットとダウンベストに使えたらと考えています。」
「戦闘ベストでかぁ。
まぁとりあえずは保留ですかね。
発売されれば私は買いますが、他の者達だと今度は割引にならないで個人負担ですからね。
確実に売れるとは考え辛いですね。
なので、特注のつもりで作業をしてください、」
「そうですか。
チャックについてはこの後も研究をさせて頂きます。
あと、特注で作る場合にチャックを使用するかの確認を取りながらした方が良いですよね。」
「そうですね。
ベストに関わらずにダウンベストやダウンジャケット、トレンチコートでもチャックが使えるでしょうからね。
デザイン的に変えなくてはいけない箇所もあるでしょうから、それも含めて研究ですね。」
「キタミザト様、ご用意が出来ました。」
店員が武雄に言いに来るのだった。
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