第1655話 出立前日。3(日本系精霊達の会合。)
研究所の3階 所長室。
「あれ?武雄さんが居ない。
ヴィクターさん、アスセナさん、武雄さんお出かけですか?」
「つい先ほど所長は昼過ぎの和食の会の下準備にエルヴィス伯爵邸に戻られました。
仕込みしてから戻ると言われているのでそこまで時間はかからないと思います。」
アスセナが鈴音に言う。
「あ~・・・パナさん会議後すぐに消えたのはそういうことか。
私は14時エルヴィス邸に集合だったよね。
今は・・・10時45分・・・ん~・・・トレーシーさん、私軽食食べてきます。」
「うん、了解。
私は研究室に居ますよ。」
「はーい。」
鈴音が返事をするのだった。
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エルヴィス邸の厨房。
「えーっと・・・タケオに頼まれた油揚げは出来た。
内容ではこれに玄米を入れる・・・?
わからんなぁ。
これに玄米を入れると美味くなるのか?」
料理長が出来たばかりの油揚げをじーっと見ながら考えている。
「た・・・ただい・・・ま戻り・・・ました。」
武雄が息を切らせながら厨房に入ってくる。
「タケオ、なんで走ったんだ?」
「今日は・・・時間が・・・なくて・・・はぁはぁ・・・んんっ、料理の状況を見たらこの後挨拶回りで。」
「そうか。
一応、言われたように前回と同じうどんを用意しているぞ。
あとはキャベツを乱切りにして、キュウリの輪切りとニンジンを細く切ったのを加え、塩をふって混ぜた物も用意した。
あとコロッケも準備中だ。」
「はい、ありがとうございます。」
「しかし・・・この油揚げに玄米を入れるのか?」
「ええ、そう書いておきましたが・・・何ですか?」
「いや、美味しいのかどうか・・・」
「まぁ油揚げのこの状態ではね・・・
ん?・・・いや・・・油揚げはフライパンでカリカリに焼いて醤油とトウガラシでツマミにはなるので、案外、ご飯を少量入れて焼いても何とかなりそうではありますけど・・・」
「タケオ、最初の通りで行ってくれ。」
「はいはい、結局は前に作った巾着卵の状態にするんですよ。」
「卵の代わりに玄米を入れて煮込むのか?」
「・・・あぁ・・・そう考えるか。
いえ、油揚げを煮つけるんです。
では、まず袋にする為に油揚げの上からちょっと棒を転がして開きやすくしていきましょう。」
武雄が手を洗い、おいなりさんを作り始めるのだった。
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エルヴィス家の玄関。
「「こんにちはー。」」
「ウカ様、ダキニ様、いらっしゃいませ。
今日はお二人ですか?」
ヴィクターがウカとダキニを出迎える。
「うん、エンマもニルデも今日は来ないよ。
『和食の会だから楽しんできてね』と今日は自由なんです。」
「そうでしたか。
コノハ様は客間でお待ちです。
ニオ様もおいでになっております。」
「「はーい。」」
フレデリックが2人を客間に先導していくのだった。
・・
・
客間にて。
「へぇ~・・・畑の調子というのがあるの。」
コノハがウカの話を聞きながら感心している。
「うん、ちょっとした感じなんだけどね。
同じ畑の中でも真ん中と端っこでは養分が違っていたり、雨が降ったり、水を撒いたり、育てている作物でも日によって違う事があるのよ。
全体で見れば変化は無いに等しいんだけどね。
エンマ達もそうだけどエンマ達が来る前の農家もちゃんとしていたみたいで今年の収穫後に土壌改良を少しすれば良いかな。
過度にする必要は全くない状態ね。
ベルテ一家は良い畑を譲ってもらったわ。」
「さすがうーちゃんは豊作の女神ね。
それで米は何とかなりそう?」
「うん、タケオ達にも前に言ったけど今のままでも陸稲は問題ないわ。
もうすぐ種植えでね。
畑の最終確認中よ、どのくらい取れるかはやってみてだけど・・・一応、50アールで種は25kg分を使う予定よ。
陸稲なら200kgは収穫できそうよ。」
「200kgかぁ・・・」
コノハが悩む。
「コノちゃんは酒作りだもんね。」
「うん・・・今は魔王国から500kgの輸入でしょう?
今年はどぶろくから作ろうと思っているし試験だから少量にはするけどさ。
酒を本気でやるならあれでも足らないのよ。」
「ん~・・・ベルテ一家はまだ始めたばかりだしね。
それに流石にコンバインとか農機具がないと大量の収穫は難しいからなぁ。
周辺の農家のおじちゃん達も興味はあってもまだ作ってくれないだろうしね。
まずは輸入量を多くして貰って街中での認知度のアップと協力農家さんを探すしかないかなぁ。」
「そこはエルヴィス家とタケオに期待するしかないかぁ。
野菜はどう?少しスライム達の体液使っているんでしょう?」
「野菜は害虫被害も病気も今の所ないし順調に育っているわよ。
高性能肥料についてはちょっと待っててね。
確かに成長は早いんだけど・・・ちょっと結果が出ないとなんとも言えないわ。
野菜って成長が早ければ良いという物でもなくてね。
ただ・・・今の段階では順調よ。
あ、それとタンポポだけど、あれ高性能肥料と相性凄いわよ。
流石に繁殖力が高い品種よね。
ニルデとジルダは収穫が楽しみみたいね。
ま、ダキニは暇そうよ。」
ウカが隣のダキニを見る。
「コノちゃん・・・暇。」
ダキニが不貞腐れながら言う。
「いや・・・良い事じゃない。
だーちゃん、仕事ないの?」
「うん・・・用心棒的な感じだけど夜盗もこないの。
ニルデとジルダを手伝おうにもタンポポ終わっちゃってて、収穫まで何もないし、野菜の方も終わっていて雑草等々はスライム達が掃除しちゃうの。」
「夜盗はそうそう来られても困るけどね。
そうかぁ・・・んー・・・だーちゃんならコラとか狼とかと訓練する?
あっちはミアの管轄だけど、訓練相手がいた方が良いんじゃない?」
「長時間、ニルデとジルダから離れるのも心配なんだよね。」
ダキニが心配そうに言う。
「ダキニ結構心配性なのよ。
でも暇なんでしょう?なら週1くらいで狼達と戯れたら?
1日くらいなら私も目が届くだろうし、元々スライム達が警戒しているからね。
不審者を感知したら知らせるわよ。」
「ん~・・・そうしようかなぁ?」
ダキニが週1での運動を考えるのだった。
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