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第1654話 出立前日。2(研究室への宿題。)

2階研究室。

3人の研究員が個別の部屋ではなく、会議用の机で話し合っている。

「えーっと・・・パナ殿のスライムの試験結果がもうこんなにあります。」

トレーシーの目の前には数枚ずつの5冊の報告書が鎮座していた。

「そうですね。」

鈴音もその束を見ながら答える。

「頑張りました。」

パナがやり切った感を出しながら言う。

「そして、こちらがスズネさんとパナ殿が話し合った今必要な合金のリストです。」

トレーシーが違うリストを机に置く。

「・・・そうですね。」

鈴音が少し前のめりになってリストの中身を見て頷き。

「試作制作はステノ技研です。

 親方達にもう何個か作ったような話を聞きましたよ。

 武雄さんが今回、持っていくんじゃないですかね?」

鈴音が付け加える。

「ええ、そうでしょうね。

 上手くいけばこれで一時的に収入が増えます。」

「はい。」

鈴音が返事をし、パナが頷く。

「今回所長が王都に行く間に私とスズネさんに課題が出ました。」

トレーシーがそんなことを言い出す。

「・・・はい。」

鈴音がジト目をさせながら返事をする。

「・・・スズネさん、気持ちはわかります。

 私も所長に言われた際に同じ顔をしました。

 私達への課題は『パナ殿が考えたスライムの体液の混合物の売り方について』です。」

トレーシーが発表する。

「あ、まともだ。」

鈴音がパッと明るい表情になり呟く。

「・・・私と同じ反応しました。

 これは配合率を教えるだけではお金が稼げないという事で、混合した物を売ろうという事ですね。

 例えば・・・あ、これですね。

 木材の接着剤の容器の発案ですね。

 これは塗って張り合わせてから1日程度自然乾燥させるとくっつくという物ですが。」

トレーシーが冊子を持ち上げて言う。

「木工ボンドですね。」

「所長としては一般家庭でも買えるようにしたい意向だそうです。」

「小さい樽とか瓶ではいけないのですか?」

「まずそもそも店頭に並んで2週間から1か月は買い手がいないかもしれない。

 その間に硬化してしまうと商品としてはダメです。

 それに一度封を開けてしまうと空気に触れている面が硬化します。

 何日保てば良いと思いますか?」

「・・・あ~・・・これ予想以上に難しい課題ですね。」

「ええ、そうでしょうね。

 所長自ら『私が1日考えても思いつかなかったから暇な時にでも考えておいて』だそうです。」

「木工ボンドはわかりました。

 他には何があるのですか?」

「えーっと・・・これだと・・・消しゴムの強化版ですね。

 消しゴムのような鉛筆で書いた絵や文字を消せる性能はありませんが、3cm程度の板状にする事は成功したようです。

 所長はこれを滑り止めとして使用しようと思われていますね。

 市場的にどんな形や厚さが必要か調査して卸す際の厚さや大きさを思案する事とあります。」

「・・・ゴム板って・・・用途広すぎてどうしようもないよ・・・

 試作はありますか?」

鈴音が難しい顔をさせながらパナに聞く。

「私の机の上にあります。

 今の所、厚さ3㎝で20cm×20cmを4つ作りました。

 これ以上の厚さは謎の凹みが発生するので、今後の研究課題です。

 薄さについても今度の検討事項ですね。

 硬度としては70°程度ですね。」

「「70°?」」

トレーシーと鈴音が聞き返す。

「消しゴムは40°程度でしょう。

 70°は・・・車のタイヤ並みです。」

「知識としてはタイヤはわかりますけど、触りませんよ・・・」

「スズネの家には車は?」

「ありましたけど、タイヤなんて触っていませんよ。

 ・・・あ~・・・子供の頃、公園にあった気もしますけど・・・

 そんな意識で触っていません。」

「ふむ・・・例えるならちょっと固めです。」

「・・・うん、わかりません。

 なら考える時にその試作品を貸して貰って触りながらします。」

「ええ、私もそうしましょう。」

鈴音とトレーシーが頷く。

「さて・・・そのような感じであと3つあります。

 これらを製品化もしくは売り込む場合の基準や容器等の検証をする事との事です。」

「ん~・・・トレーシーさんと案を出しながらしていかないといけませんね。」

「そうですね。

 まぁリストは後でスズネさんにも回します。」

「はい。」

鈴音とトレーシーが頷きあう。

「トレーシー、スズネ。

 私はタケオと王都に向かいますが、どこかに寄る用事はありますか?」

パナが2人に聞く。

「私はありません。」

「私もないですね。

 当分は人員増強もないでしょうし、今は目の前の課題に取り組むだけです。

 あ・・・寄る所というか・・・一研の内容が気になりますね。」

「それを言うなら王家専属魔法師部隊がどこまで公表するかでしょうね。

 それと一研は確か・・・魔法を発動する際の使用魔力量の低減を目指すとか言っていませんでしたか?

 まぁたぶん、対応した宝石を使って魔法の効率化をすると思うのですよね。」

トレーシーが言ってくる。

「テイラーさん達がしている魔法刻印とは違うのですか?」

「ん~・・・似て非なる物といった感じですかね。

 元々は魔法刻印が主流だったのですけどね、ちょっとあってほぼ途絶えているんですよ。

 その代わりに我が国で主流になったのが宝石を使った魔法具です。

 たぶん、これの効率化を図ると思うんですよね。」

「トレーシーさん、出来ると思いますか?」

「初級程度を発動する際の低減というのは出来るでしょうが・・・中級以上を戦争等の緊急時に発動させる時の魔力量に耐えられるとなると・・・宝石をどう加工するのか・・・ここでしょうね。

 出来れば画期的ですけど・・・そんなのを一般に普及させられるほどの職人が居るのかも問題ですね。」

「ふ~ん・・・あっちはあっちで問題がありそうな研究課題ですね。」

「ま、そうでしょう。

 パナ殿会議の議事録作成お願いします。

 出来れば一言一句書いてくれるとありがたいです。

 たぶん、腹の探り合いもしますし、ポロっと何か言うかもしれませんから。」

「ふむ・・・同行する者達と手分けをして書き留めておきます。」

「はい、お願いします。」

トレーシーが頭を下げるのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 冒頭でタケオがいない中のスズネとパナとトレーシーの会話とあるにも関わらずタケオの参加シーンがないまま後半にはタケオの発言が存在しています。
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